外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2026年10月27日(火)

外交・安保カレンダー (10月26日-11月1日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


今週筆者が最も注目するのはイスラエル総選挙だ。確かに、先週末にはブラジル大統領選の決選投票もあった。現大統領再選も大きなニュースではあるが、中東情勢だけでなく、世界のエネルギー供給にも大きな影響を及ぼすという点で、ネタニヤフ首相の去就の方が国際政治的インパクトははるかに大きいかもしれない。

このイスラエル総選挙に加えて、来週は米国の中間選挙もある。だからという訳でもなかろうが、今週は水曜日と木曜日のプライムニュースに、何と二晩連続で生出演することになった。同番組とのご縁も既に十数年になるが、こんなことは初めてである。長くやっていると、こんなこともあるんだなぁ、有難いことだ、とつくづく思う。

それはさておき、まずは今週読んだ評論の中で最も気になったコラムをご紹介しよう。米保守系論客Bret StephensはNew York Timesのオピニオン欄に概要次のように書いている。

  • 西洋文明の基盤となる「3つの柱」は、①真実の探求(The Quest for Truth)、②個人の尊厳と価値(The Worth and Dignity of Every Human Being)、および③法の支配(The Rule of Law)である。
  • マルコ・ルビオ国務長官らトランプ政権の高官が「西洋文明の防衛」を声高に訴えているが、ロシアからの燃料購入、汚職、法の手続きの軽視など、同政権の行動は「西洋文明」を支える根本的な価値観を破壊している・・・。


要するに、Stephensが主張する「伝統保守派の西洋文明観」は、第二期トランプ政権の外交の支柱ともいわれる、ニュー・ライト派(新右派)が提唱する「文明主義(Civilizationism)」とは全く異なる価値観らしいのだ。なるほど!されば、ヴァンス副大統領が心酔している(?)「Civilizationism」なる概念はどんなものなのか?

このテーマを取り上げたのが今週の産経新聞World Watchコラムだ。米国中間選挙の結果がこうした「文明主義」的思想に如何なる影響を与えるのか?今筆者の最大の関心事は、この点にある。同じくこの点が気になる読者各位におかれては、今週木曜日掲載予定の同コラムを是非ともご一読願いたい。

さて次は、吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーだが、今週は同研究員がまとめた「米露ウの三者協議再開に期待しないロシアのエリートたち――ロシア・メディアより」を以下の通りご紹介する。ロシア知識人の苦悩が行間から滲み出ているようで実に興味深かった。

10月21日、ロシアのサンクトペテルブルクでプーチン大統領とウィットコフ米大統領特使が会談した後、クレムリンは、米国の仲介によるウクライナとの三者協議再開に、プーチン大統領が原則として同意したと発表した。イラン戦争の開始を受けて2月以降中断されていた米露ウの三者協議の枠組みに、ロシア側は11月10日前後にも復帰する意向を示している。

一方、プーチン大統領は従来の要求を維持しており、ウクライナの領土問題に加え、ロシアの安全の保証や欧州全体の安全保障体制についても協議するよう求めている。

こうしたなか、ロシアのエリート層の間では、今回の交渉再開が戦争の早期終結につながるとの期待は乏しいようだ。ロシアの独立系メディア「ヴョルストカ」が、政府高官やクレムリンに近い関係者らに、交渉の行方や戦争への認識について取材している。

記事からは、長期化する戦争への疲れや不満がエリート層の間でも広がっている一方、彼らがプーチン大統領の方針に異議を唱えてまで戦争終結を求めようとはしていない現状が浮かび上がる。

先日、筆者(吉岡)が直接話を聞いたカーネギー・ロシア・ユーラシアセンターのアレクサンドラ・プロコペンコ上級研究員は、プーチン体制下でエリート層は政治的な主体性を意図的に奪われ、体制の方針に適応する能力はあっても、自ら政治的な変化を起こす能力を失っていると指摘した。戦争の終結を望みながらも、自ら行動を起こすのではなく、プーチン大統領の決断を待つという今回の記事の証言は、こうした分析とも重なる。

※「ヴョルストカ」は、ロシア政府による独立系メディアへの弾圧を背景に、国外を拠点として活動するロシアの調査報道メディアである。ロシア国内にも独自の取材網を持つ。

◆「『交渉は毎回“建設的”だというが、何の成果もない』――ロシアのエリート層は、米国との新たな交渉ルートに進展を期待せず」、10月22日付「ヴョルストカ」(*一部要約)

  • クレムリンは、ウクライナ、米国との三者協議に復帰することに同意した。しかし、ロシアのエリート層は、この新たな交渉の試みが戦争の早期終結につながるとは期待していない。
  • ある情報筋は、モスクワが今回の交渉を通じて、ディーゼル燃料だけでなく穀物の輸出など、いくつかの経済問題の解決を図りたいと考えていることを示唆した。外務省に近い関係者も、トランプとゼレンスキーの現在の対立が一時的なもので終わったとしても、今回のディーゼル合意のように、ロシアが経済的利益を得られることを期待している。
  • 大統領府の国内政治部門の職員も、交渉が早期終戦につながるとは考えていないものの、ロシアは今回の米国とウクライナの対立を利用して、予算収入の増加や戦場での優位を得られる可能性があると指摘している。
  • 一方、エリート層の誰もが、現在のモスクワとワシントンの接近によってロシアが長期的な政治的利益を得られると考えているわけではない。クレムリンと協力関係にある政治コンサルタントの一人は、米国によるウクライナへの圧力が、かえってゼレンスキーの国内での支持を固め、その立場を強める可能性もあると考えている。
  • ある政府高官も、外交交渉が近く成果を上げるとは考えていないと語った。モスクワとワシントンの接近について長い間語られてきたにもかかわらず、実質的な成果は今のところ何もないからだ。「率直に言って、みんなもう諦めの境地に達するほど疲れ果てている。もう2年近く、トランプはどうやらわれわれの味方らしい、交渉は建設的だ、と言い続けているが、実際には何の成果もない。われわれは戦争を続け、あらゆる災難に見舞われながら、祖国とともに苦難に耐えている。大統領がそう決めた以上、われわれは従う。それだけのことだ」
  • この高官によれば、ロシアの権力内部には、いわば『和平派』と呼べる勢力が存在する。そこには、国内の世論動向を担当する大統領府の国内政治部門や、長期化する戦争の影響を最も強く受けている政府の財政・経済部門、さらに大企業が含まれるという。
  • こうした勢力は拡大している。しかし、戦争に対する公然とした異議申し立ては、依然として見られないという。「これは、それぞれが自分なりに選んだ現実主義的な対応だ。しかし、もうこの船から降りることはできない。戦っている連中が、もう十分だと思うまで待つしかない」
  • この高官は、ロシアの政府高官たちが戦争の終結を望んでいるとしても、それはプーチンが提示する条件とは異なる条件で戦争を終わらせようとする意思があることを意味しない、と結論づけた。


続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

10月27日 火曜日  独首相、シンガポール、日本、韓国訪問開始(全5日間)
ドイツ大統領訪中(4日間)
アブダビ皇太子、カナダ訪問を終える(2日間)
北欧理事会(北欧5カ国議会連携機関)会合(フィンランド、3日間)
10月28日 水曜日  ASEAN国防大臣会合(2日間、フィリピン)
ロシア大統領、ロシア・アフリカ首脳会議を主催(2日間)
10月29日 木曜日  カナダ首相、カナダ・EU首脳会議を主催(2日間)
ウクライナ・オレシュキー市での停戦が発効
10月30日 金曜日  スイス大統領訪中、中国国家主席と会談
11月1日 日曜日  ブルガリアで大統領選決選投票


最後はガザ・中東情勢だが、ホルムズ海峡をめぐる状況は基本的に変わらず、米中間選挙前の対イラン攻撃再開もなさそうなので、全てはイスラエル総選挙の結果待ちというところか?先週も書いた通り、仮に中間選挙後「イラン再攻撃」をやっても、イランはそれを機に「待ってました」とばかり、湾岸アラブ諸国の原油・天然ガスのタンカーや関連施設を大規模攻撃するだけで、メリットは小さい。トランプ氏は一体どうするつもりなのだろう・・・。今週はこのくらいにしておこう。


2026年重要日程レポート42【10月19日版】

<今週以前から続く会議>

10月5日‐10月30日 女子差別撤廃委員会 第93回会議(ジュネーブ)

10月

<10月26日‐11月1日>

26日 サウジアラビア8月貿易統計発表
26日‐10月29日 グローバル・ヘルス・エキシビション2026(リヤド)
26日‐10月30日  シンガポール国際エネルギー週間(SIEW)(シンガポール)
27日 WTO紛争解決機関会合
27日 イスラエル総選挙
27日 メキシコ9月貿易統計発表
27日 韓国第3四半期GDP(速報値)発表
27日‐10月28日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
27日‐10月29日 シンガポール・ウィーク・オブ・イノベーション・アンド・テクノロジー(SWITCH)(シンガポール)
28日 ロシア1~9月鉱工業生産指数発表
28日 カナダ中央銀行、政策金利発表・金融政策報告書発表
28日‐10月29日 ロシア・アフリカ首脳会議(モスクワ)
28日‐10月29日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
28日‐10月29日 TECH1サミット(イスラエル・テルアビブ)
28日‐10月29日 フィンテック・ウィーク・テルアビブ2026(テルアビブ)
28日‐11月1日 UPU(万国郵便連合)、郵便業務理事会、第2回定例会合(要確認)(バーン)
29日 米国第3四半期GDP(速報値)発表
29日 シンガポール9月IIP発表
29日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
29日‐10月30日 日銀金融政策決定会合(日銀)
29日‐10月30日 EU・カナダ首脳会談
29日‐10月30日 人権理事会 社会フォーラム、第18回会合(ジュネーブ)
29日‐10月31日 バングラデシュ旅行・観光フェア(Bangladesh Travel & Tourism Fair: BTTF 2026)(バングラデシュ)
29日‐10月31日 2026年コーヒー・エキスポ・ベトナム(ベトナム・ホーチミン)
30日 植田日銀総裁会見
30日 経済・物価情勢の展望(展望リポート)(日銀)
30日 ドイツ9月労働市場統計発表
30日 ドイツ第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
30日 ユーロスタット9月失業率発表
30日 フランス第3四半期GDP成長率(速報値)発表
30日 7~9月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)
30日 ブラジル9月全国家計サンプル調査発表
30日 台湾第3四半期GDP(速報値)発表
31日‐11月1日 キッズ&ファミリー・フェア 2026(カンボジア)

11月

1日‐11月4日 英連邦首脳会議(CHOGM)(アンティグア・バーブーダ、セントジョンズ)
2日‐11月6日 IMO理事会第138回会合(英国・ロンドン)
2日‐11月6日 国際連合腐敗防止条約締約国会議、実施審査グループ、第17回会合(再開第2回会合)(ウイーン)
2日‐11月6日 国際連合腐敗防止条約締約国会議 資産回収に関する開放型政府間作業部会 第20回会合(ウイーン)
2日‐11月6日 人権理事会、農民および農村地域で働く人々の権利に関する作業部会、第7回会合(ジュネーブ)
2日‐11月13日 ICAO、理事会フェーズ、第239回会議(モントリオール)
2日‐11月13日 人権理事会、経済的、社会的及び文化的権利委員会、第80回会議(ジュネーブ)
2日‐11月13日 人権理事会、普遍的定期的審査作業部会、第53回会合(ジュネーブ)
3日 米中間選挙
3日 韓国10月CPI発表
3日‐11月4日 ブラジル中央銀行、Copom(金融政策委員会)
4日 米国9月貿易統計発表
4日‐11月6日 シンガポール・アーバン・モビリティ・ウィーク(シンガポール)
4日‐11月7日 「SIAL インターフード」(インドネシア)
4日‐11月7日 「VIETFOOD & BEVERAGE - PROPACK 2026 IN HANOI」(ベトナム)
4日‐11月8日 UPU、管理理事会、第2回定例会合(要確認)(バーン)
5日 メキシコ金融政策決定会合
5日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
5日‐11月6日 2026年 SPiCE International(カンボジア)
5日‐11月6日 第36回ASEAN社会文化共同体評議会(36th ASCC Council Meeting)(フィリピン)
6日 米国10月雇用統計発表
7日 ニュージーランド総選挙
7日 ITU、理事会、最終会合、2026年会議(カタール)
9日 中国10月CPI発表
9日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
9日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表
9日 過度に傷害を与え、又は無差別に効果を及ぼすと認められる特定の通常兵器の使用を禁止し又は制限する条約の議定書Vの締約国会議 専門家会合(ジュネーブ)
9日‐11月12日 国連世界データフォーラム(サウジアラビア、リヤド)
9日‐11月20日 国連気候変動枠組み条約第31回締約国会議(COP31)が開幕(トルコ・アンタルヤ)
10日 中国10月貿易統計発表
10日 米国10月CPI発表
10日 フランス2026年第3四半期失業率発表
10日‐11月12日 2026年カシュー・胡椒貿易フォーラム(カンボジア)
11日 ドイツ10月CPI発表
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11月10日‐11月15日 中国国際航空宇宙博覧会(珠海航空ショー)(広東省珠海市)
11日 集団安全保障条約機構(CSTO)首脳会議(モスクワ)
11日‐11月12日 欧州議会本会議
12日 ブラジル10月IPCA発表
12日 英国第3四半期実質GDP成長率(速報値)発表
12日 インド10月CPI発表
12日 第28回ASEAN経済共同体委員会〔The 28th Meeting of the ASEAN Economic Community Council(AECC)〕(フィリピン)
12日 第32回ASEAN政治安全保障共同体(APSC)評議会会議、第39回ASEAN調整評議会(ACC)会議(フィリピン)
12日 第1回ユニオン・パリシャド(Union Parishad)選挙(バングラデシュ)
12日‐11月13日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)理事会
13日 ロシア10月CPI発表
13日 ロシア第3四半期GDP成長率(速報値)発表
13日 フランス10月CPI発表
13日 ブラジル9月月間小売り調査発表
13日 IEA石油市場月報発表
14日‐11月16日 FrancoTech(フランコテック):フランス語圏イノベーション・フェア(カンボジア)
16日 中国10月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日 フィリピン9月海外フィリピン人労働者(OFW)送金額発表
16日 EU外相理事会
16日‐11月17日 WTO物品貿易理事会
16日‐11月20日 IAEA定例理事会(ウィーン)
17日 EU外相理事会(防衛)
17日 米国10月小売統計発表
17日 英国労働市場統計(7~9月)発表
18日 英国10月CPI発表
18日 ユーロスタット10月CPI(HICP)発表
18日‐11月19日 APEC首脳会議(中国・深セン)
18日‐11月20日 Singapore FinTech Festival(シンガポール)
18日‐11月20日 Smart Technology Expo (メキシコ・グアダラハラ)
18日‐11月21日 プラスチック&ラバー・インドネシア(インドネシア)
18日‐11月26日 インドネシア防衛博覧会2026(インドネシア)
19日 マレーシア10月CPI発表
19日 EU一般問題理事会
19日‐11月22日 インドネシア加工・包装見本市(インドネシア)
20日 国際貿易フォーラム(フィリピン)
20日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
23日 メキシコ第3四半期GDP発表
23日 EU一般問題理事会(結束政策)
23日 OECD G20貿易統計発表
23日‐11月26日 2026 年Food AG (パキスタン)
23日‐11月26日 欧州議会本会議
24日 WTO紛争解決機関会合
24日‐11月27日 2026年国際防衛展示会・セミナー(パキスタン)
25日 米国第3四半期GDP(改定値)発表
25日 ロシア1~10月鉱工業生産指数発表
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
26日 ECB一般理事会
26日 メキシコ10月雇用統計発表
27日 CIS経済理事会(モスクワ)
27日 ドイツ10月労働市場統計発表
27日 メキシコ10月貿易統計発表
27日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
27日 シンガポール10月IIP発表
27日‐11月29日 アニメ・フェスティバル・アジア(AFA)2026(シンガポール)
28日 台湾統一地方選挙
28日 ビクトリア州議会選挙(オーストラリア)
28日 インド10月IIP発表
30日 EU外相理事会(貿易)
30日‐12月4日 核兵器禁止条約の初の再検討会議(ニューヨーク)
11月中 第49回ASEAN首脳会議(フィリピン)
11月中 第29回ASEANプラス3首脳会議(フィリピン)