キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2025年12月26日(金)
[ デュポン・サークル便り ]
メリークリスマス!日本の皆さんは、どのようなクリスマスを過ごされましたでしょうか。ワシントンは今週は完全にホリデー・モード。私の職場は、なんと今週はずっとお休みでございます。
職場は休みでも、ホリデーシーズンでも、休ませてくれないのがトランプ政権。今週前半には、「ゴールデン・フリート」なる、最新鋭の艦船を米海軍に調達させる計画を発表。トランプ大統領はこれを「戦艦」と呼んでご満悦ですが、現実の米軍は、新しい戦い方の中で、これまでのように「大きくて、精密で、作るのに時間とお金がかかるプラットフォーム」から脱皮し、「小型で、使いまわしがよくて、最新鋭からちょっぴり落ちても早く、安く、たくさん作ることができるもの」を取得する方向に進むべきなのではないか、という議論の真っ只中。これとは真逆の「ゴールデン・フリート」計画、海軍としてはありがた迷惑な部分もあるのではないかなぁ、と思ったりします。
また、クリスマス・イブには、国防省が毎年出している「人民解放軍の軍事力に関する報告書」が発表されました。この中では、中国が2027年までに、核兵器を含め、米国との「戦略的拮抗」をあらゆる面で達成する目的に向け着実に前進していると指摘されました。今日本では、オフレコのはずのいわゆる「核兵器保有発言」が記事になるという、そんなことしたら誰もオフレコ懇談などしなくなって、かえってプレスの方にはマイナス面しかないのに・・・、などと思ってしまうトピックが連日、メディアを賑わせているようです。今回のこの米国防省報告書の内容を見ると、まだ日本は平和ボケしてるよねぇ、と思わざるを得ません。
そんな中、MAGA支持層トランプ支持者に対する反撃も相変わらず続行中。今週頭には、すでに今季限りで議員引退を宣言しているマジョリー・テイラー・グリーン議員がついにCNNに出演。自身の息子さんや家族に多くの脅迫があったことを明かし、それをトランプ大統領やスージー・ワイルズ大統領首席補佐官に直接伝えた際の反応も「きわめて不親切」とバッサリ。特に、ワイルズ首席補佐官については「自身も母親であり祖母であるはずの彼女の、あの反応はあり得ない」とこき下ろし。ただ、この件について語る際に、自分への脅迫について彼女がトランプ大統領やワイルズ補佐官、バンス副大統領に伝えた手法が「携帯へのテキスト」だったことが分かり、やはり彼女は相当、トランプ大統領のインナー・サークルに近いところにいたんだなぁと納得しました。だって、一下院議員が、大統領に直接テキストですよ・・・・
こんな状況の中でトランプ大統領、なんとナイジェリアのISをターゲットに軍事攻撃をしたことも明らかに。ナイジェリアやベネズエラなど、いろいろ理由はつけていますが、アメリカより軍事的に圧倒的に劣る国に対してばかり軍事攻撃しています。これで「どうだ!」と言われてもねぇ・・・的な感もだんだん出てきました。あまりにも「ジャイアン」度が過ぎるアプローチです。
内政、外交ともに引っ掻き回すだけかき回し、アメリカだけでなく世界中を振り回しながら2026年に突入するトランプ政権。いよいよ、来年は中間選挙を迎え、「トランプ後のアメリカ」に向けた動きも少しずつ始まるでしょう。ますます混乱しそうな気もしますが、頑張ってフォローを続けたいと思います。
最後になりますが、今年も一年、「デュポンサークル便り」をご愛読いただき、ありがとうございました。最近は、初めてお目にかかる方に『デュポンサークル便り、読んでます!いつも楽しみにしています!』と言われることも増えてきました。そのような温かいご声援を励みにしながら、来年も頑張りますので、よろしくお願いいたします!
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員