イベント開催報告 エネルギー・環境
2016年
開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 第3会議室
1.研究会の目的
現代では、科学技術の発達に伴うリスクを、法的観点から分析する必要性が高まっている。従来は、主として、裁判における科学技術と法との関係を対象としており、科学技術を政策にとりいれる際の、法制度のあり方について研究したものはそれほど多くはなかった。
そこで、キヤノングローバル戦略研究所は、「原子力と法研究会」を設置して、大規模複合的で有用な技術であると同時に、公衆被害を惹起するリスクも大きいという特性を有する原子力技術について、リスクをコントロールする法制度のあり方について研究を進めることとした。このような研究によって、原子力にとどまらず、汎用性の高い研究が可能になる。
2.研究の対象
(1)長期的研究対象
この研究会の長期的な分析対象は、以下のとおりである。いずれも、原子力技術と法制度の分析の観点から重要であると同時に、他の有用だが危険な技術について応用可能な汎用性を持つ。
①原子力産業に対する投資の安定を確保する法制度のあり方
②原子力技術の革新を促進する法制度のあり方
③原子力に関する市民意識や立法技術の進展等国際的な潮流に照らした法制度のあり方
④核エネルギーの利用に関する国民的議論を喚起することにより、責任の所在を明確にする法制度のあり方
⑤原子力技術の標準化・認証による効率性の向上を確保する法制度のあり方
⑥経済やエネルギーに関する法制度の一部としての原子力法制のあり方
(2)短期的な目標
他方で、分析の質を向上するため、焦点を絞った分析も行う。
具体的には、第1に、いわゆるバックフィットについて検討する。バックフィットは、一般に、行政処分の後、行政庁が行政基準を変更し、当該新規基準を適用した対応を被処分者に求めることをいう。バックフィットについて、行政法における一般的な議論や米国での議論と対比して法的な位置づけを明らかにすることにより、原子炉の使用期限延伸の議論など、今後の法政策の基礎となりうる。
第2に、原子力損害賠償制度における、事業者の事故防止のインセンティブについて分析する。具体的には、新規制基準の下で、無過失責任が事業者の事故防止のインセンティブを削ぐか、相当因果関係の範囲を拡張又は縮減するか、事故発生の責任の所在を明確化するための制度はどうあるべきかという点について、過失責任に関する一般的な損害賠償理論や、英米法から検討した上で、法的分析を加える。この問題は、科学技術の進行に当たり不可避的に高まる公衆被害の発生リスクについて、法政策として、損害賠償制度をどのように組み立てるかという観点から、科学技術と法制度の研究の一環となるものである。
3.メンバー
豊永晋輔 弁護士・桐蔭横浜大学法科大学院客員教授
芳川恒志 キヤノングローバル研究所研究主幹、東京大学公共政策大学院教授
段烽軍 キヤノングローバル研究所主任研究員
青栁由里子 キヤノングローバル研究所研究員
竹内純子 21世紀政策研究所副主幹
※このほか、広く有識者と協力しながら研究を進める
第3回:電力自由化と今後の原子力事業の課題
●日 時: 2016年7月28日(木) 8:00-9:30
●発表要旨: 電力自由化と今後の原子力事業の課題PDF:142KB
第2回:電力自由化と原子力事業の課題
●日 時: 2016年5月24日(火) 8:00-9:30
●発表要旨: 電力自由化と原子力事業の課題PDF:107KB
第1回:無過失責任の意義と広がり
●日 時: 2016年4月26日(火) 9:00-10:30
●発表者: 豊永晋輔(弁護士・桐蔭横浜大学法科大学院客員教授)
●発表要旨: 無過失責任の意義と広がりPDF:236KB