外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2025年2月14日(金)

外交・安保カレンダー (2025年2月10日-16日)

[ 2025年外交・安保カレンダー ]


今週は出稿が大幅に遅れてしまった。2月11日から海外出張が入り、時差の関係もあって(苦しい言い訳だが)、執筆のタイミングを逸したのだ。今回は米国シンクタンクPacific Forum主催のHonolulu Defense Forum(HDF)に参加するためハワイに来ている。されば今週は、同フォーラムの模様も含め、日米関係について書こう。

まずは、先週末の石破茂首相による初訪米・日米首脳会談から。日本での大方の懸念を裏切り、訪米はまずまずだったと思う。会合の性格上、今次HDFで石破訪米は話題にならなかったが、当地で会った多くの米国の友人たちの評価も「予想以上」だった。但し、その理由については、筆者の見立ては大方とはちょっと違う。

  • 2月4日からの10日間、トランプ氏は米国大統領として4カ国の首脳と会談を行った。具体的には4日にネタニヤフ・イスラエル首相、8日は石破茂首相、11日にヨルダンのアブドッラ国王、最後は12日のモディ・インド首相だった。なぜトランプ政権は最初の首脳レベル会談の相手として、これら4カ国の首脳を選んだのか。
  • 第二期トランプ政権発足から3週間経った今強く感じるのは同政権の戦略性だ。確かに昔のトランプ政権に戦略性はなかった。第一期政権発足後最初の1週間で発出した大統領令は僅か5件、内容的にもオバマケア(医療保険改革)、国境警備、環境保護規制などの見直しだけだった。
  • その理由は簡単で、当時のトランプ陣営は大統領選勝利を殆ど予測しておらず、政権発足時の基本戦略は勿論、具体的戦術すら固まっていなかったからだ。案の定、発足当初から第一期政権では政権部内の意見対立が激しく、主要な閣僚やホワイトハウス高官がことごとく辞任していった。
  • ところが第二期の今回は、政権発足最初の1週間で200件以上の大統領令が署名されている。これは第二期政権が過去4年の準備期間を経て、内政と外交の両面で、トランプ政権が如何なる戦略に基づき、如何なる政策をどこまで実行するかにつき、慎重に計画を練っていたことを意味する。
  • だからこそ、政権発足から1カ月も経たない2月前半までに、矢継ぎ早に新たな内政上の政策を打ち出し、首脳外交を始動できた。トランプ政権、恐るべし。今回の石破茂首相のワシントン訪問についても、米国内政の観点から分析すべきなのに・・。政治部記者の書く首相訪米記事は実に底が浅い。その理由はここらへんにある。


日米関係についてもう一点。今回HDFに参加して、特に強く感じたのは米インド太平洋軍の「戦争準備」が、以前にも増して、というか順調に、加速していることだ。HDF参加者には「チャタムハウス」ルールが課されるので、誰が何を言ったかには言及できない。しかし、それを前提に筆者が全体を通じて感じたことは次の諸点だ。

  • 台湾に対する最近の中国軍の動きはもはや「演習」ではなく「リハーサル」である
  • 対する米太平洋軍は、従来とは全く異なる戦争を戦う準備を着々と進めている
  • 中でも「無人戦」については概念化や試験段階を終えて実用段階に入っている


具体的には、可能な限り、「兵士は危険に晒さない、防御行為はAIと機械に任せるが、殺人行為だけはAIや機械には任せない」という大原則の下で戦争の「無人化」を本気で考えており、そのための技術は既に確立しているので、今はその種の新兵器を如何に大量かつ迅速に配備するかを真剣に考えているようだ、と感じた。

このように米軍、特にインド太平洋軍は本気だが、今のワシントンはそれを理解するだろうか。今回のHDF参加者は誰もが第二期トランプ政権を批判する発言や質問を控えていた。しかし、HDF初日の2月12日にトランプ・プーチン電話会談の内容が報じられたためか、参加者の多くは「来るべきものが来た」と感じたのではないか。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

2月11日 火曜日  米・ヨルダン首脳会議
2月12日 水曜日 欧州理事会議長と欧州委員会委員長、カナダ首相と会談(ブラッセル)
ウクライナ防衛コンタクトグループ、ブラッセルで会合
2月13日 木曜日 米印首脳会談
NATO国防大臣会合(ブラッセル)
2月14日 金曜日 欧州安全保障会議始まる(ミュンヘン)
クック諸島首相、訪中(5日間)
2月15日 土曜日 アフリカ連合首脳会議(エチオピア)
ジョージアのアブハジア地区で大統領選挙


最後はガザ・中東情勢だが、トランプ氏はガザ地区を米国が「take over」し、パレスチナ人を(一時的に)退去させる一方、同地を「リビエラ(のようなリゾート)にする」と発言したかと思えば、2月15日までに人質を解放しないと戦闘が再開し、ガザは「地獄を見る」などとハマースに圧力を掛けている。おいおい、ガザ地区は既に十分「地獄を見ている」ではないか、そんな脅迫に効果があるかね、と思う。ガザについては来週詳しく書くとして、今週はこのくらいにしておこう。


2025年重要日程レポート6【2月10日版】

<今週以前から続く会議>

1月20日‐2月14日 ICAO(国際民間航空機関)、第228回航空委員会(モントリオール)
1月20日‐2月14日 ICAO、第234会期委員会(モントリオール)
1月20日‐3月28日 軍縮会議、第一部(ジュネーブ) 
2月3日‐2月11日 WHO、執行理事会、第156回会議(ジュネーブ)
2月3日‐2月14日 宇宙空間の平和利用に関する委員会、科学技術小委員会、第62回会議(ウイーン)
2月3日‐2月21日 女性差別撤廃委員会第90回会議(ジュネーブ)
2月9日‐2月12日 Leap25(リヤド)

2月

<2月10日‐2月16日>

10日 フィリピン11月直接投資発表 
10日 カンボジア2025年1月貿易統計発表
10日 衆院予算委で一般質疑(午後)
10日‐2月11日 AIサミット(パリ)
10日‐2月11日 国連女性機関、執行委員会、第1回定例会議(ニューヨーク)
10日‐2月14日 社会開発委員会(CSocD)第63回会議(ニューヨーク)
10日‐2月14日 人権理事会、コミュニケーション作業部会、第35回か会議(ジュネーブ)
10日‐2月14日 IFAD 理事会第 48 回会議(ローマ)
10日‐2月19日 社会開発委員会第63回会議(ニューヨーク)
10日‐2月28日 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会、第77回会議(ジュネーブ)
11日 国民民主党大会(都内)
11日 非政府組織委員会(ニューヨーク)
11日 米大統領、ヨルダン国王と会談(ワシントン)
11日 メキシコ2024年12月鉱工業生産指数発表
11日‐5月10日 上院議員候補者および政党の選挙活動期間(フィリピン)
12日 インド2024年10月IIP発表
12日 インド2025年1月CPI発表
12日 トルコ1月国際収支統計発表
12日 フランス2024年第4四半期失業率発表
12日 米国1月CPI発表
13日 ドイツ1月CPI発表
13日 イスラエル1月貿易統計発表
13日 ブラジル2024年12月月間小売り調査発表
13日 植民地諸国及び植民地人民への独立付与宣言の実施状況に関する特別委員会、組織会期及び2025年会期第1部(ニューヨーク)
13日 石破首相が衆院本会議で訪米報告
13日‐2月23日 ベルリン国際映画祭(ベルリン)
14日 イスラエル1月CPI発表
14日 ロシア中央銀行理事会
14日 米国1月小売統計発表
14日‐2月16日 ミュンヘン安全保障会議(独ミュンヘン)
16日‐2月21日 日中経済協会合同訪中代表団が訪中(北京など)

<2月17日‐2月23日>

17日 シンガポール1月貿易統計発表
17日 フィリピン12月OFW送金額発表
17日 大統領の日(米市場休場)
17日 軍縮委員会組織会議(ニューヨーク)
17日‐2月19日 独立監査諮問委員会、第69回会議(ニューヨーク)
17日‐2月19日 UNCITRAL、作業部会III(投資家対国家紛争解決改革)、第51回会合(第1部)(ニューヨーク)
17日‐2月19日 エネルギー展示会「EGYPES」
17日‐2月21日 Gulfood(ドバイ)
17日‐2月21日 WFP、執行委員会、第1回定例会議(ローマ)
17日‐3月14日 平和維持活動に関する特別委員会及びその作業部会の実質的会合(ニューヨーク)
18日  EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18日‐2月20日 Global Health Expo(カンボジア)
18日‐2月20日 International Petroleum Technology Conference(IPTC)(マレーシア)
19日 フィリピン2025年1月国際総合収支(BOP)統計発表
19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策、バーチャル会議)
19日‐2月21日 UNCITRAL委員会、担保取引に関する会議(ニューヨーク)
19日‐3月20日 Foresighting Forum 2025: Charging Forward(オーストラリア)
20日 トルコ中銀金融政策会議
20日 香港2025年1月CPI発表
20日‐2月21日 G20外相会合(南アフリカ共和国)
20日‐2月22日 PAKAR PERTANIAN EXPO(マレーシア)
20日‐2月22日 Malaysia Technology Expo 2025 「マレーシアテクノロジーエキスポ・2025年」(マレーシア)
21日 ロシア中央銀行理事会
21日‐23日 Diving & Resort Travel Expo Malaysia 2025 「ダイビング&リゾートトラベルエキスポマレーシア・2025年」(マレーシア)
23日 ドイツ総選挙

<2月24日‐3月2日>

24日 EU外相理事会(ブリュッセル)
24日 立憲民主党大会(都内)
24日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
24日 シンガポール2025年1月CPI発表
24日 イスラエル中央銀行金融委員会会合
24日‐2月28日 開発政策委員会(CDP)第27回会合(ニューヨーク)
25日 OECD2024年第4四半期G20貿易統計発表
25日 1月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
26日‐2月27日 G20財務相・中央銀行総裁会議(南アフリカ共和国)
27日 米国第4四半期GDP(改定値)発表
27日 千葉県知事選告示(3月16日投開票)
28日 1月の米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
28日  EU一般問題理事会(結束政策)(ブリュッセル)
28日 ケニア2月CPI発表
28日 インドGDP2024年度第3四半期統計発表

3月

1日 ウルグアイ大統領就任式
1日‐3月4日 Malaysian International Furniture Fair(MIFF)(マレーシア)
2日 ドイツ・ハンブルク州議会選挙
2日‐3月5日 Export Furniture Exhibition(EFE)(マレーシア)
3日 米国1月貿易統計発表
4日 ユーロスタット、1月失業率発表
5日 オーストラリア2024年第4四半期GDP統計発表
5日‐3月7日 Vietship 2025 - International Exhibition on Shipbuilding and Offshore Technology(ハノイ)
5日‐3月8日 VIFA EXPO 2025 - 16th International Furniture and Home Accessories Fair Vietnam(ホーチミン)
6日 オーストラリア1月貿易統計発表
7日 ユーロスタット、第4四半期実質GDP成長率発表
7日 米国2月雇用統計
7日 台湾2月CPI発表
7日 台湾2月貿易統計発表
7日 メキシコ2月CPI発表
7日 ブラジル2024年第4四半期GDP発表
8日 西オーストラリア州議会選挙(オーストラリア)
9日‐3月11日 Nano.IL.2025(イスラエル・エルサレム)
10日 フィリピン12月直接投資発表
10日 カンボジア2月貿易統計発表
12日 マレーシア1月IIP発表
12日 インド2024年12月IIP発表
12日 インド2月CPI発表
12日 米国2月CPI発表
12日 カナダ中央銀行政策金利発表
14日 アルゼンチン2月CPI発表
14日 フランス2月CPI発表
14日 ドイツ2月CPI発表
17日 米国2月小売統計発表
17日 シンガポール2月貿易統計発表
17日 フィリピン1月OFW送金額発表
18日‐3月19日 Energy Storage Australia 2025(オーストラリア)
18日‐3月19日 ブラジル中央銀行、Copom
18日‐3月19日 米国FOMC、経済見通し発表
19日 ユーロスタット、2月CPI(HICP)発表
19日 フィリピン2月BOP統計発表
19日 フィンテック・ジャンクション(テルアビブ)
20日 香港2月CPI発表
20日 米国第2024年第4四半期国際収支統計発表
20日 台湾2月投資統計発表
20日‐3月21日 欧州理事会(ブリュッセル)
24日‐3月26日 サイバーテック・グローバル(テルアビブ)
25日‐3月27日 SEA ASIA 2025(シンガポール)
26日 米国2024年第4四半期対外資産負債残高統計発表
26日 英国2月CPI発表
27日 米国2024年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 メキシコ2月雇用統計発表
28日 ドイツ2月労働市場統計発表
28日‐5月10日 代議院、国会議員、州、市、町村長候補者の選挙活動期間(フィリピン)
31日 米国通商代表部(USTR)2025年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問