メディア掲載 エネルギー・環境 2026.03.04
2人に1人が苦しむ「国民病」「政府は無花粉待つより大規模伐採を」
東京新聞(2026年2月19日付)に掲載
| 東京新聞(2026年2月19日朝刊)に、堅田主任研究員への取材内容が掲載されました。 ※該当箇所は後半の太字部分です。 |
東京都は16日、都内でスギ花粉の飛散が始まったと発表した。今年の春はヒノキ花粉と合わせ、昨年の1.4倍程度の飛散量が予想されている。日本人の2人に1人が花粉症患者ともいわれるが、抜本的な解決が見通せないでいる。(山田雄之)
「1月下旬から鼻がむずむずしていたが、急に鼻水が止まらなくなって『来たか』と思った」。5年前に花粉症を発症した東京都江戸川区の女性会社員(35)は今月12日、耳鼻科を受診した。現在はアレルギー反応を抑える飲み薬や目薬、点鼻薬を使う毎日だという。「今年は、花粉が多いと聞いている。気温が上がるのはうれしいが戦々恐々だ」とため息をつく。
都によると、12カ所ある測定地点のうち八王子市や立川市など多摩地区の7地点で13日、23区で14日に飛散開始が確認された。飛散開始日は、測定地点に置かれたスライドグラスに「1平方センチに1個以上」の花粉が2日続けて付いた最初の日とされる。
都の花粉症対策検討委員会は1月下旬、今春の都内でのスギ・ヒノキの花粉飛散量を昨春の1.4倍程度とする予測を発表した。都の担当者は「専門家による予測だが、花粉量は雄花が形成を始める前年6~7月の日照時間が影響するとされており、関東地方は平年より長かった。雄花の数が多くなり、飛散が増えるとのことだ」と説明。「外出時にマスクやメガネを使うなどしてほしい」と呼びかける。
日本気象協会が1月中旬に発表した全国の予測では、今春の花粉飛散量は東日本と北日本で例年より「多い」や「非常に多い」、西日本は「例年並み」が多い。スギ花粉の飛散ピークは東京や福岡は2月下旬からと早く、広い範囲でピークは3月上旬~中旬とみる。ヒノキ花粉のピークは3月下旬~4月上旬を見込む。
花粉症患者は増え続けている。環境省の資料によると、花粉症の有病率は1998年が19.6%、2008年が29.8%、19年には42.5%と10年ごとに約10%ずつ増加している。
名古屋はなまる耳鼻科クリニック(名古屋市)の佐藤裕也院長は「花粉症は免疫反応が過剰になった状況で、鼻水やくしゃみ、目のかゆみの症状が出る。花粉を浴びて体内に抗体が蓄積され、十分な量ができた段階で症状が出るので、急に発症したように感じてしまう」と説く。
治療法について「9割以上の患者が症状を抑える薬物治療だが、つらい患者は免疫反応を緩和させる『舌下免疫療法』で体質改善したり、鼻の中の粘膜を焼くレーザー手術などを選択する場合もある」と話す。
「国民病」ともいわれる花粉症だが、キヤノングローバル戦略研究所の堅田元喜主任研究員は「史上最大の公害だ」と国の責任を指摘する。「原因となっているスギやヒノキは戦後、住宅建材を供給することを目的とした『拡大造林』という国策で植えられた人工林だ。植林から30年以上たち、大量の花粉が飛散し続けている」と強調する。
「花粉症は集中力をそいで仕事の効率を下げ、年間数千億円もの経済損失をもたらす」と説明する堅田氏。政府は岸田文雄政権時代の2023年、花粉症に関する関係閣僚会議を設け、スギ人工林の10年後の2割減や無花粉スギの増加などの目標を掲げた。これに対し、「全国各地の花粉症患者にとっては微々たる効果だ。被害をもたらしているエリアは把握しているのだから、無花粉スギの普及を待つのではなく、広葉樹も植林しながら、政府は集中的に大規模に伐採すべきだ」と提言する。