イベント開催報告 グローバルエコノミー
2015年6月19日(金)
14:00
~ 15:30
開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室3
開催概要
題目:「Lean Against Bubbles versus Clean Up After Bubbles Collapse in a Rational-
Bubble Model」
発表者:平野 智裕(東京大学経済学研究科講師)、稲葉 大(CIGS主任研究員)
発表概要
資産バブルに対してどのような経済政策が望ましいのかに関しては二つの見方がある。
一つの見方はclean up policy(事後救済政策)である。もう一つの見方はlean against bubble policy(事前規制政策)である。本研究の目的は、資産バブルの発生と崩壊を前面に出した動学マクロ理論を構築した上で、バブル崩壊後の事後救済とバブル崩壊前の事前規制のどちらが経済厚生の観点から見て望ましいのかを明らかにすることである。主要結果は以下である。まず、政府の介入がない競争均衡を考えたとき、金融の質が比較的高い経済(借入制約が緩い経済)ではlarge bubbleが生じる。こうしたlarge bubbleに対して事前規制を行うことで、バブルへの投機活動が抑えられ、経済全体の資産に対するバブルの割合が小さくなる。その結果、より多くの資金が生産的な投資活動に回るため、経済全体の生産・賃金が上がり、労働者(納税者)のwelfareが向上する。次に、事前規制には事後救済政策に本質的に内在されるcommitment problemから生じるwelfare lossesを緩和しcommitment deviceとしての役割があることを明らかにした。すなわち、政府が救済政策に完全にコミットできないとき、事前における最適救済は事後の最適救済と必ずしも一致せず救済にはtime-inconsistent問題が伴う。事後でも覆されないsustainableな救済政策を考えたとき、均衡において、sustainableな救済は過剰救済になる場合や、逆に過少救済になる場合が生じる。結果としてsustainableな救済のもとでは、コミットできるときと較べてwelfare lossesが発生する。バブルに対する事前政策は、こうした救済のcommitment problemから生じるwelfare lossesを緩和し、commitment deviceとして機能しうる。本研究ではさらに、救済政策に完全にコミットできるときの事前規制の役割も明らかにすると同時に、事前規制がバブルの発生と崩壊に伴うboom-bustをかえって大きくしてしまうもののwelfareの観点からするとwelfareは高まることも明らかにした。
CIGS Workshopとは、キヤノングローバル戦略研究所の研究員が各自行っている研究・分析の中間発表会で、アドバイザーを含む研究所メンバー及び共同研究者等の外部コメンテーターからコメントをもらい、今後の研究に生かしていくために開催されているものです。