ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2024.10.15

ワーキング・ペーパー(24-021E)Inflation Expectations and Spending: Evidence from an Experiment and Bank Transaction Data in Japan

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

金融政策の効果を高めるために、中央銀行の民間との対話の重要性が指摘されている。本稿では、2%のインフレ目標などのインフレ率についての情報の提供が、個人のインフレ期待にどのように影響するのか、そして、その後の支出行動にどのように影響するのかを分析した。アンケートでは、回答者を事前に3つのグループに分け、3種類のうち1つの異なるインフレ率についての情報を与えた。今回、銀行口座保有者約2,500人からアンケートの回答を得た。

分析の結果、第1に、情報の提供は個人のインフレ期待に有意な影響を与えることがわかった。高いインフレ率についての情報はインフレ期待を高くし、逆に低いインフレ率についての情報はインフレ期待を低くする効果をもつ。また、異時点間の代替と整合的な形で、インフレ率と支出の期待が変化することもわかった。

2に、インフレ率に関する情報の提供は、個人の実際の支出行動には有意な影響を与えていなかった。情報の内容により、その後の支出行動の変化には明確な差はなかった。敢えていえば、資産の多い個人では、10%という高いインフレ率についての情報の提供によって、支出を増加させる傾向があった程度である。

これらの結果は、期待の誘導を通じた政策の難しさを示唆する。

ディスクレーマー

分析で用いるデータは、みずほ銀行と早稲田大学との委託契約によって提供され、個人が特定されないようにマスキングなどの匿名加工などの措置が取られた環境で分析された。またアンケートは、早稲田大学の人を対象とする研究に関する倫理審査委員会の承認を得ている(2023-440)。本稿で述べられる見解や意見は、あくまでも著者のものであり、みずほ銀行のものを反映するものではない。

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ワーキング・ペーパー(24-021E)Inflation Expectations and Spending: Evidence from an Experiment and Bank Transaction Data in Japan