メディア掲載  グローバルエコノミー  2024.09.26

コメ価格維持政策の被害者

日本経済新聞【十字路】(2024年9月11日付)に掲載

農業・ゲノム

コメ価格の高騰が続いている。農林水産省は民間在庫はあると言いコメ不足を認めない。しかし、7月末の在庫は前年比40万トン減の82万トンと記録的な低さだ。小売価格が高騰すれば卸売業者は小売りにコメを売りたいところだが、コメ不足でできない。新米が出れば落ち着くといわれるが、今は不足分を今年産のコメから先食いしているので、来年78月の端境期になればまた不足する。

農水省やJAは「減反(生産調整)」の強化で3年前に比べ米価を5割も上昇させた。いまここで備蓄米を放出して米価を下げることは避けたいだろう。政府は毎年20万トンずつ主食用米を市場から隔離し、備蓄として買い上げている。財政負担は毎年500億円。減反補助金3000億円と合わせて3500億円を国民は納税者として負担して、消費者として高い米価を払っている。

他の作物に転作して自給率を上げるという名目で減反補助金を払ってきた。しかし、零細なコメ兼業農家は麦や大豆を作る技術がないケースもあり、タネだけまいて収穫しないという対応すらあった。このためエサや輸出などの用途のコメを転作作物として、主食用との価格差を補助金として払っている。一物多価というゆがみが生じ、国民は高いコメを買う一方、豚や鶏、外国の人は安い値段で日本のコメを食べている。

減反をやめ全体の米価を下げて輸出すれば不足になっても輸出量で調整すればよい。米価が下がった影響を受ける主業農家には所得補償すればよい。兼業農家も農地を貸しだせば地代収入を得る。消費者、納税者、コメの扱い量が減った販売業者、全てが減反の被害者といえる状況は変えられるか。これだけ騒がれてもコメ問題が自民党総裁選の争点にならないのが残念だ。