ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2024.10.10

ワーキング・ペーパー(24-019E)How Do Gamblers React to Wins? Evidence from Bank Transaction Data in Japan

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

ギャンブルは、大きな経済規模をもつだけでなく、ギャンブル依存症など、個人そして社会に大きな問題を引き起こす。本稿では、ギャンブルによる収入によって、個人のギャンブル支出および消費行動がその後どのように変化するのかを分析する。

本分析での大きな特長は、銀行取引データを使うことで、個人のギャンブル支出と収入の額が観測できることである。特に中央競馬(JRA)に着目するが、週・個人単位での馬券購入額と、それに対する払戻という流れがわかるほか、ギャンブル以外への支出を通して消費の変化も分析できる。馬券購入から払い戻しへの時間の流れが明確にわかるので、予期されないギャンブル収入を識別可能である。

本稿では、主に5つの設問に答えることを目指した。

  • 予期されないギャンブル収入に対する、その後のギャンブル行動(限界ギャンブル性向、MPG)の大きさ
  • 予期されないギャンブル収入に対する、その後の消費行動(限界消費性向、ギャンブル除く、MPC)の大きさ
  • ギャンブラーの異質性(特にギャンブルへの支出割合や頻度)と、MPGMPCの関連
  • ギャンブルの具体的な結果(払い戻し額の大きさや、ネットで利益を得る・失うことの効果など)が、その後の行動に与える影響
  • ギャンブラーの代表性

分析の結果、以下のことがわかった。

  • MPGは約5%。持続的ではあるが12週程度でゼロに収束する。
  • MPCは約35%。極めて短期的効果しかない。
  • ギャンブルへの支出割合や頻度に関するギャンブラーの異質性は極めて大きい。しかし、それらと、MPGMPCとの関連は薄く、MPGMPCは安定的である。流動性制約は、消費には影響しているが、ギャンブルには影響していない。
  • ネットで利益を得ることで、その後のギャンブルは非連続的に増える。これは、loss chasing effectとは逆の結果。また、払い戻し額の大きさがもたらす所得効果(big win effect)は、消費にはプラスだがギャンブルには確認されなかった。
  • ギャンブラーとギャンブルしない人は、年齢や性別などで大きく属性が異なる。しかし、それらをコントロールすると、定額給付金に対するMPCは両者で有意に異ならない。

ディスクレーマー

分析で用いるデータは、みずほ銀行と早稲田大学との委託契約によって提供され、個人が特定されないようにマスキングなどの匿名加工などの措置が取られた環境で分析された。本稿で述べられる見解や意見は、あくまでも著者のものであり、みずほ銀行のものを反映するものではない。

全文を読む

ワーキング・ペーパー(24-019E)How Do Gamblers React to Wins? Evidence from Bank Transaction Data in Japan