キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年6月12日(金)
[ デュポン・サークル便り ]
ワシントンは・・・暑いです!まだ6月だというのに、すでに8月を思わせるような蒸し暑さ・・・湿度だけでも落ちてくれると嬉しいのですが・・・・
アメリカ、というか北米大陸ではこれを書いている今日(6月11日)からサッカーのワールドカップが開幕!審判にアメリカ入国のビザが出なかった、選手の入国手続きの際に「ほんとにそこまでやる必要ある?!」というレベルの厳しさで入国審査や荷物検査が行われた・・・などなどのニュースが全国レベルでは話題になっています。ですが、ローカル局のニュースは「〇〇のスペイン料理のレストランでは、スペイン・チームが得点するたびに、その時にお店にいるお客さんにタダでカヴァ(スペイン版スパークリングワイン)のサービスがあります」「〇〇のメキシコ料理屋では、メキシコが得点するたびにマルガリータが一杯、無料提供です」といったB級グルメ情報で溢れかえっています。我が家は「チームUSA」ではなく「サムライ・ブルー」を母子で全力応援していますが、ワシントン市内の日本料理屋では、「サムライ・ブルー応援スペシャル」みたいなものをやってる、という話は・・・残念ながら聞きません(涙。
サッカーのW杯、NBAの決勝、プロアイスホッケー(NHL)のスタンレー・カップ決勝など、スポーツネタはここのところ、ものすごい盛り上がりを見せています。でも、それ以外のニュースについては毎朝起きてニュースを見るたびに、外交か内政、場合によっては両方で炎上ネタがあるため、不感症気味というか、食傷気味というか・・・特に、イラン情勢についてはトランプ大統領が「イラン、がっつり攻撃するぞ、オラぁ!」というツイートを出したかと思うと、そのすぐあとに「やっぱりやめた~」とTACOり、「合意署名は近い!」とアピールするも肝心の合意署名の瞬間は訪れない・・・という無限ループが続いているため、もう何を聞いても「ピーターと狼」状態。ほんとは、そんなことではいけないと思いつつ・・・疲弊しているのはアメリカのメディアも同じ。こんな状態なので、本来ならもっと注目されてもおかしくなかった6月8~9日の習近平主席の平壌訪問も、もはや完全にスルーです。事後に中国と北朝鮮からそれぞれ出た声明の微妙な食い違いとか、実は重要なポイントもあるのに・・・・
このように政治は炎上、スポーツ界はビッグイベント3つが同時進行、というニュースが盛沢山すぎるアメリカですが、やはり、最近最も面白いのはアメリカ内政。6月9日(火)は、メーン、ネバダ、ノースカロライナ、サウスカロライナ各州で予備選挙が行われました。中でもメーン州は、6月8日付「デュポン・サークル便り」でお伝えした「一度しかない人生、悔いなく生きたい(YOLO)共和党議員」の一人であるスーザン・コリンズ議員と本選で戦う民主党候補が誰になるかを決める予備選挙だったため、大きな注目を集めていました。なぜかというと、民主党候補の座をゲットしたのが、かなり民主党候補「らしくない」グラハム・プラトナー候補だから。このプラトナー候補、高校卒業後、海兵隊に入隊、8年海兵隊員として過ごし、除隊後は紆余曲折を経て牡蠣養殖業に従事しているという、筋金入りの「ブルーカラー」候補。この方が立候補してからというもの、「胸にナチス・ドイツを連想させる刺青をしている」とか、「奥様と結婚しているのに不倫」していた、独身時代に付き合っていた「元カノ」から「DV気質」認定された・・などなど、日本だったらまず、政党の「身体検査」にひっかかり「公認なんて無理」な人なんです。ところが、相手は「トランプに追随しすぎ」というバッシングを受けまくって苦しい再選活動を強いられている現職のコリンズ上院議員。彼女を追い落とせるのは、多少、脛にキズがあろうが、ファイティング・スピリットに溢れたこの人しかいない!ということなのでしょう。6月9日の予備選挙では70%以上の得票率でプラトナー氏が快勝、11月の上院議員選の民主党候補になることが確定しました。なんだか「トランプ憎し」のあまり、普通なら出馬しても支持が広がらない感じの候補も、「トランプへの反対票」のの恩恵を受ける・・・という結果になりそうな雰囲気が濃厚。でも、アメリカ政治は一体どうなってしまうのでしょうか・・。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員