親愛なる読者の皆さま、寒中お見舞い申し上げる。
さて昨年筆者は「2024年に起きないこと」として、(1)ネタニヤフは譲歩しない(2)プーチンは諦めない(3)トランプも諦めない(4)習近平は台湾侵攻しない(5)金正恩(キムジョンウン)は暴発しない(6)温暖化論は止まらない(7)インドは軍事同盟を急がない(8)派閥はなくならない-と書いた。以下はその25年版である。
(1)ネタニヤフは譲歩しない
ガザで始まったイラン・イスラエル代理戦争は両国間の限定直接戦闘に発展した。親イラン勢力は大打撃を受け、シリア独裁政権も崩壊した。その間、イスラエル首相はバイデン政権の停戦要請を拒否し続けた。今年もネタニヤフは譲歩しないだろうが、追い詰められたイランが核武装を急げば、イスラエルは核施設を攻撃する。日本の原油の9割が来る湾岸地域に飛び火しないことを祈るしかない。
(2)プーチンは諦めない
前回は「トランプが返り咲きウクライナ支援を中止すれば状況は変わる」と書いた。だがプーチンもゼレンスキーも自国に不利な停戦案を受け入れる可能性は低い。ウクライナ戦争早期解決は難しく、25年もウクライナにとって厳しい年が続くだろう。
(3)トランプも諦めない
昨年は「トランプ再選は各種裁判の行方次第」と書いたが、トランプは生き残り、バイデン・ハリス民主党が自滅した。これでトランプ現象は不可逆的となり、今年トランプはワシントンに巣くう「闇の政府」関係者に対する復讐に明け暮れるだろう。
(4)習近平は台湾侵攻しない
昨年は軍高官粛清報道を踏まえ「好鉄不打釘、好人不当兵(良い鉄は釘にならず、良い人間は兵隊にならない)」ので「間接侵略はともかく、台湾への直接軍事侵攻は当分できない」と書いた。だが、今も軍高官異例人事は続いている。不動産バブルははじけ、経済が低迷し、若年失業率も高止まり、各地で無差別殺傷事件が頻発する今の中国は「台湾侵攻」どころではないはずだ。
(5)金正恩も暴発しない
北朝鮮の核開発の目的は戦争ではなく金体制の存続だ。されば、金正恩に「威嚇」はできても、「軍事侵攻」などできない。第2期トランプ政権の誕生、韓国大統領選挙の可能性といった不確実性が高まる中、露朝関係の進展や弾道ミサイル技術の向上など懸念材料はあるが、今年も金正恩は「構ってチャン」を続けるしかないだろう。
(6)温暖化議論は進まない
筆者は地球「温暖化」の専門家ではないが、トランプ政権があらゆる手段を駆使して「温暖化論」自体に背を向けることは容易に予想できる。今年は気候変動専門家にとって受難の年となるだろう。
(7)中道勢力は復活しない
トランプ再選は、第二次大戦後欧米中道勢力の進めた自由主義的「グローバリズム」が後退し、代わりに「民族第一主義」「ポピュリズム」が再び台頭し始める前兆である。近い将来、欧米各国で中道勢力が復権する兆候はない。
(8)自民党は下野できない
昨年は「自民党は結党以来一貫して『保守ミニ諸政党』連立であり、派閥はなくならない」と書いた。既得権を共有するミニ政党連立政権は政権を握る限り存続できるが、権力を失えばいずれ雲散霧消する。今年の選挙の結果がどうであれ、自民党は下野できない。それは自民党が強いからではなく、下野して3年予算を作れなければ政治的に消滅する恐れがあるからだ。今後も日本内政の不安定化が続けば、日本の国際的地位は確実に弱体化するだろう。
本年もこのつたないコラムをご愛読いただければ幸いである。