キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2025年10月24日(金)
[ デュポン・サークル便り ]
ワシントン近郊はすっかり、朝晩、冷え込むようになりました。明日の朝は、地域によっては初霜という天気予報も出ています。週末に行われる一大市民スポーツ行事の「海兵隊マラソン」。このマラソンは、私も5~6回、参加しましたが、走りながら、ワシントンの市内観光ができる楽しいマラソンです。今年は海兵隊発足250周年に当たることと、このマラソンの50周年記念にあたる記念すべきレースなので、本当はなんとか走りたかったのですが、ひざと足首がもはや、フルマラソンを許してくれる状態ではないので、泣く泣くあきらめる羽目に。日本は高市政権が発足、来週には高市首相は早速トランプ大統領の訪日、その直後にAPEC首脳会議と、息つく暇もなく外交デビューですね。日本の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
海兵隊マラソンに向けて確実に盛り上がってきてはいるものの、実は、ワシントンは、連邦政府一時閉鎖第23日目に突入。史上2番目の長さだそうです(第1次トランプ政権時代の2018年12月~1月まで34日間続いたのが最長記録だとか)。これを書いている23日は、24日には、連邦政府職員がまるまる1か月、無給状態になってしまう、というのが最大の話題。連邦議会でもここにきて、さすがに連邦政府職員と軍人のお給料は別建てでなんとかしないとまずいという空気が漂い始めました。例えば、航空管制官も連邦政府職員ですから、1か月無給ということになると、仕事に来ない人も出てくるので、昨日あたりからショーン・ダフィー運輸長官が「航空管制官の給料が引き続き支払われなければ、連邦航空管理局の権限で、飛行機の便の数を制限したり、キャンセルしたりしなければならなくなる」と発言しています。来月は、最大の祭日である感謝祭で、かなりの数の人が空の便で移動することが予想されているというのに、これではまずいですよね。
ですが、ここでも、「軍人+現在勤務している文民政府職員への給与の支払いを認める法案」を主張する共和党と、「軍人+現在勤務しているか否かにかかわらず、すべての文民連邦政府職員に対する給与の支払いを認める法律」を主張する民主党が再び、真っ向から対立。しかも、こういう法案を審議しようという動きが出てきていること自体が、予算案そのものではどちらも、まったく妥協する気がないということ。こうなると、最悪の場合、現在共和党が提案している継続審議決議が切れる11月21日直前に、双方が再び交渉しようという姿勢に入ってくれるのを待つしかありません。でも、そうならないことを祈りたいですね・・・
今週のトランプ大統領による最大のお騒がせネタは、「ホワイトハウスのイースト・ウイングの取り壊し」。そうです、この区画を大きな宴会場(英語ではBallroom)にするんだ!費用はみんな、私的な寄付で賄うから文句ないだろ!と昨日あたりから派手に取り壊しが始まりました。ですが、ホワイトハウスは歴史的建造物。この建物の構造に大きな変更を加える場合には、本来であれば全米首都計画委員会(National Capital Planning Commission)に前もって計画を提出、承認を得なければいけません。が!トランプ政権側は「ホワイトハウスの敷地内で完結する工事だから承認をもらう必要なんかない」と主張して、取り壊しを進めています(早ければ週末にも取り壊し作業は終わるとか・・・・)これが大騒ぎとなり、この改築を請け負った建設会社のホームページやSNSサイトに抗議の書き込みが殺到する羽目に。さてこちらもどうなることやら。
その間もトランプ大統領は、中東情勢ではイスラエルにウィトコフ特使とクシュナー氏のチーム、バンス副大統領、ルビオ国務長官を波状攻撃のように派遣。まるでネタニヤフが停戦合意に難癖をつけて軍事作戦を展開するのを阻止するかのようです。その間、ウクライナ情勢の方では、ハンガリーで予定されていたプーチン大統領との会談を直前になってキャンセル、EUとともに、新たな対露経済制裁を発動しました。また、来週に一応、現時点では予定されている中国の習近平主席との会談では、すでに相当こじれている通商案件に加えて、中国のロシアからのエネルギー輸出も議題にする意向のよう。いやはや、いったいどうなるのでしょうか。
今週も、内政に外交と、お騒がせネタはとどまることを知らないトランプ政権の1週間でした・・・。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員