イベント開催報告 国際交流
主催: 一般社団法人セーフティグローバル推進機構(IGSAP)
協力: 一般財団法人キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)
日時: 2026年5月14日
場所: 東京・キヤノングローバル戦略研究所
現在、世界の先進主要国で「AI・Roboticsの社会実装に向けて、いかなる制度的・組織的変革及び法的規制をする必要があるのか」に関して、様々な議論がなされている。
特に協働ロボットが急速に発展する中で、人とロボットが近接して作業する際の安全性、すなわち協調安全(Collaborative Safety)の重要性が高まっている。
こうした中、5月14日、セーフティグローバル推進機構(IGSAP)は、キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)と協力して、訪日した英国労働安全衛生庁(HSE)の幹部を招き、英国におけるイノベーション活動を推進する形の安全規制動向や、新興技術への対応のあり方について講演を実施するとともに、日本発の安全概念である協調安全(IEC Guide 127)を踏まえた議論およびパネルディスカッションを行った。
※和文要約部分はIGSAP事務局にて整理
| 13:00 | 開場 |
| 総合司会: キヤノングローバル戦略研究所研究 栗原潤研究主幹 | |
| 13:30–13:40 | 開会挨拶 |
| IGSAP 井上悟志会長 | |
| 13:40–14:40 | 特別講演 (英国労働安全衛生庁) |
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■英国労働安全衛生庁(HSE)の役割とその変遷 ■英国における労働安全衛生規制の最近の動向 ■AI、ロボティクス、デジタルシステム等の新興技術に対する規制上の対応 |
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| 14:40–15:00 | 講演:建設業界における協調安全と日本の課題 |
| 河田孝志(IGSAP理事) | |
| 15:15–15:55 | 日本発の新たな安全概念「協調安全」―IECガイド127発行を踏まえて |
| 土肥正男(IEC ACOS 日本代表委員) | |
| 16:00–16:55 | パネルディスカッション 「安全における新技術(AI、Robotics等)の活用と規制」 ―制度・現場・技術・人の統合に向けて― |
| 16:55–17:00 | 閉会の辞 |
総合司会: キヤノングローバル戦略研究所研究 栗原潤研究主幹
IGSAP 井上悟志会長
英国における安全規制の歴史と、その根本的な考え方について解説。産業革命以降、労働災害の増加に対応するために細かな規制が導入されたが、形だけの遵守に陥るという限界があったことを紹介した。これを受け、1970年代のRobens Reportを契機として、規制は「方法」ではなく「達成すべき安全の状態」を示す結果志向型へと大きく転換された。
この考え方のもとでは、リスクを生む主体である企業自らが責任を負い、主体的に安全を確保することが求められる。規制は企業の行動を縛るものではなく、考えさせる枠組みであるという点を強調した。
英国の安全水準の向上とその成果を示すとともに、現在直面している課題について説明した。英国では長年の取り組みにより労働災害、特に死亡事故が大きく減少しており、その背景には企業主体によるリスク管理と結果志向型の規制があることを指摘した。
一方で近年は、事故の減少に対してストレスやメンタルヘルス、アスベストに代表される長期的な健康リスクが顕在化しており、安全の焦点は「事故防止」から「健康と人間理解」へと移行している。今後は人の行動や心理への理解、データや研究に基づくアプローチが重要になるとした。
AIをはじめとする新技術の進展に対する規制の基本的な考え方を紹介。規制はイノベーションを阻害するものではなく、リスクの大きさに応じて関与の度合いを調整する「リスクベース・比例原則(リスクの大きさに応じて規制の強さを調整する考え方)」に基づくべきであると説明した。低リスク領域では企業の自律的な対応に委ねる一方、高リスク領域では科学的根拠に基づく安全性の確保を求めるなど、一律ではない柔軟な対応を重視している。
また、規制は科学・政策・制度の統合のもとで判断されるものであり、新技術についても既存の枠組みを活用しつつ必要に応じて補完するという考え方が示された。技術と安全を両立させるためには、制度も進化し続ける必要があることを強調した。
河田孝志(IGSAP理事)
土肥正男(IEC ACOS 日本代表委員)
「安全における新技術(AI、Robotics等)の活用と規制」―制度・現場・技術・人の統合に向けて―
モデレーター:IGSAP梶屋理事
パネリスト:
HSE:Sarah Albon、Jane Lassey
IGSAP:河田理事、吹田理事、土肥委員(IEC,ACOS)、中坊委員(産業技術総合研究所)
■ 1.議論の背景と位置づけ
本パネルディスカッションでは、英国(HSE)の講演と日本側の講演を踏まえ、AIやロボティクスといった新技術の進展に伴う安全のあり方について、多角的な議論が行われた。
英国が提示した制度・規制・原則の視点と、日本が有する現場における技術・実装の知見を統合し、新技術時代における安全の全体像を描く場として位置づけられる。
■ 2.安全の再定義
議論の出発点として、安全の位置づけそのものについて共通認識が形成された。
従来、安全は規制遵守や事故防止の観点で捉えられることが多かったが、本パネルでは、
安全は単なる制約ではなく、信頼の基盤であり、イノベーションや持続的成長を支える重要な要素である
との認識が共有された。
■ 3.英国側の視点(制度・規制・原則)
英国側からは、安全規制の基本的な考え方として、規制はイノベーションを抑制するものではなく、むしろそれを支える枠組みとして機能すべきであるとの考え方が示された。
新技術の進展に対しては、リスクに応じて規制の関与を調整するというアプローチが重要であり、安全確保と技術革新の両立を図ることが必要とされた。
また、安全は社会的信頼を支える基盤であり、制度設計においてはこの価値を前提とすることが不可欠であるとの指摘がなされた。
👉パネルでは、こうした考え方を象徴する発言として、
「規制は技術を止めるためではなく、安全に進めるためにある」
という趣旨が共有された。
■ 4.日本側の視点(現場・技術・実装)
日本側からは、新技術の実装における具体的な課題とリスクについて議論が行われた。
AIやロボティクスは、生産性向上や労働負荷軽減、危険作業の代替など多くの可能性を有する一方で、システムの複雑化や判断過程の不透明化といった新たなリスクを内包している。
👉 特に印象的な点として、
「技術を導入すれば安全になるわけではない」
という認識が繰り返し強調された。
■ 5.人間の役割とリスクの所在
本パネルで特に強調されたのは、リスクの所在に関する認識である。
議論では、多くの事故や問題は技術そのものではなく、その利用の仕方や理解の不足に起因する可能性が指摘された。AIの活用においては、過信(Automation Bias)や誤用、状況認識の不足といった人間側の要因がリスクとなることが共有された。
👉 これを端的に示す発言として、
「リスクは技術ではなく、人の使い方にある」
という点が共通認識となった。
■ 6.Human Oversight(人による関与)
こうした課題に対応する基本原則として、Human Oversight(人による監督・最終判断)の重要性が提示された。
AIにすべてを委ねるのではなく、人が最終的な判断責任を担い、適切なチェックポイントを設けることが必要である。
👉 パネルでは、
「最終的な判断は人が行うべきである」
という点が明確に強調された。
■ 7.安全の成立構造(統合的視点)
議論を通じて、安全は単一の要素では成立せず、複数の要素の統合によって成立することが明確となった。
すなわち、
• 制度(規制・ルール)
• 技術(AI・ロボティクス)
• 現場(運用・実装)
• 人(判断・理解)
これらが相互に作用する「システム」として安全は構築されるものである。
■ 8.日英の統合と今後の方向性
本パネルディスカッションを通じて、英国と日本の役割はそれぞれ、
• 英国:制度・規制・原則(Why)
• 日本:現場・技術・実装(How)
として整理され、両者を統合することにより、新技術時代に求められる安全の姿が描き出された。
今後は、制度と現場、技術と人を一体として捉えた統合的なアプローチにより、安全を設計していくことが重要である。
■ 9.まとめ
本パネルディスカッションでは、新技術時代の安全は、規制や技術のみで成立するものではなく、制度・現場・技術・人の相互作用の中で実現されるという認識が共有された。
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