先週末、都内某所で筆者の所属するキヤノングローバル戦略研究所が「保守ポピュリズム」をテーマに政策シミュレーションを実施した。この種の演習は2010年以来、毎年数回ずつ開催しているが、今回も官界、学界、ビジネス、ジャーナリズムの精鋭約40人が集い、関係政府・報道関係者などの役を一昼夜リアルに演じてもらった。その成果は現在精査中だが、まずは演習を統括した本多倫彬(ともあき)、吉岡明子両主任研究員および、猛暑の中参加された各位の知的貢献に深甚なる謝意を表したい。
通常この種の政策演習のテーマは外交・安全保障問題が多いのだが、今回はあえて国内政治にも焦点を当てた。状況は近未来の日本、新興保守ポピュリズム政党が連立政権入りする状況を想定した。もちろん、完全な架空のシナリオだが、結果はかなりの驚きだった。
保守大政党内最右派の首相が、尖閣諸島周辺での活動強化など、連立に参加した保守ポピュリズム政党閣僚の過激な諸政策を制御できず、ついに辞任に追い込まれる。
事態を憂慮した既存の中道与野党勢力は、保守ポピュリズム政党を外して新たな「大連立」を組み、中道安定政権を誕生させた。だが、ゲームはそこで終わらない。
日本政府の強硬策に対し、中国チームは態度を硬化、尖閣諸島周辺で日中の沿岸警備隊が衝突する。その結果、日本は同諸島の実効支配を失っただけでなく、中国側艦船を沈没させてしまう。これに対し、米国は「現状変更を試みた日本」と距離を置く一方、中国とは共同声明を発表し、日本の頭越しに、米中が連携・協力を強化する姿勢を打ち出した。要は尖閣での「実効支配喪失」と「米中G2構築」という悪夢のような「負の遺産」が残ったのだ。
たかが演習、されど演習である。終了後の検証会で筆者はこう述べた。
この種の演習は未来予想ではないが、「頭の体操」には結構役立つ。翌日、某通信社の選挙分析はこう書いた。
「バズる」ためのパフォーマンスと冷徹な安全保障戦略をいかに両立させるのか、いや、そもそも、両者は両立可能なのだろうか。今回の政策シミュレーションを通じて得られた教訓は、予想以上に重いものだった。