メディア掲載 グローバルエコノミー 2022.04.12
週刊ダイヤモンド(2022年4月9日・16日合併特大号)に掲載
~約70%~
現在のガソリン価格を170円としたとき、それが第2次オイルショック時のガソリン価格(現在値換算)に占める割合
*筆者試算
ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が高騰し、日本を含む世界経済に大きな影響を及ぼし始めている。
2016年3月に109円だったガソリン1㍑当たりの小売価格(東京都区部)は、3月中旬時点で170円超で推移。1970年から現在まで、小売価格が最も高い値を付けたのはリーマンショック直前(08年8月)の182円だ。その次は第2次オイルショック時の177円(82年9~12月)。
今のガソリン価格は、第1次オイルショック時を超え、第2次オイルショック時のピーク価格に近づいているので、今回は第3次オイルショックと言うべき危機的状況と判断するのは早計だ。所得や物価水準などは格段に伸びており、単純な比較はできないからだ。
では、第1次・第2次オイルショック時と比較するため、今回の原油価格の高騰が及ぼす影響を何らかの指標を用いて概算できないか。その際、指標の一つとして利用できるのは年収だろう。例えば、国税庁「民間給与実態統計調査」によると、会社員の平均年収は、73年が146万円、82年が319万円、19年が436万円である。
また、ガソリンの小売価格は第1次オイルショック時が120円前後、第2次オイルショック時がピーク時で177円だったので、会社員の平均年収を利用して、第1次・第2次オイルショック時のガソリン価格を現在値に引き戻すと、それぞれ約358円と約242円となる。現在のガソリン価格を170円とすると、それは第1次の約47%、第2次の約70%に相当する。200円のときは第1次の約56%、第2次の約83%に相当することが分かる。なお、現在、政府は石油元売り会社に補助金を支給しており、これが存在しない場合のガソリン価格は200円を超えている可能性がある。
以上はやや粗い試算であり、現在は省エネ対策も進んでいるため、日本経済全体がそれなりの耐性を持っていることも事実だろう。だが、今回の原油価格の高騰が長期化する場合、企業行動や家計を含め、日本経済に及ぼす影響についても注意が必要であることが、この試算から読み取れるはずだ。