要旨
本稿は、冷戦後の中国の対外戦略とも見なされてきた 「韜光養晦」 が同国内で強調されるようになった背景を探ることを目的とする。本稿において、「韜光養晦」は、1990年代半ば(特に1996年)から外交部や鄭必堅が人民解放軍のような国内の対外強硬派を牽制するために強調するようになったスローガンであると論じる。そして、最高指導部も含めた中国の指導者による「韜光養晦」への言及が政治的なリスクを伴うとも述べる。また、 「韜光養晦」は、冷戦後の中国外交全体を規定してきた正式な対外戦略や方針には当たらないと考えられる。
※本稿は、山﨑周「中国外交における『韜光養晦』の再検討 : 1996年から用いられるようになった国内の対外強硬派牽制のための言説」『中国研究月報』第72巻第10号 (2018年)、1-16頁に加筆修正を加え、英語版にしたものです。