メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.08.31

【数字は語る】国債発行に頼るな 真の防衛力拡充のためにも 財政基盤の強化を

週刊ダイヤモンド(2022年8月20日号)に掲載

経済理論

~79.8兆円~

2020年度末から22年度末における国債残高の増加額(見込み)
出所:財務省資料


ロシアのウクライナ侵攻で国際秩序も大きく変容を迫られている。こうした中、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」で防衛費の拡充を念頭に、「新たな国家安全保障戦略等の検討を加速し、国家安全保障の最終的な担保となる防衛力を5年以内に抜本的に強化する」旨の記載を行っている。

19年の消費税率10%への引き上げで、社会保障・税一体改革は第1次ステージが終了したが、改革は未完だ。第2ステージへの議論も本格化しない状況で、防衛費増額の議論が加速中だが、この問題に我々はどう対処すればいいのか。

一つの参考は、「富国強兵」という明治維新後のスローガンではないか。「富国」という言葉があるのは、西欧列強に対抗するには、「強兵」のみでなく、基盤である経済力が重要だと認識したからである。この経済力には、政府の財政基盤も含む。課税平準化の理論との関係で、有事では大規模な国債発行をしてでも戦争遂行に用いる財源を調達する必要があり、そのためには平時こそ健全な財政基盤を構築しておかねばならないからだ。すなわち、防衛力の基盤は、豊かな経済力や健全な財政であろう。

現在は平時にもかかわらず、国債発行をしてでも防衛費を増額すべきだという主張も聞かれるが、ナンセンスな議論ではないか。防衛費を2倍にしても防衛力が2倍になるとは限らず、新たなテクノロジーの徹底的な活用も含む「全体の戦略」の方が重要だろう。危機意識を強く持つなら、社会保障改革を早々に完結し、有事に備えた財政再建を行っておくべきだ。

20年度末に946.6兆円だった国債残高は、22年度末に1026.4兆円に達する見込みだ。新型コロナ対策などで政府が大規模な国債発行を行っても、今のところ国債金利は大幅に上昇せず、財政問題は顕在化していない。

その理由は、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」で日銀が長期金利を低位に誘導しているからだが、未来永劫それができるとは限らない。真の防衛力拡充のためには財政基盤の強化と、問題が顕在化する前に財政・社会保障の改革を進めておく必要がある。