店頭からコメが消え米価が過去最高値に騰貴しても、農林水産省はコメ不足を認めない。新米供給後には下がると言った米価がむしろ上がると、農協の集荷量が低下して他の業者がためこみ、あるはずの21万トンが流通から消えたからだと主張している。
農協の集荷割合は食糧管理制度時代の95%から5割に低下している。農協の集荷量と全体の供給量とは別だ。猛暑などで昨年40万トン不足した。本来なら昨年10月から食べる24年産米を先食いしたため、24年産が18万トン増産されても22万トン足りない。消えたのではなくコメがないから、集荷競争が激化し農協の集荷量が減ったとみるべきだろう。
農水省がコメ不足を否定するのは、備蓄米を放出して米価を下げたくないからだ。石破茂首相に早期実行を促されてやっと重い腰を上げたが、備蓄米を放出した後に買い戻すのでは供給量は増えない。しかも、放出の相手先は消費者に近い卸売会社ではなく、減反・高米価を進めてきた農協である。一部の農協は備蓄米放出に反対している。農協が米価を維持しようとすれば、備蓄米は放出されても流通に乗らないのではないか。
備蓄制度も、古くなった備蓄米を市場のコメと交換する方式をやめ、毎年20万トン買い入れ5年後にエサ米に処分する方法に変更している。その狙いは、補助金で生産量を減少させる減反(生産調整)と同様、市場から隔離することで米価を高く維持することだ。これらに国民は毎年度、計4千億円を負担している。
生産量を増やして輸出しておけば、国内の不足時は輸出の一部を振り向けるだけで今回のようなことは防げる。政府備蓄は不要になる。農家保護なら政府から1500億円ほど直接支払いをすればよい。国民・消費者を無視した高米価農政を転換すべきだ。