2015年に世界のほぼ全ての国(195か国)が合意した「パリ協定」の締結から、国際社会における脱炭素への取り組みは加速してきた。当初は化石燃料の輸出への悪影響を懸念して反対する姿勢を見せた中東産油国も、2000年代に入ってから次第にその流れを受け入れ、現在では再生可能エネルギーの一大拠点になりつつある。 しかし、再生可能エネルギー利用が技術革新とともに本格的になり、実際に従来の石油・石炭からの電力を代替えできるようになってきた今日、 「脱炭素疲れ」とも呼ばれる現象も世界的に見られるようになってきた。本稿ではパリ協定からほぼ10年を経た現在の脱炭素を巡る主要国の状況を概略し、分断化が進む国際社会における湾岸産油国の新たな可能性について考察する。