キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年6月9日(火)
[ 2026年外交・安保カレンダー ]
先週はほぼ一週間まるまるワシントン出張だったからか、今週は極度の「時差ボケ」で参っている。米国で「5泊」というと、ちょうど現地時間に順応し始める期間。されば生理的に考えても、帰国後5泊ぐらいしないと体は元へ戻らないのだろうか。でも昔はこんな出張を毎月のように繰り返していたのに・・・。やはり歳相応なのかなぁ。
さて、今週のハイライトだが、少なくともインド太平洋、特に東アジア地域では、習近平国家主席の北朝鮮訪問と中朝首脳会談の開催だろう。ところが、このニュース、少なくとも米国での扱いは決して大きくない。今もイラン戦争の停戦交渉が動かないまま「戦争でも平和でもない」状態が続いているのだから、当然と言えば当然か?
さて、この中朝首脳会談に関する報道はまだ出尽くしてはいないが、多くの分析記事に共通するのは「中国が北朝鮮の『非核化』の議論を避ける」ことを前提としていることのようだ。例えば、読売新聞は、
などと論評している。確かに、前回中国は「朝鮮半島の非核化で建設的な役割を果たしたい」と述べていたが、今回は中国側発表に「非核化」への言及がなく、「緊密な戦略的コミュニケーションを維持したい」と呼び掛けているのだそうだ。なるほどね、では中国の言う「戦略的」コミュニケーションとは一体何なのだろう。
この点については、韓国各紙や産経新聞などが「中国海軍、北朝鮮常駐の動き」などの見出しで詳細に報じている。要は、
といったところらしい。
筆者は朝鮮半島が専門ではないが、以上を踏まえた現時点での筆者の「仮説」は次の通りである。
現時点ではこんな感じである。中朝首脳会談や中国海軍の動きについては今週木曜日のプライムニュースで議論することになるかもしれない。また、今週の産経新聞WorldWatchでは先週のワシントン出張で抱いた「5つの違和感」について書いたので、ご関心ある向きはご視聴、ご一読をお願い申し上げる。
続いては、いつもなら吉岡明子主任研究員によるロシア関連コーナーなのだが、今週も同研究員多忙のため、お休みさせて頂く。次に、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
| 6月9日 火曜日 | 北欧バルト海8カ国首脳会議開催(エストニア) |
| 6月10日 水曜日 | EU・韓国首脳会議(ブラッセル) |
| マレーシア首相訪日終了(3日間) | |
| 6月11日 木曜日 | 韓国大統領イタリア訪問(3日間) |
| ノルウェー首相NATO訪問、事務総長と会談 | |
| フィンランド大統領、外交安保問題を議論するクルタランタ会合を主催(2日間) | |
| 6月12日 金曜日 | ローマ法王スペイン訪問終了(一週間) |
| 6月14日 日曜日 | スイスで四半期ごとの国民投票 |
| 6月15日 月曜日 | G7首脳会議(フランス)開始 |
最後はガザ・中東情勢だが、今週も先週、先々週に続き、「イラン側が早期に譲歩に応じるとは思えない。このまま停戦交渉が進展する可能性は低い」という見通しに変わりはない。先週は米大統領がイスラエル首相との電話会談で"What the f* are you doing?" "f*ing crazy"と罵った話を書いたが、今週もその手の話を一つご紹介しよう。
ホワイトハウスでの記者団とのやり取りの中で、「ceasefire(停戦)の定義は何か」と問われた米大統領は何と、「中東で停戦とは"shooting in a more moderate manner"を意味すると述べた。その模様を生で聞いていた筆者は思わず仰け反った。文字通り訳せば「停戦とはより穏やかに交戦すること」と言ったのだから・・・。
おいおい、「穏やかな交戦」だって「戦闘状態」の一種ではないのかね?米国の「戦争権限法(War Powers Resolution)」には、「大統領が議会の事前承認なしに軍事行動を開始した場合、原則として60日以内に戦闘を終了または撤退しなければならない」とある。これに対し大統領は「今は停戦状態だから問題ない」と反論してきた。
だから、米国とイランが「自衛のための」攻撃を繰り返しても、大統領は「停戦は破られた」などと決して言えないのだろう。いやいやこの珍問答、あまりにバカバカしくて、コメントする気にもならない。酷いことは分かっていたけれど、ここまで酷いとは思わなかった。こんなやり取りを日本の国会でやったら、審議は確実に止まるだろう・・・。今週はこのくらいにしておこう。
2026年重要日程レポート23【6月8日版】
<今週以前から続く会議>
5月4日‐6月10日 エリザベート王妃国際音楽コンクール(チェロ部門)(ブリュッセル)
6月1日‐6月12日 国際労働機関(ILO)第114回国際労働会議(ジュネーブ)
6月1日‐6月19日 ICAO航空航法委員会、第232回会合(モントリオール)
6月
<6月7日‐6月14日>
7日 アルメニア議会選挙
7日 OPECプラス閣僚級会合
7日 東京都中野区長選投開票
8日 メキシコ5月自動車生産・販売・輸出統計発表
8日 ASEAN高級実務者会議(SOM)(フィリピン)
8日 チリ5月CPI・貿易統計発表
8日‐6月11日 人権理事会特別委員会によるあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の補完基準の策定に関する第16回会議(第2部)(ジュネーブ)
8日‐6月12日 IAEA定例理事会(ウィーン)
8日‐6月12日 UNDP/UNFPA/UNOPS執行委員会年次総会(ニューヨーク)
9日 メキシコ5月CPI発表
9日 東アジアサミット(EAS)高級実務者会合(SOM)(フィリピン)
9日 米国4月貿易統計発表
9日 カナダ4月貿易統計発表
9日 台湾5月貿易統計発表
9日 中国5月貿易統計発表
9日 サウジアラビア2026年第1四半期GDP推計(確定値)発表
9日‐6月11日 アジア太平洋地域におけるグリーン水素2026(マレーシア・サラワク)
9日‐6月12日 第24回ASEAN・日本STOMリーダーズ会議(フィリピン)
9日‐6月18日 UNFCCC、締約国会議補助機関会合、第64回会合(ボン・ドイツ)
10日 中国5月CPI発表
10日 ロシア5月CPI発表
10日 カンボジア5月貿易統計発表
10日 米国5月CPI発表
10日 カナダ中銀政策金利発表
10日‐6月11日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
10日‐6月13日 タシケント国際投資フォーラム(ウズベキスタン・タシケント)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
11日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
11日 パレスチナ人民の不可侵の権利行使に関する委員会、エルサレム問題に関する国連国際会議(エジプト・カイロ)
12日 ブラジル5月IPCA発表
12日 フランス5月CPI発表
12日 ドイツ5月CPI発表
12日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
13日‐6月16日 IBE 2026 - 国際美容博覧会(クアラルンプール)
<6月14日‐6月21日>
14日 福井県大野、長崎県南島原各市長選投開票
14日‐6月16日 G7首脳会議(フランス・エビアン)
15日 台湾5月貿易統計発表
15日 サウジアラビア5月CPI発表
15日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
15日‐6月17日 「Saudi Food Show 2026」サウジ食品ショー2026年(リヤド)
15日‐6月18日 欧州議会本会議
15日‐6月19日 第27回「SOME」経済産業省会議(ASEAN・METI)(フィリピン)
15日‐6月19日 第4回ASEAN・アジア開発銀行(ADB)対話「4th ASEAN-Asian Development Bank(ADB)Dialogue」(フィリピン)
16日 香港3~5月雇用統計発表
16日 ブラジル4月月間小売り調査発表
16日 チリ金融政策決定会合
16日 EU一般問題理事会
16日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日‐6月17日 ブラジル中央銀行、Copom
16日‐6月17日 米国FOMC、経済見通し発表
16日‐6月18日 ヘルスケア展示会・カンファレンス「Africa Health ExCon2026」(エジプト・カイロ)
16日‐6月19日 ユニセフ理事会年次総会(ニューヨーク)
17日 ロシア第1四半期経済活動別GDP発表
17日 米国5月小売統計
17日 英国5月CPI発表
17日 ユーロスタット5月CPI(HICP)発表
17日‐6月19日 農業技術・スマート農業ソリューション展示会「Agritec Africa 2026」(ケニア・ナイロビ)
18日 英国労働市場統計(2月~4月)発表
18日 ニュージーランド第1四半期GDP統計発表
18日‐6月19日 欧州理事会(EU首脳会合)
18日‐6月21日 スリランカEXPO2026
19日 カナダ4月小売統計発表
19日 ロシア中央銀行理事会
19日 ジューンティーンス(奴隷解放記念日)で米国市場休場
<6月22日‐6月28日>
22日 カナダ5月CPI発表
22日‐6月23日 国連工業開発機関(UNIDO)計画・予算委員会、第42回会合(ウイーン)
22日‐6月26日 サイバー・ウイーク2026(テルアビブ)
22日‐6月26日 中国国際サプライチェーン促進博覧会(北京)
23日 香港5月CPI発表
23日 台湾5月雇用統計発表
23日‐6月25日 世界経済フォーラム夏季会合(夏季ダボス会議)(遼寧省大連)
24日 米国2026年第1四半期国際収支統計発表
24日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
24日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
24日 台湾5月小売統計発表
24日‐6月28日 APEC観光大臣会合(マカオ)
25日 米国2026年第1四半期および対外資産負債残高統計の年次更新
25日 香港5月貿易統計発表
25日 サウジアラビア4月貿易統計発表
25日 ECB一般理事会
26日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
26日 国連環境計画(UNEP)常駐代表委員会、第174回会合(ナイロビ)
26日 メキシコ5月貿易統計発表
27日‐6月30日 MIJF 2026 - マレーシア国際ジュエリーフェア(クアラルンプール)
<6月29日‐7月5日>
29日 カザフスタン第1四半期経済活動別GDP発表
30日 サウジアラビア2026年第1四半期投資報告
30日 チリ3~5月雇用統計発表
30日 ドイツ5月労働市場統計発表
30日 トルコ5月貿易統計発表
30日 沖縄県うるま市(旧石川市)の米軍戦闘機小学校墜落事故67年
6月上旬 ラオス5月CPI発表
7月
1日 アイルランドがEU議長国に(12月末まで)
1日 貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」共同見直し開始
1日‐7月3日 ACUNS年次総会(リスボン、ポルトガル)
2日 アルジェリア議会選挙
2日 6月の米雇用統計(労働省)
7日‐7月8日 NATOアンカラ首脳会議(第36回)(アンカラ、トルコ)
13日‐7月17日 UPEACE-UNITAR 国際法・外交修士課程フィールド訪問(ジュネーブ)
15日‐7月18日 EU-ASEAN・ビジネスミッション(バンコク)
16日‐7月17日 第22回 ASEAN-日本包括的経済連携合同委員会(TBC)(フィリピン)
19日 第59回ASEAN、AMM、準備SOM・SEANWFZ委員会(フィリピン、未確定)
19日 サントメ・プリンシペ大統領選挙(サントメ・プリンシペ)
19日‐7月29日 国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会(韓国・釜山)
20日 第59回ASEAN外相会議(AMM)開幕・本会合(フィリピン、未確定)
21日 ASEAN三者会合(ノルウェー&トルコ)(フィリピン・マニラ市)
22日 ASEAN PMC+1 — 日・米・中・EU・印・豪・露・英・加・NZ。各対話相手国との個別セッション。南シナ海・貿易が焦点 (フィリピン、未確定)
22日 南シナ海行動規範(COC)交渉ラウンド(TBC)(フィリピン、未確定)
28日 1951年難民条約75周年記念(UNHCR)(ジュネーブ)
29日 核実験に反対する国際デー(国連)
30日 人身売買被害者世界デー(UNODC)(国連主催)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問