ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2024.09.24

ワーキング・ペーパー(24-018E)Non-exponential growth theory

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

論文名:非指数関数的経済成長理論

アメリカでは、19世紀中盤以降、一人あたり実質GDP成長率は約2%弱で安定している。中短期の変動はあるものの、多くの国で長期の経済成長率は安定的である。一人あたり実質GDP成長率が一定ということは、一人あたり実質GDPの値は指数関数的に増加していることになる。この事実を受け、既存の経済成長理論では、最終財の生産量が指数関数的に増えるプロセスをモデル化している。

しかし、通常の生産関数では生産量の増加は投資に対して逓減するので、最終財が指数関数的にふえるようにするには、何らかの外部性を仮定しなければならない。内生的経済成長理論で主流となっている研究開発をエンジンとする経済成長理論においては、研究開発投資による新たな財の開発が、過去の研究開発から強い外部性を受ける必要がある。しかも、Jones (1995)に指摘されるように(指数関数的人口増がない限り)これらの外部性がある特定の強さでなければ、指数関数的経済成長は持続できない。つまり、既存の内生的経済成長理論はナイフ・エッジ的仮定に依存している。

本研究では、単一の最終財を考えるのではなく、様々な最終財が開発され、かつそれらの財の相対価格や数量が財の年齢(出現からの年数)により変化していくプロセスを考える。個別の財の生産性は経験により上昇するが、その上昇率は次第に逓減することもモデル化する。その上で、実質GDP成長率は実際の経済統計(SNA統計)と同様の方法で計算する。そうすると、一人あたり実質GDPは様々な財の生産性の増加率の加重平均(ウェイトは支出シェア)と表されることがわかる。このモデルはナイフ・エッジ的仮定を含まないが、新しい財が開発され、生産性増加率が低下した古い財が抜け落ちるプロセスをモデル化することで、マクロ的には長期的に安定的な経済成長率が実現できることがわかる。

この理論は、経済政策の分析にも活用することができる。経済成長率をプラスに保つための条件は、古い財・旧産業に対する支出が大きくなりすぎないことである。そのため、旧産業を支援するような政策は経済成長率を低下させ、最悪の場合0にしてしまうことがわかる。一方、支出シェアや労働力が新しい産業にスムーズに移行すればするほど経済成長率は高くなる。

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ワーキング・ペーパー(24-018E)Non-exponential growth theory