イベント開催報告  エネルギー・環境

第1回 CIGS「脱炭素エネルギーと法」ワークショップ 「科学と社会が接するとき―食品安全政策を例に―」

2020年1月22日(水) 15:00 ~ 17:15 開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室

講演概要
 「リスク社会」と呼ばれることもある現代日本社会では、政策を立案する際にリスク・安全問題に直面することがますます多くなっている。そこでは、一方で、希少な財である政策資源を有効に活用することを基本として、不確実なリスクに対しては待つのか(結果的な無駄を後悔しない政策)、他方で、不確実であっても大変な事態が起きることを避けるのか(予防原則)という両立し得ない問いに答える必要が生じる。
 そこで、このような問題が特に際立つ分野である食品安全規制を例に、多様な規制についての差異や普遍的な側面について、条約や国際的なスキームなどグローバルな視点を取り入れつつ、食品安全規制における科学と社会の接点について講演を行う。その後、食品などの身近なものの基準値を例に、基準値の設定・運用から見る安全とリスクの考え方を紹介し、原子力エネルギーや再生可能エネルギーのリスクについて、ディスカッションを行う。

 脱炭素エネルギーの法的スキームを検討するにあたって、リスクを分析することは避けられない。原子力発電は、発電技術という科学の成果である一方で公衆に対するリスクを内包しているし、また、再生可能エネルギーの利用も、低周波騒音や日照問題、廃棄物の問題など、リスクを検討することが必須となる。これまでも「原子力と法」研究会において、リスクについて数回にわたりワークショップを開催してきた。しかし、原子力のリスクのみに焦点を当てると、視野が狭くなってしまうことがあるため、リスクのいわばベンチマークとして、食品安全のリスクに焦点を当てて、リスクに関する政策の立案、言い換えると、科学と社会が接する場面において、どのようにアプローチすればよいかについて検討すべく、ワークショップを開催する。

プログラム
ProgramPDF:418KB


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趣旨説明

  • 芳川 恒志
    キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員
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講演

  • 城山 英明
    東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院 教授
    「リスクガバナンスの制度設計と運用上の課題-食品安全と原子力安全の比較の観点から」
    発表資料PDF:0.49MB
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  • 岸本 充生
    大阪大学 教授
    「科学と政策の間をつなぐために-食品安全、防潮堤、原子力安全を例に」
    発表資料PDF:1.25MB
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質疑応答

  • 【モデレーター】
    芳川 恒志
    キヤノングローバル戦略研究所 上席研究員

    【主な質疑応答】
      • Q. いわゆるemerging foods について、日本ではどのようなリスク分析がなされているのか。
      • A. 日本の当局にも部署はあるが、人的資源の不足のためか、あまり積極的でないと言われているようだ。

      • Q. 福島事故後、リスクに関する日本の状況は変わったか。
      • A. 福島事故の直後に予測したのは、科学と政策の間の領域の問題がもっと議論されることになるだろうということだった。しかし、実際には、反対に、より一層科学に対する信頼、科学に答えが出せるという姿勢になったと感じている。

    • Q. 福島事故により、グローバルに影響はあったか。
    • A. あったと思う。ただ、今問題になりつつあるコロナウィルスのように、国境をまたぐと難しい問題がある。また、原子力に関して、ドイツとフランスのように、異なる反応を示すことがある。