ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2023.12.07

ワーキング・ペーパー(23-002J)日本におけるコア・インフレとトレンド・インフレ

本稿はワーキングペーパーです。

経済理論

 本研究では費目別(セクター別)のインフレ率やコア・インフレを用いてトレンド・インフレを推定している。バブル崩壊後、トレンド・インフレはマイナス1%~プラス1%の範囲で推移していたものの、2022年頃より上昇を始め、直近では3%を超えるようになっている。現在のインフレ率の上昇は一時的なものではなく、基調的な上昇であると言える。トレンド・インフレの上昇には、食料や教養娯楽といった費目のトレンド・インフレの上昇が大きく寄与している。教養娯楽には、テレビ、パソコン、カメラなどの耐久財が含まれており近年の半導体価格の上昇が寄与していると考えられる。

 推定に用いたモデルは、セクター別のインフレ率を用いた多変量モデルと、コア指標を用いた一変量モデルの二つがあり、両者を用いてトレンド・インフレが将来のインフレ率を予測できるか、予測精度の比較をした。その結果、セクター別のインフレ率を用いた多変量モデルの予測精度が最も高いことが分かった。クロスセクション情報を利用することはトレンド・インフレの予測精度の改善に有用であることを示唆している。3つのコア指標(コアCPI、コアコア CPI、エネルギーを除く CPI)とCPI総合をそれぞれ用いた一変量モデルの結果を比較すると、コアCPI(生鮮食品を除く総合)を用いたトレンド・インフレが多変量モデルに次いで予測精度が高いことが分かった。推定された直近のトレンド・インフレが3%を超えていることから、今後13年間のインフレ率は3%を超え続ける可能性がある。

全文を読む

ワーキング・ペーパー(23-002J)日本におけるコア・インフレとトレンド・インフレ