ワーキングペーパー グローバルエコノミー 2024.05.14
本稿はワーキングペーパーです。
キャッシュレス決済は、現金と違って支出したという心理的感覚が小さいため、余計な支出を招くという指摘がある(subdued salience)。そこで本稿では、キャッシュレス決済が支出を刺激するのかを銀行取引データを使って実証分析した。具体的には、PayPayへのチャージ記録を抽出し(ATMを使った現金振り込みやクレジットカードを使ったチャージは除く)、チャージ前後でのその他の支出額を分析した。個人と時間の固定効果を入れ、また、PayPayが2020年頃に実施したキャンペーンの情報を操作変数として使うことで、キャッシュレス支出からその他支出への方向の因果関係を識別した。分析の主な結果は、①キャッシュレス決済は支出を刺激する、②ただしその効果は極めて短期的、③しかしながら、キャンペーンがPayPay使用を高める効果は持続的であった。