外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年6月15日(月)

外交・安保カレンダー (6月15日-21日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


日本のサッカーファンが固唾を飲んで見守ったFIFAワールドカップ初戦で日本が対オランダ「引き分け」に持ち込んだ頃、パキスタン首相と米大統領が「イランと合意に達した」旨発表したというニュースが速報で飛び込んできた。トランプ氏は、「イランとの取引は今や完了」と投稿したそうだが、天邪鬼の筆者は大いに懐疑的である。

署名は19日、現時点でテキストそのものも未公開ということだが、恐らく今週のJapanTimesに投稿するコラムの題は「今回のMOU(了解覚書)はMOMU(誤解覚書Memorandum of Misunderstanding)になり得る」となるかもしれない。筆者がかくも悲観的に考える理由は、大きく分けて3つある。

第一に、 今回のMOU自体は、核開発の問題を含んでおらず、ましてや正式な合意では全くないこと。

第二に、このMOUは以下の通り内容に乏しく、あくまで双方が現時点で「勝利宣言」できるように作った妥協の産物に違いないと思うからだ。例えば、

①    ホルムズ海峡について
米国は曲がりなりにも海峡を開きエネルギー価格を下落させることを最優先したのに対し、イランはホルムズ海峡に対する自国の主権を事実上確保し長期的に対米抑止力を確保しようとしているように見える

②    核兵器について
米側は「イランが核兵器を作らないと約束した」と主張するのだろうが、イラン側は核問題に関する議論を当初の取引(MOU)の対象とせず、その決着を60日後まで後回しすることに成功したという点で、核開発の権利をギリギリ確保したように思える

③    資産凍結解除について
米側はイラン側が求めていた凍結イラン資産解除を最後まで認めず、イラン側もこのMOU合意での凍結資産解除は事実上諦めたのかもしれない。


要するに、詳細はともかく、「ホルムズ海峡は開く一方、核問題は事実上棚上げした」という意味で「妥協の産物」ということだ。現時点でこれを言うのは早いかもしれないが、「イラン側の粘り勝ち」に終わりそうな様相ではないか。

更に、この「合意完了」を俄かに信じられない第三の理由は、イスラエルのネタニヤフ政権とイラン国内の強硬派が、それぞれ「黙っていない」可能性があるからだ。当然彼らが今回の合意を「潰しに来る」「巻き返しを図る」可能性はあるだろう。例えば、ヒズボッラやイスラエル軍が現場の「突発事件により」事実上レバノンでの戦闘が再開もしくは続行される恐れは常にある。

この関連でトランプ氏はネタニア氏を罵倒したと報じられたが、その程度でイスラエルが戦闘を止めるとは思えない。イスラエルにとってレバノンのヒズボッラ問題は自国に対するexistentialな脅威であり、恐らく安易な妥協は不可能だろうと考えるからだ。

以上の3点が、今回のMOUを筆者がメモランダムオブミスアンダスタンディングと呼ぶ理由である。

続いては、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーなのだが、今週も同研究員多忙のため、お休みさせて頂く。次に、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

6月15日 月曜日  習近平氏の誕生日
G7首脳会議(フランス、3日間)
6月16日 火曜日  欧州議会、 米製品に対する関税の解除を審議
ケニヤ、「我らの海洋」国際会議を主宰(4日間)
6月17日 水曜日  天皇皇后両陛下オランダ公式訪問
6月18日 木曜日  EU首脳、ウクライナ問題を議論
オバマ大統領センター開所式(シカゴ)
6月19日 金曜日  EU首脳会議
6月20日 土曜日  国連世界難民デー
6月21日 日曜日 父の日  コロンビアで大統領選決選投票


最後はガザ・中東情勢だが、先週まで筆者は「イラン側が早期に譲歩に応じるとは思えない。このまま停戦交渉が進展する可能性は低い」と言い続けてきた。今もこの悲観的見通しに変わりはない。報道によれば、今後60日間でウラン濃縮問題を含む残った問題を交渉するというが、中東で「60日間」というとほぼ「無期限」に近く響くのだが・・・。

この60日間で、ウラン濃縮の権利がイランにあるか否か、あるとすればどの程度まで濃縮を認めるのか、 440kgで60%の濃縮度と言われる、いわゆるイエローケーキ的な濃縮ウランを一体どこで、誰が、どのように処理するのか。また、イラン側は本当に核兵器開発を放棄すると明確に約束するか否か、更にIAEAの査察はどうなるのか、等々、微に細に交渉すべき問題が山積みとなっている。

このような状況で、果たして60日間で残り全ての問題に合意できるだろうか。2015年のJCPOA(イランの核問題に関する最終合意)は、 160ページの大部、かつ2年近くの交渉を経てようやく出来上がった代物である。されば、たった60日であの合意以上のものができるとはとても思えない。

ホルムズ海峡の問題だってそうだ。トランプ氏は「通行料なき」海峡開放と言っているらしいが、確かこれまでイラン側は「通行料」ではなく「サービス料」としていたはず。これも含め、イラン側は本当に金を取らないのか、未来永劫「通行料ないしサービス料」を取らないと約束するのかどうか、これも、不確定要素である。

それ以外にも、いつの段階で何をしたらイランの資産凍結は解除されるのか、具体的にはイランにいつ、いくら支払われるのか、レバノンでの停戦は可能で持続できるのか、などなど、あまりに多くの問題が棚上げになったままのMOUなのだから・・・・。今週は、もしかしたらもう一度投稿することになるかもしれない。今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート24【6月15日版】

<今週以前から続く会議>

6月1日‐6月19日 ICAO航空航法委員会、第232回会合(モントリオール)
6月9日‐6月18日 UNFCCC、締約国会議補助機関会合、第64回会合(ボン・ドイツ)
6月13日‐6月16日 IBE 2026 - 国際美容博覧会(クアラルンプール)
6月14日‐6月16日 G7首脳会議(フランス・エビアン)

6月

<6月15日‐6月21日>

15日 台湾5月貿易統計発表
15日 日伊首脳会談(ローマ)
15日 サウジアラビア5月CPI発表
15日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
15日‐6月17日 「Saudi Food Show 2026」サウジ食品ショー2026年(リヤド)
15日‐6月17日 先進7カ国首脳会議(G7サミット)(仏東部エビアン)
15日‐6月18日 欧州議会本会議
15日‐6月19日 第27回「SOME」経済産業省会議(ASEAN・METI)(フィリピン)
15日‐6月19日 第4回ASEAN・アジア開発銀行(ADB)対話「4th ASEAN-Asian Development Bank(ADB)Dialogue」(フィリピン)
16日 香港3~5月雇用統計発表
16日 ブラジル4月月間小売り調査発表
16日 チリ金融政策決定会合
16日 EU一般問題理事会
16日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日‐6月17日 ブラジル中央銀行、Copom
16日‐6月17日 米国FOMC、経済見通し発表
16日‐6月18日 ヘルスケア展示会・カンファレンス「Africa Health ExCon2026」(エジプト・カイロ)
16日‐6月19日 ユニセフ理事会年次総会(ニューヨーク)
17日 ロシア第1四半期経済活動別GDP発表
17日 米国5月小売統計
17日 英国5月CPI発表
17日 ユーロスタット5月CPI(HICP)発表
17日‐6月19日 農業技術・スマート農業ソリューション展示会「Agritec Africa 2026」(ケニア・ナイロビ)
18日 英国労働市場統計(2月~4月)発表
18日 ニュージーランド第1四半期GDP統計発表
18日 滋賀県知事選告示(7月5日投開票)
18日 NATO国防相会合(ブリュッセル)
18日‐6月19日 欧州理事会(EU首脳会合)
18日‐6月21日 スリランカEXPO2026
19日 カナダ4月小売統計発表
19日 ロシア中央銀行理事会
19日 ジューンティーンス(奴隷解放記念日)で米国市場休場
21日 通常国会会期末

<6月22日‐6月28日>

22日 カナダ5月CPI発表
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
22日‐6月26日 サイバー・ウイーク2026(テルアビブ)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
23日 香港5月CPI発表
23日 台湾5月雇用統計発表
23日‐6月25日 世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(遼寧省大連)
24日 米国2026年第1四半期国際収支統計発表
24日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
24日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
24日 台湾5月小売統計発表
24日‐6月28日 APEC観光大臣会合(マカオ)
25日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
25日 香港5月貿易統計発表
25日 サウジアラビア4月貿易統計発表
25日 ECB一般理事会 
25日 5月の米PCE物価指数(商務省)
26日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
26日 国連環境計画(UNEP)常駐代表委員会、第174回会合(ナイロビ)
26日 メキシコ5月貿易統計発表
27日‐6月30日 MIJF 2026 - マレーシア国際ジュエリーフェア(クアラルンプール)

<6月29日‐7月5日>

29日 カザフスタン第1四半期経済活動別GDP発表
29日‐6月30日 国際連合越境組織犯罪防止条約締約国会議、移民密輸に関する作業部会、第13回会合(ウイーン)
30日 サウジアラビア2026年第1四半期投資報告
30日 チリ3~5月雇用統計発表
30日 ドイツ5月労働市場統計発表
30日 トルコ5月貿易統計発表
30日 沖縄県うるま市(旧石川市)の米軍戦闘機小学校墜落事故67年

6月上旬 ラオス5月CPI発表

7月

1日 アイルランドがEU議長国に(12月末まで)
1日 貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」共同見直し開始
1日‐7月3日 ACUNS年次総会(リスボン、ポルトガル)
2日 アルジェリア議会選挙
2日 6月の米雇用統計(労働省)
7日‐7月8日 NATOアンカラ首脳会議(第36回)(アンカラ、トルコ)
13日‐7月17日 UPEACE-UNITAR 国際法・外交修士課程フィールド訪問(ジュネーブ)
15日‐7月18日 EU-ASEAN・ビジネスミッション(バンコク)
16日‐7月17日 第22回 ASEAN-日本包括的経済連携合同委員会(TBC)(フィリピン)
19日 第59回ASEAN、AMM、準備SOM・SEANWFZ委員会(フィリピン、未確定)
19日 サントメ・プリンシペ大統領選挙(サントメ・プリンシペ)
19日‐7月29日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会(韓国・釜山)
20日 第59回ASEAN外相会議(AMM)開幕・本会合(フィリピン、未確定)
21日 ASEAN三者会合(ノルウェー&トルコ)(フィリピン・マニラ市)
22日 ASEAN PMC+1 — 日・米・中・EU・印・豪・露・英・加・NZ。各対話相手国との個別セッション。南シナ海・貿易が焦点 (フィリピン、未確定) 
22日 南シナ海行動規範(COC)交渉ラウンド(TBC)(フィリピン、未確定)
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
28日 1951年難民条約75周年記念(UNHCR)(ジュネーブ)
29日 核実験に反対する国際デー(国連)
30日 人身売買被害者世界デー(UNODC)(国連主催)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問