イベント開催報告 グローバルエコノミー
2023年12月11日(月)に日本工業倶楽部会館において、Inflation and public debt dynamics in a new environment: EU-Japan perspectivesと題する日仏の専門家によるワークショップが開かれた。(日仏財団とフランス銀行が共催し、当研究所CIGSのほか日本銀行、NIRA総合研究開発機構、在日フランス大使館、在仏日本大使館が後援。)
福井CIGS理事長とSetton駐日フランス大使の開会挨拶のあと、日本銀行貝塚理事とフランス銀行Villeroy de Galhau総裁の基調講演、並びに2つのラウンドテーブル討議がなされ、最後にフランス銀行Cabrillac 統計・経済・国際副総局長と氏家CIGSアドバイザーの取りまとめ発言をもって閉会した。ラウンドテーブル参加者は、第1ラウンドテーブルにおいてClaeysフランス首相府France Stratégie経済局長、林内閣府政策統括官、小林CIGS研究主幹兼慶応大学教授、Latouchフランス銀行アジア大洋州代表、上田早稲田大学教授、堀井CIGS理事特別顧問(モデレーター)、第2ラウンドテーブルにおいて星東京大学教授、小枝早稲田大学教授、沖本慶応大学教授、翁日本総合研究所理事長兼NIRA理事、Rouzet フランス財務省チーフエコノミスト、Lechevalier 日仏財団EHESS理事長(モデレーター)。
堀井CIGS理事特別顧問
Lechevalier CIGS International Senior Fellow 兼 日仏財団EHESS理事長
ワークショップのテーマは、数十年ぶりに主要先進国に発生したインフレの背景・今後の展望と、累増した公的債務のインフレ環境下での動向。基調講演者はこれら両方について分析を提示した一方、ラウンドテーブル討議については、最初のグループがインフレに、次のグループが公的債務に、それぞれ焦点を当てて議論した。基調講演およびラウンドテーブル発表の後にはフロアからも質問とコメントが表された。
討議を概括すると、インフレに関して気候政策、国際的政治対立、国内的政治分断がインフレを構造的に高める可能性が指摘された一方、中国の構造的経済停滞が及ぼすデフレ的影響も指摘された。また、欧米ではインフレ期待が安定しているためにインフレ・ターゲットへの収斂が期待できるとの見方が示された。この間、日本については、低インフレの期待が一般的に根強いが最近は変化の兆しがみられるとの指摘が複数参加者からなされた。公的債務に関しては、過去数十年間のデフレ・低インフレのもとで金融緩和が続いたために、債務返済負担が小さかったが、今後インフレ再現に伴い金利が上昇すると、債務の持続性が問題になるとの認識が広く共有された。この是正のためには財政歳入歳出面で構造的な見直しが望まれるが、現実政治的にはその必要性の認識が弱いことへの懸念も表明された。なお、個々の発言者の発言内容については非公表(いわゆるChatham House rule)。
プログラムは次の通り。