選抜高校野球(春の甲子園)大会で2回戦が行われた24日、陸海空の各自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」が発足した。異なる場所にあった陸海空自衛隊各司令部に代わり、統合作戦司令部が「防衛大臣の命令の下、各自衛隊を一元的に指揮する」「統合幕僚長は『二役』が解消され戦略面に専念」し「作戦面は統合作戦司令官が担い役割分担する」などと報じられた。
「戦略面」と「作戦面」で「役割分担」と言われても、今回の組織改編の本質を正確に理解できる人は少ないだろう。また、米側も昨年、在日米軍を「統合軍司令部」に再編し「自衛隊との指揮統制の連携を強める方針」を打ち出した。でも、既に横田には「在日米軍司令官」がいるではないか。なぜ再編で「共同対処能力が向上」するのか。素人にはちょっと分かりにくい。
そこで今回は、誤解を恐れず、日米共同対処を甲子園の高校野球になぞらえ、できるだけ分かりやすく説明を試みたい。
まずは対戦チームから。相手は「中国」チームだろうが、単独では戦えない日米は「合同チーム」を編成する。
高校野球になぞらえれば、日本高校の理事長は総理大臣、校長は防衛大臣だろう。ところが、合宿所で鍛えられた選手たちを甲子園の実戦で指揮統制する肝心の監督は今週「統合作戦司令官」が就任するまで実は不在だった。「統合幕僚長」はあくまで校長と理事長を補佐する「教頭」にすぎないからだ。これが「作戦面」と「戦略面」の違いである。
次にややこしいのが米国高校だ。理事長は大統領、校長は国防長官。ここまでは良いとして、在日米軍を含む米軍各部隊を指揮統制する権限を持つ、すなわち「実戦を指揮する」司令官は日本にはいない。米国高校の監督はハワイのインド太平洋軍司令官だからだ。
賢明な読者の中には「監督不在だと? 在日米軍司令官がいるではないか」といぶかる向きもあろう。当然の疑問なのだが「在日米軍司令官」は実戦の指揮権を持たない。同司令官の主な任務は在日米軍の各部隊が実戦に耐える能力を維持すること。誤解を恐れずに言えば、在日米軍司令官は米国高校の「合宿所の管理人」であって、甲子園のベンチ内で決勝戦を戦う「監督」ではないのだ。
さらにややこしいのは、この日米両高校が「合同チーム」で戦う必要があることだ。通常甲子園の監督は1人だが、日米「合同チーム」は例外である。ちなみに、韓国では「在韓米軍司令官」が「米韓連合軍司令官」と「朝鮮国連軍司令官」を兼ねており、3つのチームの監督は1人である。
一部マスコミは「統合作戦司令部」設置で「日本の指揮権の独立性を担保できるのか懸念も残る」などと報じているが、これはうがった見方だろう。日本側の統合作戦司令官の有無にかかわらず、米韓とは異なり、日米の指揮権はそれぞれ独立しているからだ。
最後にややこしいのが、米国防総省が経費削減の一環として、在日米軍の態勢強化の計画を中止する可能性があるとの報道だ。「トランプ政権が在日米軍の再編計画を中止すれば、日米の連携にも大きな影響が及びうる」とも報じられた。だが、決して慌てる必要はない。仮に再編計画が維持されても、完了までには時間がかかる可能性が高い。戦闘指揮権を有する4つ星(大将)レベルの米軍司令官が韓国と日本とハワイに3人もいるからだ。有事はその前に起きるかもしれない。自衛隊「統合作戦司令官」の役割が就任当初から極めて重要になることだけは間違いなかろう。