メディア掲載 グローバルエコノミー 2025.09.09
亡国の「高米価・減反」政策は見直されるのか
農業技術通信社『農業経営者』(2025年8月15日発行)に掲載
2024年食料・農業・農村基本法が見直された。これは改悪である。農林水産省、JA農協、自民党農林族議員の農政トライアングルは、同法が目指した構造改革を、価格支持による農家保護、農家丸抱えという1960年代から80年代にかけて実施された政策に戻そうとしている。
基本法の見直しで零細な兼業農家も農業の担い手に位置付ける。しかし、主業農家に農地を集積して大きな所得を上げてもらい、元兼業農家の地主が地代を受け取って農地、水路、農道などの維持管理を行うことの方が、農村社会の維持に適う。
農林水産省は輸入リスクが高まったことを盛んに強調するが、穀物・大豆の輸入額は日本の総輸入額の1.0~1.6%に過ぎない。高い国産品を負担している国民が輸入品を買い負けることはない。価格高騰で日本に危機は起きない。 “適正な価格形成”を主張し農産物価格を上げることは、農業の構造改革を阻むとともに、貧しい消費者を圧迫する。輸出増進にも反するし、今後の通商交渉を困難にする。「直接支払い」なら、農業の持続性も消費者への安価な食料供給も実現できるのに、あいかわらずというより以前にもまして、高い価格で農業を保護しようとしている。
減反を止めて輸出すれば輸入リスクも全く心配する必要がなくなる。問題なのは、輸入リスクではなく農政リスクだ。
米の生産調整(減反)は巨額の補助金を農家に出して供給を減らし米価を上げる政策だ。水田の4割を減反して今でも1000万トン可能な生産量を650万トン程度に抑えている。減反を止めて350万トン輸出していれば、輸出量を若干少なくするだけで国内の不足や米価格の高騰は生じなかった。1993年の平成の米騒動も根本的な原因は減反である。生産可能な1400万トンを減反で1000万トンに減らしていた。それが冷夏で750万トン程度に減少した。しかし、通常年に1400万トン生産して400万トン輸出していれば、冷夏でも1000万トンの生産・消費は可能だった。
2024年から25年にかけての米不足と価格高騰によって、ようやく国民は減反の誤りに気づくようになった。これは、高額の納税者負担を行って供給を減らし消費者負担を高めてきた。また、水田の多面的機能と危機時の食料供給(食料安全保障)を損なってきた。今輸入が途絶すると半年経たずに国民は餓死する。亡国の政策は見直されるのだろうか。