キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年10月22日(木)
[ デュポン・サークル便り ]
中間選挙当日まで、いよいよ2週間になりました。泣いても笑っても、投票日まであと14日。全米各地で連邦議会の上下両院選挙だけではなく、各州の州知事選挙なども、すべて「最後のお願い」モードに移行しつつあります。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
「最後のお願い」期間に突入したものの、相変わらず良いニュースに恵まれないトランプ政権。10月20日には、大手通信社の一つ、ロイターが、最新の世論調査結果を発表。そこで発表されたトランプ大統領支持率は、第1次政権時を合わせてもトランプ大統領にとっては最低の31%。鈍感力抜群のトランプ大統領は、相変わらず、固定支持層の投票率アップを目指した活動を各地で行っていますが、共和党にとって苦しいのは、固定支持層の集会で話すトランプ大統領の映像をメディアが流せば流すほど、民主党候補と接戦を繰り広げている選挙区では、接戦州・接戦区での当選に欠かせない無党派層の支持や、穏健な共和党支持層の気持ちが共和党候補から離れてしまうことです。
しかも、トランプ大統領、ここにきて、接戦州で連日、冷や汗をかいている候補にとって迷惑すぎる政策を次々と発表。その最たるものが、ウクライナ侵略後、アメリカが課した経済制裁の対象になったことで、軽油輸出を中心に、すでに大統領の署名を経てアメリカの国内法になっているものもある対ロ経済制裁の一部を緩和。この措置を今とったからといって、軽油の値段が急速に安値になることはあり得ない、と多くのエコノミストがすでに指摘しているのですが・・・しかも、このような生煮えの発表を突然したことで、民主党からだけではなく、身内の共和党からも大ブーイング。来年1月以降、「前議員」になるため、トランプが怖くなくなったYOLO共和党議員の先陣を切って、トム・ティリス上院議員は既に「プーチンはトランプをいとも簡単に躍らせている」と大っぴらに批判。さらにこの原稿を書いている今日(10月21日)ロシアで長らく拘束されていたアメリカ人の元教師が釈放された際に、「よろず交渉屋」のウィトコフ特使が何とプーチン大統領のことを「ヒューマニスト」だと賞賛、これにアメリカ国内ではバッシングの嵐が吹き荒れています。
さらに!先週、ウクライナのゼレンスキー大統領が、自国防衛に欠かせない「スターリンク」の接続が突然、不安定になったと公表。この原因について「イーロン・マスクが独断でスターリンクの接続帯域を制限した」「いや、そんな大それたこと、トランプ大統領の了解なしに、いくらイーロン・マスクでも出来る訳ないだろう」といった大論争が巻き起こり、こちらも今週に入って収まるどころか、ますます話が大きくなっています。
さすがに大統領支持率が30%を切るか切らないか、という超低空飛行ゾーンに突入したことで、ついに、今朝のラジオでは、再来週の中間選挙で共和党が大敗北を喫した場合、いったい誰が責任を取るのか・・という問題がすでにホワイトハウス内で浮上しているという報道も・・・。何があっても決して自分の責任を認めようとしないトランプ大統領が、中間選挙大敗北の罪を一体誰に擦り付けようとするのかをめぐりホワイトハウス内では既に「テンションMAX」との報道でした。
たしかに、昨年1月の政権発足後は、第1次政権時とは対照的に、ほとんどリーク記事がなかったトランプ政権ですが、ここにきて「ホワイトハウス筋」による情報を元にした記事がジワリジワリと増えています。しかも、こういう時にホワイトハウス広報の「顔」になるべきホワイトハウス報道官にトランプ大統領が直々に任命したケイティ・ザッカリアさんが、初めての記者会見で大コケ。さらに「弁護士」という触れ込みだったのに、実は弁護士の資格なんて最初から持っていなかった、という「経歴詐称」事案も浮上し、結果としてなんと、就任後たった5日で解任に。第1次政権の時も初代ホワイトハウス報道官になったアンソニー・スカラムーチ(通称「むーち」)が11日しか務まりませんでしたが、彼の最短記録をも大幅に更新するという恥ずかしい事態に。
ちなみに、先日、共和党の下院議会スタッフに会う機会があり、「中間選挙、どう思う?」と話を振ってみたら「一寸先が闇だから、今すぐ解雇されるとかはないと思うけど、念のために仕事探してる・・・」という答えでした。トランプ政権、学級崩壊が足元まで来ているのかもしれません。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員