10月21日、高市早苗内閣が発足した。自民党が大敗した7月の参院選後、約3カ月にしてようやく国政が再始動した。憲政史上初の女性宰相誕生を心よりお祝い申し上げたい。
今回の自民・日本維新の会連立政権についてちまたの関心は閣僚人事や議員定数削減、企業・団体献金禁止などに集中している。だが、両党の政策合意文書を精読すれば、外交・安全保障分野でも地殻変動が起きそうな気がする。というわけで、今回は合意文書から高市内閣の外交安保政策を占ってみたい。
昨年の自民・公明党政策合意は全文1969字だったが、自民・維新合意文書は5933字もある。外交・安保・諜報だけでも1066字、昨年はわずか284字だった。
自民・維新合意は内容も極めて具体的だ。「自立する国家として、日米同盟を基軸に、リアリズムに基づき、戦後80年にわたり積み残した宿題を解決する」とした上で、以下のような点に言及している。
ちなみに、昨年の石破茂自民と公明の政策合意の外交安保部分はこんな感じだった。
うーん、これが同じ自民党なのか。総裁と連立相手が変わるだけで、基本政策はこうも違うのか。長年日本の安保政策を学んできた者にとって、今回の政策合意は夢のような話、にわかには信じられない内容である。
驚き喜んでばかりはいられない。理想の政策を文章に書き自民・維新で合意することと、これらが実際に立案・実施されることは全く別だからだ。思い付くだけでも次のようなことがある。
以上、やや意地悪く解説したものの、もし本当にこれらを実行するならば、日本の安保政策は飛躍的に向上する。本来なら冷戦時代に全て実施しておくべきだった政策ばかりだが、冷戦後は根拠のない楽観主義が蔓延し、必要な改革は棚上げされた。その状況は過去26年の自公協力時代も継承された。これら政策の実現は容易ではないが、今こそ本気で取り組むべき時だ。高市首相には外交安保でも政策実現を大いに期待したい。