イベント開催報告 グローバルエコノミー
2026年8月30日(日)〜31日(月)の2日間、香川大学幸町南キャンパスにおいて「2026異質性マクロワークショップ」が開催された。本ワークショップは、香川大学、大阪大学社会経済研究所 共同利用・共同研究拠点、およびキヤノングローバル戦略研究所の共催である。今回は5本の一般報告に加えて、「アイデアセッション」で大学院生による3本の報告が行われた。

第一日目は2本の一般報告が行われた。小寺寛彰氏(小樽商科大学)は “Fiscal Policy and Maternal Labor Supply under Social Norms: The Case of Japan” を報告した。税制などの財政政策が母親の労働供給に影響することは既存研究で示されているが、そこでは育児にかかる時間の費用が捨象されている。日本では既婚男性が子どもの有無にかかわらず長時間働いており、育児と家事に占める妻の分担は86.7%から92.4%にのぼる。報告者はこの背景に社会規範があると考え、社会規範が財政政策と母親の労働供給の関係にどのような役割を果たすかを定量的に分析した。モデルは異質な家計からなる世代重複型のライフサイクルモデルであり、夫婦は子どもの数、育児時間の分担、妻の就業形態(無業、非正規、正規)、消費と貯蓄を決定する。日本の所得控除や配偶者控除、社会保険料の仕組みが組み込まれ、日本のデータに合うようにカリブレートされている。シミュレーションでは、社会規範の役割を測るために夫の労働時間を短くすると、母親の正規就業率が18.4%から24.8%へ上昇し、妻の育児分担は85.0%から78.2%へ低下し、出生率も1.507から1.811へ上昇することが示された。また、所得控除の改正が母親の非正規就業率を押し上げる効果は、社会規範が緩い場合には3.71ポイントであるのに対し、社会規範がより強い場合には1.96ポイントにとどまる。社会規範が強いほど、所得控除の改正の効果は限られるという結果である。
ディスカッションでは、まずモデルの構造について議論があった。現在のモデルは、夫婦の交渉力が双方の人的資本の比率で決まり、妻の就業を通じて時間の経過とともに変化していくなど、やや複雑であり、結果の解釈が簡単には理解できない。そこで、たとえば交渉力を初期時点の値で固定するなど、モデルをもう少し簡素化できないかという提案があった。次に、「子どもがいても男性の労働時間が長いために女性の子育ての負担が重くなり、それが女性の職業選択の意思決定に影響を与える」というメカニズムの重要性を示すシミュレーションとして、働き方改革のように日本が実際に採った政策を参考にした分析を行ってはどうかという意見が出された。さらに、現在のモデルでは結婚は外生的に決まると仮定されているが、これを内生的に決まるものとすれば、より興味深いモデルになるかもしれないという指摘もあった。

萩原玲於奈氏(千葉大学)は “Labor Supply and Welfare Effects of Pension Earnings Tests in an Aging Society” を報告した。日本の在職老齢年金制度では、賃金と報酬比例年金の合計が基準額を超えると、超過分の半分に相当する年金が減額される。この所得テストは高齢者の就労意欲を損なう可能性があり、2026年4月には基準額が引き上げられた。本報告は、この制度が高齢者の労働供給、厚生、財政に与える影響を、ライフサイクル型の定量モデルを用いて分析したものである。まず簡単な理論モデルによって、所得テストが予算制約に屈折点を作ること、基準額の引上げに対する労働供給の反応が賃金水準によって異なることを示した。次に、就業経路、健康状態、年金額の基礎となる報酬履歴などの異質性を含む世代重複型のライフサイクルモデルを2020年頃の日本経済にカリブレートし、基準額の引上げや所得テストの撤廃の効果を検討した。月額の基準額を47万円から62万円へ引き上げると、高齢者の労働供給は約10%増加し、所得テストを事実上撤廃すると約33%増加する。反応は60代後半から70代前半に集中し、正規雇用者は主に就業するかどうかで、非正規雇用者や自営業者は主に労働時間で調整する。年金減額の対象者は約46万人から約29万人へ減少する。年金給付の総額はほとんど変わらず、保険料と労働所得税の増収によって財政はわずかに改善する。平均的な厚生は改善するが、可処分所得の格差は拡大し、厚生の改善はもともと減額の対象であった人々に集中する。
ディスカッションでは4つの論点が取り上げられた。第一は、共済年金や国民年金基金などを含め、日本の多様な年金制度をモデルの中でどこまで考慮すべきかという点である。これについて報告者は、年金制度の適用範囲や在職老齢年金の対象者について制度を再確認し、モデルで扱う制度の範囲を明確にするとしている。第二は、米国でもかつて高齢者に所得テストが適用されていたことから、その制度変更や、既存の実証研究および定量研究との比較が必要ではないかという点である。報告者は、米国の所得テストの制度史と既存研究を整理し、本研究の分析結果と比較する方針である。第三は、若年期の雇用形態を正規、非正規、自営業などに分け、雇用形態の間の移行を可能にする必要があるのではないかという点であり、第四は、高齢期についても雇用形態を固定せずに内生的に選択できるようにし、雇用形態別の就業率や労働時間をデータに整合させる必要があるのではないかという点である。現在のモデルでは、就業経路は労働市場に参入する時点で割り当てられ、その後は変わらない。報告者はこれらの指摘を受けて、若年期と高齢期の双方で雇用形態を内生的に選択できるようにモデルを拡張し、前期の雇用形態を状態変数として、雇用形態間の移行コストを導入することを検討している。あわせて、厚生年金の加入履歴と年金受給額の形成、雇用形態別の労働時間の設定を見直し、雇用形態別の就業率などを新たなカリブレーションの対象とする予定である。報告者自身も課題として認識していた部分について、より詳細な検討やモデルの拡張が必要であるとの意見が得られたことは、大変有意義であったとしている。

第二日目の午前は、まず大学院生によるアイデアセッションが行われた。周天燁氏(大阪大学大学院D2)は “Delayed Retirement and Health Investment: Implications for Fertility when Grandparents Help with Childrearing” を報告した。中国では2025年から法定退職年齢の段階的な引上げが始まった。中国では祖父母の約半数が孫の育児を支援しており、退職年齢の引上げは、祖父母が育児に使える時間を減らすことを通じて出生率に影響しうる。先行研究は、小幅な引上げでは所得が増える効果が上回るが、さらに引き上げると祖父母による育児が減る効果が上回り、出生率への影響が正から負へ転じる退職年齢(転換点)があることを示している。本報告はここに健康投資を内生的に組み込んだ。退職年齢が上がると、健康を維持して働き続けることの便益が増えるので健康投資が増える。健康投資の増加は、寿命の延長と祖父母による育児支援の効率の向上を通じて出生率を押し上げる一方、若年期に使える資源を減らして出生率を押し下げる。三期間の世代重複モデルを2024年の中国都市部にカリブレートした暫定的な結果によると、健康投資の反応を考慮した場合、転換点となる退職年齢は63.68歳から61.51歳へと約2年早まる。健康投資の反応を無視すると、退職年齢の引上げが出生率を下げ始める時点を遅く見積もってしまうことになる。
ディスカッションでは、第一に、退職年齢を引き上げたときに内生的に決まる寿命がどのように変化するのか、その推移を図で示した方がよいという指摘があった。現在の報告は出生率と転換点を中心に示しており、寿命そのものの比較静学は図示していない。今後は退職年齢を横軸として寿命の推移を図示し、必要に応じて健康投資と健康資本の推移もあわせて確認する。第二に、現在のモデルは代表的な家計を想定しており、男性と女性の労働供給、育児時間、祖父母による育児時間の違いを明示的に区別していない。現実には男女で育児時間や労働供給が異なるため、この点を考慮すべきではないかという指摘があった。これに対しては、現段階のモデルが祖母と母親を中心とする育児支援の経路に焦点を当てた簡略化されたものであることを明確にしたうえで、必要に応じて男女別の労働供給、育児時間、退職年齢を導入する拡張を検討する。第三に、モデルでは祖父母の健康資本が高いほど同じ育児時間の有効性が高まると仮定しているが、健康状態が祖父母による育児の効率を高めるという関係に、十分に強い実証的、文献的な根拠があるのかという指摘があった。関連する文献があっても、必ずしも有力誌に掲載されたものではないという点についてもコメントがあった。今後は、健康状態と祖父母による育児の利用可能性や能力とを結ぶ実証研究を追加で調査するとともに、健康資本の効果を一般的な増加関数として定式化し、現在の線形の形はベンチマークとしての簡略化と位置づけることを検討する。第四に、研究の動機づけに用いた Yang (2023) の図は、祖父母のうち孫の育児を行っている人の割合を示しているが、具体的な育児時間までは示していない。短時間だけ孫の世話をした場合でも育児に参加していると数えられる可能性があり、参加率だけでは祖父母による育児の数量的な重要性を十分に示せないという指摘があった。今後は参加率に加えて、祖母の実際の育児時間を示すデータを提示する。現在のカリブレーションで用いている CHNS の祖母の週平均育児時間(子ども1人当たり11.24時間)などをあわせて示し、参加率だけでなく育児支援の強度も示す予定である。

ジョン スンハ氏(大阪大学大学院M1)は “Automating the Empty Planet? AI Diffusion, Utilization, and Growth in a Shrinking Japan” を報告した。日本では生産年齢人口の縮小が予測されており、それは労働投入の減少を通じて総生産を直接押し下げるだけでなく、アイデアの蓄積を弱めるという間接的な効果も持つ。AIの導入はこれを補えるだろうか。報告者は日本企業のAI利用について2つの事実を示した。第一は普及の偏りである。日本では中小企業のAI導入率が特に低い一方、大企業では米国やドイツを上回る。100人以下の企業では日本5.5%、米国22.4%、ドイツ13.1%、1,001人以上の企業では日本50.0%、米国31.2%、ドイツ25.5%である。第二は利用のされ方であり、日本企業は米国やドイツに比べて、AIを業務プロセスの統合よりも個人レベルの業務の効率化に使う傾向がある。AIの導入には費用や調整のコストがかかるため、導入が進むほどよいとは限らない。そこで報告者は、日本の経済成長にとって、中小企業のAI導入率を引き上げる政策と、すでに導入している企業の利用の効率を高める政策のどちらが重要なのか、という問いを立てた。
ディスカッションでは、AIや自動化を理論的に扱っている Acemoglu や Jones などの先行研究を理論モデルの基礎として検討することで、現在のアイデアをより明確で具体的なモデルとして構築できる可能性があるとの指摘があった。企業におけるAIの利用効率を高める政策についても、単純に政府による研修や教育支援を考えるだけではなく、民間企業の企業文化や組織文化、AIを活用しやすい職場環境の形成など、より具体的な政策のメカニズムを考えることで、研究としてより発展的な内容にできるとの助言があった。さらに、AIを導入し利用している企業に関するデータについても、企業規模や利用方法などを含めて、今後より丁寧に整理し精査する必要があるとの指摘があった。報告者にとって今回は、修士課程1年生として初めて研究者や専門家の前で自分の研究アイデアを発表し、意見交換を行う機会であった。さまざまな観点から質問や意見を受けることで、自分では十分に認識できていなかった研究上の不足や改善すべき点を学び、また、自分の考えをどのように整理して相手に分かりやすく伝えるべきかという研究発表の姿勢についても学ぶことができたという。今後は関連する研究をより丁寧に検討しながら、AIの導入と活用が日本経済の成長に与える影響のメカニズムをより明確にしたモデルの構築を目指し、指導教員や研究室の先輩と定期的に相談しながら、修士論文として完成度の高い研究に仕上げていきたいとしている。

西村拓海氏(大阪大学大学院D2)は “Access to Publicly Funded Knowledge: Private R&D and Economic Growth” を報告した。公的な研究開発(R&D)支出が特定の分野に集中しているか、幅広い分野に分散しているかは、国によって大きく異なる。たとえばベルギーでは予算の約6割が1つの分野に集中し、米国では約5割が防衛、約3割が保健に向けられているのに対し、スウェーデンでは各分野に10%前後ずつ配分されている。公的R&Dには民間R&Dを刺激する役割があるため、その総額だけでなく分野間の配分も経済成長に影響する可能性がある。特定の分野への集中には、知識が累積するという利点と、既存の分野に過度に固定されてしまうという欠点がある。分散には、異なる分野の間の知識の波及やリスクの分散という利点と、各分野への投入が薄まって十分な規模に達しないという欠点がある。報告者は、各国の分野別の予算シェアから集中度の指標を計算して経済成長率との関係を示し、成長率を最大化するような公的R&D支出の集中と分散の程度が存在するのではないか、というアイデアを報告した。
ディスカッションでは、まずデータの作成と提示の方法について、公的R&D支出の集中度と経済成長率との関係を見る際には、公的R&D支出そのものの規模や、成長に影響するそのほかの要因をコントロールする必要があるとの助言があった。理論モデルについては、報告の時点では具体的な方針が定まっていなかったが、産業の異質性を含むモデル(heterogeneous-industry model)に関するいくつかの論文が紹介され、今後はこれらを参考にしながらモデルを構築していく予定である。分析の対象についても、報告の時点では経済成長率を最大化する公的R&Dの配分を主な対象としていたが、成長率だけでなく厚生も分析して比較する方が望ましいとの指摘があり、その方向で進める予定である。

続いて、堀井亮氏(大阪大学、CIGS上席研究員)が “China's One-Child Policy Hangover” を報告した。中国では2015年に一人っ子政策が撤廃されたが、出生率は回復するどころか低下を続けており、合計特殊出生率は2015年の1.67から2023年には1.00まで下がった。所得水準をそろえて比べても、現在の中国の出生率は、他の国が同じ所得水準だった頃より大幅に低い。本報告は、現在の少子化が過去の政策の「後遺症(hangover)」である可能性を検討し、その大きさを、一人っ子政策がなかった場合の反実仮想の経路との差として測った。鍵となるのは、教育水準の基準が世代を超えて継承されることである。子どもの数を制限された親は、少ない子どもに教育を集中させる。こうして高い教育を受けた世代が親になると、自分たちの世代が受けた教育水準を基準として子どもの教育を選ぶため、子ども一人当たりの実効的な費用が高いままとなり、制限がなくなった後も出生率は低くなる。理論分析では、このような基準の継承があれば撤廃後のすべての世代で出生率が反実仮想の経路を下回ること、逆に継承のない標準的なモデルでは撤廃後の経路が反実仮想と完全に一致し、後遺症は生じないことが示された。継承の強さは、文化大革命期の就学の中断を自然実験として用いた実証研究の推定値に合わせてカリブレートされている。中国都市部を対象とした定量分析によれば、現在の世代の出生率(0.85)は一人っ子政策がなかった場合(1.46)より42%低く、その後の世代でも約40%低い状態が続く。年金制度の拡充も少子化の一因ではあるが、その影響を取り除いても後遺症の大きさはほとんど変わらない。対策として、出生率を反実仮想の経路まで戻すのに必要な出産補助金を計算すると、その財政支出はGDPの8.4%に達し、現行の育児補助金の100倍以上の規模が必要になる。一方、学習塾などを規制して教育を抑えようとする「双減」政策は、地下の塾市場が存在するかぎり、教育の上限を厳しくしても摘発を強めても、子どもの数をむしろ減らすことが示された。政府の診断は正しいが手段が誤っている、というのが報告の結論である。

午後は2本の一般報告が行われた。大垣良太氏(北海道大学)は “Mortgage Type Choice and the Distribution of Interest-Rate Exposure” (with Masashi Hino and Young In Lee) を報告した。米国では住宅ローンのほとんどが固定金利型であるのに対し、日本では固定金利型と変動金利型の両方が広く利用され、その比率も時期によって変わる。本報告は、家計がローンの種類を内生的に選択することが、金利の変動に対する家計のエクスポージャーの分布と動学をどのように形づくるかを分析した。モデルは、賃貸と持ち家の選択、固定金利型と変動金利型の選択および両者の間の切り替え、借入額と返済額に関する制約、レジームが切り替わる金利過程を含む異質な家計のモデルであり、日本のデータにカリブレートされている。定常状態では、資産の最も少ない家計は賃貸にとどまり、比較的資産の少ない家計が変動金利型を、比較的資産の多い家計が固定金利型を選ぶという、資産分布上の棲み分けが生じる。金利の上昇が負担となる負のエクスポージャーは、変動金利型の借り手にだけ現れる。ゼロ金利から金利が正常化していく政策実験では、消費は金利が上昇する時点で落ち込むが、やがて当初の水準を上回る。この過程で持ち家率は大きく低下し、ローンの選択は変動金利型から固定金利型へ大きく移ることが示された。
ワークショップ中の質疑応答では、モデル内の設定を日本の住宅ローン税制を再現するように調整する必要がある点や、固定金利および変動金利の設定に関する銀行行動の記述を修正する必要がある点などに関して議論が行われた。現在のモデルでは、住宅ローンの残高に応じた所得税の控除が組み込まれ、変動金利は短期金利に、固定金利は今後10年間の短期金利の予想平均に、それぞれ上乗せ幅を加える形で決まっている。また、中央銀行の利上げの効果を見るうえで、消費者の間の再分配効果を測るために消費格差などを計測する必要性についても指摘があった。これらのフィードバックは、報告者の研究を磨き、今後の論文の完成度を上げるうえで非常に有用なものとなった。

盛本圭一氏(明治大学)は “The Cohort Incidence of General Purpose Technology Transitions” を報告した。生成AIのような一般目的技術(GPT)への移行は、経済全体の産出を増やす一方で、労働者が蓄積してきた経験の価値を下げ、技術に関連する資産の価値を高める。本報告は、この移行がどの世代にどれだけの利得と損失をもたらすかを、世代重複型の一般均衡モデルで分析した。モデルには、GPTに補完されやすい職業と、既存の経験がGPTに代替されやすい職業があり、労働者の経験の一部はコード化されて、企業が保有する知識のストックとなる。家計は企業部門を保有する投資信託を通じて貯蓄する。報告者は、各世代の厚生の変化を、人的富(残りの生涯の労働所得の現在価値)の変化、保有する金融資産の再評価、収益率の経路の変化の効果の3つに厳密に分解できることを示し、ある世代が損失を被るかどうかは、人的富に対する金融資産の比率がある閾値を下回るかどうかで決まることを明らかにした。数量分析では、GPTの到来によって産出は3.36%増加する。経験が代替されやすい職業では、人的富の損失は50歳まで拡大するが、年齢とともに金融資産による埋め合わせが大きくなるため、総合的な損失は45歳で最大となる。同じ職業の40歳でも、平均の損失は0.13%にすぎないのに対し、GPTの影響を受けやすい業務に就く労働者の損失は4.2%から4.7%に達する。製品や業務手順の置き換えが速まること自体は、結果をほとんど説明しない。さらに、コード化された知識から生じる収益を労働者と企業の間でどのように分けるかという契約の問題も分析された。補償の総額が同じでも、それが誰の貢献によるものかを特定する精度によって年齢別の帰着が変わること、その精度は私的な契約では過小になりうること、共有の登録制度がこれを是正しうることが示された。
聴衆からは多数のコメントがあり、今後対応すべき課題が得られた。主なものは次のとおりである。第一に、生産関数の設定について、現在は技術資本とコード化された知識がCES型の合成財の中に別々の項として入っているが、自動化資本とコード化知識の相互作用をとらえる関数形を導入すると、より自然であり、含意も広がる可能性がある。第二に、カリブレーションで設定するパラメータの値を具体的な出典にもとづいて規律づけ、導かれる数値的な結果を合理的な範囲に限定する必要がある。第三に、GPTの変化後の移行過程だけでなく、変化前と変化後の定常状態を比較する長期分析の結果も示すことが望ましい。第四に、シミュレーションにおいて退職の扱いが外生的であるため、米国よりは日本を対象とした数量分析に適したモデルである。
小樽商科大学
千葉大学
大阪大学
大阪大学
大阪大学
北海道大学
明治大学