イベント開催報告 外交・安全保障
キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)外交・安全保障ユニットは、2021年7月1日に第3回「CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ」として、公開セミナー「米国の中東政策に対する日本の見方 (Japan’s View on the U.S. Middle East Policy)」を開催しました。
※CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ(Stimson-CIGS Next Generation Roundtable Series)について
国際政治の動きを踏まえて設定したテーマを、日米双方の次世代の研究者・実務家をパネリストに報告・意見交換を行うことをつうじて、相互理解を深めるとともに、日米双方の次世代ネットワーキングを図るプログラムとして、2021年より開始しました。
概要
2021年7月1日、日本の視点から米国の中東政策の変化について議論するラウンドテーブルが開催された。CIGSの辰巳由紀がモデレーターを務め、広島大学の溝渕正季氏とスティムソン・センターのエレン・ライプソン氏とが登壇者として参加した。
まず、トランプ政権からバイデン政権へと移行したことによって、米国の対中東政策にどのような変化があったのかについて話し合われた。ライプソン氏は、政権交代によって米国の対中東政策に変化が起きている一方、バイデン政権はトランプ政権の方向性を全否定するようなことはないであろうと論じた。バイデン政権はイランに厳しく望む姿勢をみせる一方、核開発問題ではイランと協議することになろうとの展望を示した。
溝渕氏は、日本にとっていかに中東が重要な地域であるのかについて説明した。日本からすると、石油などのエネルギー調達先として中東の重要性は不変であり、民主主義や価値よりも地域秩序の安定が優先であると指摘した。また、地域秩序の安定のためには東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州連合(EU)のような地域組織が存在することが望ましい。
日米両国の対中東政策の在り方が異なることについても話題が及んだ。溝渕氏は、日本は憲法の制約のために中東に軍事面での関与を行うことに限界はあるが、外交的には米国との連携を強化できると述べた。ライプソン氏は、多数の中国企業が中東に進出している一方、反米感情のために米国企業が中東で活動することは難しいことに言及した。
また、両者の間では、米国の対中東政策においては安全保障面での利益が優先されてきたことや日本が経済支援などによって同地域で良好なイメージを築いてきたことに加えて、中東における中国の存在に対抗するために日米が連携する必要性が討論された。中東の地域諸国は多国間主義よりも米国との二国間関係を好む傾向に加えて、日本がより大きな役割を果たすことについても議論が行われた。
質疑応答では、日米両国が中東の地域紛争で仲介役を担うことができるのかといったことや、日本とイスラエルの間での自由貿易協定(FTA)締結に関する質問がなされた。また、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と類似する「自由で開かれた中東」を日米両国が支援する可能性に加えて、アラブ首長国連邦(UAE)と中国の関係、さらに中東における米中対立と日本側の見方についての質問もあった。
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Associate Professor in Graduate School of Humanities and Social Sciences at Hiroshima University
Distinguished Fellow and President Emeritus of Stimson