イベント開催報告  外交・安全保障

第1回 CIGS-Stimson次世代ラウンドテーブル開催報告(CIGS-Stimson共催)

2021年2月2日(火) 開催
会場:オンライン

国際政治・外交 安全保障 米国

キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)外交・安全保障ユニットは、202122日に第1回「CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ」として、公開セミナー「バイデン政権下の日米同盟(The U.S.-Japan Alliance under the Biden Administration)」を開催しました。

※CIGS-スティムソン次世代ラウンドテーブル・シリーズ(Stimson-CIGS Next Generation Roundtable Series)について

国際政治の動きを踏まえて設定したテーマを、日米双方の次世代の研究者・実務家をパネリストに報告・意見交換を行うことをつうじて、相互理解を深めるとともに、日米双方の次世代ネットワーキングを図るプログラムとして、2021年より開始しました。


概要

はじめにモデレーターから2名の登壇者に対して、「安倍政権における外交・国家安全保障政策の最大の功績」について、日米双方の視点の提供を求めた。

花田氏は日本の視点として、安倍政権の功績には2つの主要要素があるとの見解を提示した。

第一に、同政権の外交・安全保障政策の構造改革には、国家安全保障会議などの主要機関の創設や、平和安全法制定のような法改正が含まれていた点である。日本の戦後の歴史と照らしてこれらの改革は、地域の安全保障の観点から日本の抑止力に最も影響を与えたものであることを指摘した。

第二に、安倍首相が日本の外交的地平を、東南アジア、オーストラリア、インド、そして後にヨーロッパを含めて、近隣のアジア太平洋地域を越えて拡大していった点である。花田氏は、とくに2013年の安倍総理によるASEAN10カ国への訪問について取り上げた。日本の歴代首相でも初の取り組みだったこのASEAN歴訪が、“Free and Open Indo-Pacific (FOIP) ”「自由で開かれたインド太平洋」の構築へ導いたことを指摘した。FOIPが、トランプ政権の外交政策が経済と安全保障協力の分野で機能不十分だった際にも、重要度を増す地域を結びつける幅広い概念となったことを強調した。

また花田は、中国がこの地域で台頭し、インド、オーストラリア、日本、米国が非公式な議論を行うためのプラットフォームの必要性が高まったことから実施された“Quadrilateral Security Dialogue(Quad)” 「日米豪印戦略対話(クアッド)」もまた、安倍総理在任中の業績の一つであることを述べ、全体として安倍首相の功績を、インド太平洋地域における日本の活動を、より行動的かつ積極的にしたことであると評した。

つづいてホスフォード氏はトランプ政権の業績について、中国に対して強硬姿勢を取った一方で、米国の国際的役割に対する疑念をもたらしたことを「矛盾」と要約した。対中国での国際的結束を見据えて安倍政権下の日本が、欧州諸国との関わりを強化することに努めていたのに対し、トランプ政権下の米国ではヨーロッパ諸国との大西洋を横断する関係を、真逆の方向に進んだと述べるとともに、日本が環太平洋パートナーシップ協定(the Trans-Pacific Partnership)の保持を働きかけている間にも、トランプ政権下の米国は、多国間自由貿易協定に反対していたことを指摘した。これら矛盾に加えてホスフォード氏はまた、トランプ政権下の外交について、同政権で目立ったホワイトハウス声明や大統領らのツイッターによる発信が、様々な米国政府機関の当局者にとって、政策の実施を困難にしたことを指摘した。

日米同盟に関しては、トランプ政権が行ったディール外交について、不敬な同盟交渉であったとする見解の存在を紹介し、トランプ政権にとって同盟とは、米国に有利な不平等なパートナーシップであるべきと考えられており、資源を共有し、共通の課題に共に取り組むという同盟の概念に反するものだったことを指摘した。

ホスフォード氏は、米国ではトランプ主義(トランピズム)が根強く残っていることを警告する一方で、トランプ政権の中国へのアプローチは、あまりうまくいっていないものの、経済や安全保障の分野で中国の問題のある諸政策に関心を引き付けたという点では、歓迎すべき変化であったことを付け加えた。

発表資料

ディスカッション詳細 ディスカッション詳細

登壇者

登壇者

花田 龍亮(Ryosuke Hanada)

豪州マッコーリー大学 博士候補

Ryosuke Hanada focuses on Japan’s foreign policy, especially its regional diplomacy in the Indo-Pacific region. He has been a Research Fellow at the Japan Institute of International Affairs in charge of the Council of Security Cooperation in the Asia Pacific since 2016. He is currently working on his doctoral research at Macquarie University, Australia. He acquired his BA in Law at Waseda University, Japan and MA in International Politics at the University of Warwick in the U.K. Hanada has held various fellowships, including the Japan-US Partnership Program of the Research Institute of Peace and Security, the Young Strategist Forum of the German Marshall Fund (GMF), and the Strategic Japan Program of the Center for Strategic and International Studies.

ザカリー M.ホスフォード(Zachary M. Hosford)

米国ジャーマン・マーシャル基金・アジア・プログラム担当ディレクター

Zachary M. Hosford is the acting director of the Asia Program at the German Marshall Fund of the United States. Previously, he was the Senior Foreign Policy Advisor to Senator Edward J. Markey (D-Massachusetts), the Ranking Member of the Senate Foreign Relations Committee’s Subcommittee on East Asia, the Pacific, and International Cybersecurity Policy. Prior to that, he was the Senior Advisor for Asia-Pacific Strategy in the Office of the Assistant Secretary of Defense for Asian and Pacific Security Affairs at the Department of Defense. Before serving in government, Hosford was a Fellow in the Asia-Pacific Security Program at the Center for a New American Security. Hosford earned his MA in Security Studies from Georgetown University in Washington, DC, and his BA from Franklin & Marshall College in Lancaster, Pennsylvania.

司会・モデレーター