キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年3月24日(火)
[ デュポン・サークル便り ]
先週は、明け方と日没後に氷点下スレスレの気温が続いていたワシントンでしたが、週末は半そで・短パンでも大丈夫なぐらい暖かくなりました。でも、今週はまた、冷えるんだとか・・・ちなみに、先週の月曜日は「トルネードが来るかも」警報で学校は軒並み半ドン、会社なども軒並み早じまいだったんです。でも、西海岸は3月なのに、すでに場所によっては100°F越えの猛暑なのだとか。いやぁ、早く天気、安定しませんかね。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
先週の一大イベントはなんといっても3月19日にホワイトハウスで行われた日米首脳会談。先月の時点では、総選挙に歴史的大勝利を収めて訪米する高市総理をトランプ大統領が満面の笑みで出迎え、「サナエ・ドナルド」関係をプレイアップするはずだったのに、2月28日にアメリカとイスラエルが対イラン共同軍事作戦を開始してからというもの、そんな楽観ムードは吹っ飛んでしまっていました。特に、3月14日に突如、トランプ大統領が日本、韓国、中国、イギリス、フランスなどの数か国を名指しで列挙して「ホルムズ海峡の警備に船出してくれないかな」ビーンボールを投げ込んできたから、さぁ大変。2015年にすったもんだの末、平和安全保障法制が成立したとはいえ、日本が紛争当事国(つまり攻め込まれていない)ではない状態で、自衛隊出すなんて、どの法律をどう解釈しても今の時点では無理。つまり、「トランプに『ノー』と言わざるを得ない」状況で、首脳会談が一体、どうなってしまうのか、かなり緊張マックスで迎えた首脳会談でした。
が、始まってみれば、高市総理は冒頭から
の3段論法を常にトランプの目を見て微笑みを絶やさずに展開。おかげで、つい前日までの不機嫌さが嘘のように、始終ニコニコと穏やかにほほ笑むトランプ大統領を見て安堵したのは、私だけではないはずです。しかも、ホワイトハウスから公開された夕食会ビデオのダイジェストを見たら、高市総理の手をしっかりと握って腕組みして入場、着席の際に、高市総理の椅子をトランプ大統領がささっと引いてあげるという仰天の「ジェントルマンぶり」までしっかりと映っていました。さすが、「ザ・オヤジ」な永田町でついに総理の座に上り詰めただけのことはありますね、高市総理。
ですが、終始、基本的には和やかなイメージしか出てこなかった日米首脳会談をよそに、アメリカ政治は荒れ続けています。なんといってもガソリン価格の全米平均が、1ガロン4ドルを超えるのは時間の問題。私の住んでいるエリアでは、リムジンサービス会社の運転手のように、ガソリン価格に神経質にならないでいい人たちがガソリンを入れるスタンドでは、レギュラーの価格が1ガロン4ドルを超えるところも出てきました。カリフォルニアに至っては、場所によって8ドル越えのところもあるのだそう。バイデン政権時代も、ガソリン価格の全米平均が4ドルを超えたあたりからかなり「支持率が怪しく」なってきていたのを、トランプ大統領や彼の周辺の人たちが覚えていないわけはありません。とは言え、ガソリン価格は、中東でのドンパチが終わって初めて、価格の安定に向けた対策をとることができるようになる、というのが現実であるため、なかなか思ったようにはいきそうにありません。
なんといっても、今回は、ヴェネズエラで特殊作戦をカッコよく決めたときとは違って、この機に乗じてイランの現体制の殲滅を達成したくて仕方がないイスラエルという「ジョーカー」の存在があるため、トランプ大統領の一存で「撃ち方やめ」ができないのです・・・。一言でいうと、中東って、難しいです・・・。
そんな中、国土安全保障省予算凍結はついに地味に1か月を超え、全米各地の空港では、保安検査官の離職率や欠席率が絶賛、上昇中。このままズルズルいくと、小さな地方空港などは「一時閉鎖を検討せざるを得ない状況になる」とダフィー運輸長官は訴えます。その一方、更迭されたクリスティ・ノーム前国土安全保障長官の後任に指名されたマークウェイン・マレン上院議員については、国土安全保障省関連案件を所掌する上院委員会の委員長であるランド・ポール上院議員(もちろん共和党)が反対票を投じたことが大きな話題となりました。この話は、ポール議員の「no」が、民主党のジョン・フェダーマン議員がこの人事への賛成票を投じたことで中和され、結果、マレン上院議員の国土安全保障長官指名人事は、早ければ来週中には議会本会議での採決を得て承認される見通しです。ノーム前長官の「愛人」疑惑がいまでも収まっていないコリン・ランダウスキー氏が、同省の調達案件で契約が取れるように便宜を図ったのでは・・・という疑惑に関する捜査も始まります。
しかも、先週はスージー・ワイルズ大統領首席補佐官がなんと乳がんを患っているという診断が出たことが公表されました。報道によれば、ワイルズさんからこの診断結果を告げられたトランプ大統領は「すぐに治療を始めなさい。必要なだけ休んでいい」と言ったそうです。しかし、ワイルズさん、がん治療を続けながら大統領首席補佐官の職務は継続する、という驚愕のど根性宣言をしたのです。仕事への使命感がありすぎるワイルズさんですが、考えてみれば第2次トランプ政権が、第1次政権と比べて、閣僚同士のマウンティング合戦系のゴシップをはじめとするリーク記事が格段に少ないのは、このワイルズさんがいてこそ。彼女がいなくなった瞬間、第1次政権時のようなハチャメチャな政権運営になる可能性は非常に高いと言われています。相変わらず支持率の低空飛行が続き、トランプ大統領は当分、ご機嫌斜めの時期が続くこともほぼほぼ既定路線である以上、「安心して休んでいられない」というのが彼女の本音かもしれません・・・。いずれにしても、治療が無事に終わることをお祈りしたいと思います。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員