世界はトランプ米大統領に振り回されている。やりたい放題のことができるのは、大統領選で圧勝したうえ共和党議員の支持を得ているからだ。彼のコアの支持者は自動車や鉄鋼業など製造業に関係する白人層である。共和党議員も党の予備選挙を勝ち抜くには、共和党員の中の大きな勢力であるトランプ氏の支持者の支援が必要なため、トランプ氏を支持するほかない。
トランプ氏は製造業の復活を唱え、中国だけでなく隣国や同盟国にも関税をかける。かつて自由貿易を唱えた共和党の面影はない。経済を下で支える移民にも、職を奪っていると主張して厳しい態度をとる。製造業のコスト増になる地球温暖化対策は無視する。米国社会の分断は恐れず、支持者ではない高学歴の連邦政府職員は大量解雇する。
対外政策では、米国が主張してきた自由と民主主義の大義は無視し、見返りがなければ助けない。ウクライナにはレアアース(希土類)の提供を求め、日本が米国を守る義務がないのはフェアではないと言う。
これらはブーメランとなって米国自身を傷つける。関税はインフレをもたらす。株価はかなり下がった。株価回復のため金利を下げるとまたインフレが進む。石油を掘りまくれというが、すでに最大限生産しているし、エネルギー代は家計支出の10%以下なので、その値段を下げてもインフレ対策にならない。
中国が小麦や大豆などの関税を引き上げると共和党支持者の農家が悲鳴を上げる。何よりインフレは経済的に弱い彼の支持者に打撃を与える。国際社会では友人をなくす。
次の大統領選挙では、今度は民主党の候補者が4年前と比べて生活は良くなったかと国民に問うだろう。いつ王様は裸であることに気づくだろうか。