メディア掲載  財政・社会保障制度  2023.08.15

【数字は語る】上がり続ける社会保険料は少子化対策に逆行、上限設定も検討すべきだ

週刊ダイヤモンド(2023年7月29日発行)に掲載

税・社会保障

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2023年度の社会保障給付費
(対GDP比、予算ベース)

出所:内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省
2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」(2018521日)


岸田政権の目玉の一つは「異次元の少子化対策」だ。一部先送りとなっていた財源問題に対処すべく、政府は新たな支援金制度の創設を模索している。目的は社会保険料率の上乗せによる財源の捻出だが、子育てを担う現役世代の負担がさらに増えることへの懸念が拭えない。

健康保険組合連合会によれば、2023年度の健康保険の平均保険料率は9.27%になる見込みだ。厚生年金と介護保険の保険料率を合わせた社会保険料率は30%近くに達し、租税負担も考慮した国民負担率は46.8%となる。

振り返れば、1988年度の国民負担率は今より約10%も低い37.1%だった。国民負担率が上昇したのは、租税負担よりも社会保険料率の上昇に原因がある。「2人以上の勤労者世帯」(全国平均値)で88年と17年を比較すると、所得税などの直接税の負担は微減したが、社会保険料率の負担は約84%も増加している。

今後、社会保険料率はどうなるのか。18年公表の「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」を見てみよう。

成長率が1%程度の低成長ケースでは、社会保障給付費は18年度で121.3兆円(対GDP21.5%)、25年度で約140兆円(同21.8%)、40年度で約190兆円(同24%)と予測していた。ただ、23年度の社会保障給付費(予算ベース)は134.3兆円(同23.5%)で、25年度の予測値(同21.8%)を既に1.7%ポイントも上回っている。

仮に成長率0.5%でこの勢いが継続すれば、40年度の社会保障給付費は対GDP28%に急上昇する。これは18年度の約1.3倍で、単純計算で社会保険料率も約1.3倍になる可能性がある。

かつて小泉政権期は、厚生年金の保険料率の上限を18.3%に定めた。一方、医療・介護の保険料率には切り込んでおらず、現在も上限が存在しない。子育てを担う現役世代の負担を抑制するためにも、政府は40年度・50年度までの社会保険料率の上昇幅に関する試算を早急に示した上で、全体の社会保険料率に上限を定めることも検討すべきだろう。