メディア掲載  グローバルエコノミー  2024.08.08

コメ価格上昇とインバウンド消費

日本経済新聞【十字路】(202481日付)に掲載

農業・ゲノム

コメの小売価格が上がっている。これは昨年の猛暑による不作や品質低下とインバウンド(訪日外国人)による消費増のためといわれている。

しかし、2023年産米は作況指数101で平年作を上回っていた。品質低下なら価格は下がるはずだ。また毎月300万人の旅行者が日本に7日間滞在して日本人並みに食べたとしても、消費量は0.5%増に過ぎない。最近話したある外国人は、大正の米騒動で富裕者が攻撃されたように、日本を楽しむ外国人旅行者を妬んで悪者にするつもりだとまで疑っていた。もちろん我々日本人にそのような悪意はないと伝えた。米価上昇の根本的な原因は「減反(生産調整)」だ。

減反とは農家に補助金を与えてコメの供給を減らして米価を上げるものだ。数年前から農業団体は農家にもっと生産を減らすように指導してきた。農林水産省としては目的通り米価を上昇させて満足していることだろう。

大正の米騒動は、地主階級が政府に関税を導入させ輸入を減少させていたところに、輸出が増加して国内の供給が減少したことが原因だ。当時輸出は農家にとってはこれ以下に下がらないという価格安定機能を果たしていた。

1993年の平成の米騒動は冷夏が原因といわれているが、根本的な原因は減反である。当時の潜在的な生産量1300万トンを減反で1000万トンに減らしていた。それが不作で783万トンに減少した。しかし、通常年に1300万トン生産して300万トン輸出していれば、冷夏でも1000万トンの生産・消費は可能だった。

今は水田の4割を減反して生産量を700万トン以下に抑えている。しかも余裕のない需給操作なので、今回のようにささいなことで価格は変動するというのが実態だろう。