メディア掲載  エネルギー・環境  2023.11.16

温暖化問題を巧みに克服する都市農業の適応力

《特集 気候変動と日本社会――脅威にどう行動する》

月刊「公明」12月号

エネルギー・環境

大都市は地球温暖化が進んだ未来

農業は、自然的要因(天候不順や水災害など)の影響を受けやすく、地球温暖化による悪影響が特に心配されている分野である。2005年に実施された都道府県の農業関係公立試験研究機関へのアンケート調査によると、野菜栽培には温暖化による影響が各地でみられているという。例えば、温暖化が原因で収穫期が変動し、計画的な出荷や栽培のタイミング(作型・作期)の見直しを迫られている。また、露路栽培の生育障害や夏季の生育停滞による生産性低下が起こっている。また、生育期間が短縮することで生産性が低下しているとした都道府県もある。

一方で、作期の拡大、作目の拡大、冬期無加温栽培に好都合、降雪減少で施設の利用率向上、厳冬期の収穫作業の現象など、温暖化のメリットも指摘されている。それでも、将来の人間活動で現在の二酸化炭素濃度(約400ppm)が倍増すると2〜4・5の気温上昇が起こるという全球気候シミュレーションの予測結果に従えば、悪影響を緩和させるための何らかの対策(適応策)を行う必要があるとされている

ところで、東京のような大都市は、既に将来世界的に起こり得る地球温暖化を経験していることをご存じだろうか。気象庁の観測データを見てみよう。日本の農村部の平均的な気温は100年間で約1上昇したが、東京は同じ期間にその3倍も上昇している【図1】。東京と農村の気温上昇速度に大きな差があるのは、主にヒートアイランドの進行(都市化昇温)による。そして、3という気温上昇量は上述した気候シミュレーションの予測と合致するので、大都市周辺で農業にどのような影響があったかを調べることは、おのずと地球温暖化の影響評価につながるというわけだ。

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