メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.05.23

【数字は語る】インフレで金利や成長率が上昇すると財政で何が起こるのか

週刊ダイヤモンド(2022年5月14日発行)に掲載

税・社会保障

~3.7兆円~

金利が1%ポイント上昇したときの令和7年度における国債費の増加分
*財務省資料から抜粋


日銀が公表した3月の国内企業物価指数の上昇率は、前年同月比9.5%であった。資源価格の高騰や円安が続くなか、いつまで日銀は金利を抑制できるのか。円安は米国の連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を引き締めに転換し、利上げを進めている影響も大きい。40年ぶりの高いインフレで価格上昇が深刻になっており、バイデン政権は中間選挙を控えているため、インフレ抑制に躍起になっている。このため、FRBは年内に7回も利上げを実施する想定を明らかにした。1回の利上げが0.25%ならば、年内7回で1.75%も金利を引き上げる可能性がある。

他方、日本でもインフレが顕在化してきた場合、日銀は金利の抑制を続けられるのか。一定の財政再建も進め、国債の利払い費増加にも耐えられる環境整備を図っておく必要性があるのではないか。日銀が金利を引き上げれば、国債の利払い費は増加するためである。

では、どの程度のインパクトか。財務省の資料では令和4年度の公債残高は1026兆円、国の当初予算(一般会計)が見込む税収は約65兆円。いま国債の加重平均金利が1%程度なので国債の利払い費は約10兆円だが、インフレで金利が1%跳ね上がれば利払い費は約10兆円増加する。

ただ、現在国債の平均償還年限は9.3年で、市中に流通する国債は約9年で償還しており、金利を1%引き上げても国債の利払い費は約9年間で徐々に増えていく。粗い試算では毎年1兆円ずつ増加する。他方、インフレになれば名目GDP成長率も上昇し、成長率が1%上昇すれば、税収は約0.65兆円増加する。

以上は大雑把な説明だが、財務省の「令和4年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算」によると、金利や成長率が1%上昇した場合、3年後(令和7年度)の国債費は3.7兆円増加する一方、税収は2.3兆円しか増加しない。

危機に陥ると、常に「想定外だった」という言い訳が聞かれるが、日本財政の問題は一定の確度で予測可能なものであり、不測の事態にも対応できる環境整備を進める必要がある。