イベント開催報告  外交・安全保障

第2回 CIGS-Stimson次世代ラウンドテーブル開催報告(CIGS-Stimson共催)

2021年4月14日(水) 開催
会場:オンライン

国際政治・外交 安全保障 米国 中国

キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)外交・安全保障ユニットは、2021年4月14日に第2回「CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ」として、公開セミナー「中国のFOIPとQuadへの反応 (China’s Response to FOIP and the Quad)」を開催しました。

※CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ(Stimson-CIGS Next Generation Roundtable Series)について

国際政治の動きを踏まえて設定したテーマを、日米双方の次世代の研究者・実務家をパネリストに報告・意見交換を行うことをつうじて、相互理解を深めるとともに、日米双方の次世代ネットワーキングを図るプログラムとして、2021年より開始しました。


概要

最初にモデレーターが登壇者2名に対して、日米両国が進める自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)と日米豪印の協力の枠組みであるQUADに対する中国の反応を日米双方がどのように見ているのかについて質問した。

山﨑は、FOIPとQUADに対する中国の反応は、当初は慎重で比較的抑制されたものであったが、ここ数年はQUADの動向を注視しており、中国にとって排他的な枠組みであるか否かを見極めようとしている。山﨑は、中国がFOIPの枠組みが排他的であると批判していることについて、米国主導の他の活動を対中包囲網や中国排除の政策と見なしてきたことと同様であると指摘した。しかし、中国国内には、QUAD内部での連携の問題に着目し、FOIPやQUADが中国の地域的な影響力に対抗するために効果的に機能するかどうか疑問視する見方もあると紹介した。

また、日本にとって問題になりうることとして、中国が今後どのような行動をとるかという点についても言及した。例えば、韓国が米国製のミサイル防衛システムTHAADの導入を決定した後、中国が韓国に対して即座に経済的な報復を行った事例を挙げ、中国が日本に対してそれと同じ措置をとるかもしれないと指摘した。

ヘギンボサム氏は、ここ数年の米国のインド太平洋地域におけるリーダーシップの変化について論じた。ドナルド・トランプ前政権の同盟国に対する批判は、同盟国やパートナー諸国が米国のコミットメントを不確実なものであると認識する原因となった。他方で、QUADの再活性化もあり、中国は地域的に経済、外交、安全保障の面で積極的な活動を展開しており、自らの影響力を高めるための多面的な戦略を進めている。同盟国との関係修復を強調するジョー・バイデン政権の今後の動向が注目される。米国から見れば、日本と韓国の間で摩擦が続いていることは、日米及び米韓同盟に悪影響を与えることになる。さらに中国は、米韓関係に楔を打ち込む機会と捉え、米中間でバランスを取ろうとする韓国を自国側に引き込もうとしていると論じた。

ヘギンボサム氏は、中国が米国に対して新冷戦を引き起こさないように警告しているが、現在の状況は冷戦時代の米ソ両陣営が激しく分裂した状況とは異なっているとも述べた。中国と米国との経済関係が完全に切り離されるという可能性は低く、そのようなシナリオは中国にとっても望ましくないはずであるとも言及した。

モデレーターから登壇者に対して、日米両国が対中関係をそれぞれ進めていく上で、どのような課題があるのかについての質問があった。登壇者はいずれも台湾問題に言及した。山﨑は、台湾の地政学的な重要性から、日本は台湾とより協力するべきであると述べた。ヘギンボサム氏は、米国議会で台湾に対する超党派の強い支持が高まっていることに加え、最近の米国では戦略的曖昧性の政策を明確にしようという議論が続いていることを紹介した。

発表資料

ディスカッション詳細 ディスカッション詳細

登壇者

登壇者

エリック・ヘギンボサム(Eric Heginbotham)

MIT(マサチューセッツ工科大学)国際研究センター・主任科学研究員

Eric Heginbotham is a principal research scientist at MIT’s Center for International Studies and a specialist in Asian security issues. Before joining MIT, he was a senior political scientist at the RAND Corporation, where he led research projects on China, Japan, and regional security issues and regularly briefed senior military, intelligence, and political leaders. Prior to that he was a Senior Fellow of Asian Studies at the Council on Foreign Relations. After graduating from Swarthmore College, he earned his Ph.D. in political science from MIT. He is fluent in Chinese and Japanese, and was a captain in the U.S. Army Reserve.

司会・モデレーター