メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.03.22

【数字は語る】なぜ2022年度の税収見積もりが過去最高になったのか

週刊ダイヤモンド(2022年3月12日発行)に掲載

~2020年度~

国の一般会計における消費税収が所得税収を初めて超えた年度 出所:財務省


新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種が進んでいるが、終息は見えない。それにもかかわらず、2022年度当初予算(国の一般会計)の税収見積もりが過去最高の65.2兆円となった。21年度も、当初予算の税収見積もり(57.4兆円)と比較して、法人税を中心に増収の見込みで、63.8兆円を超える可能性が出てきた。

増収の中心が法人税なのは事実だが、なぜコロナ禍にもかかわらず、22年度の税収見積もりが過去最高となったのか。このヒントは、1990年度の税収との比較で把握できる。17年度以前では、過去最高の税収だったのはバブル崩壊直前の90年度である。

このときの税収合計は60.1兆円であり、所得税収が26兆円(税収全体の43%)、法人税収が18.4兆円(同30%)、消費税収が4.6兆円(同7%)などだった。その後、所得税や法人税の税収が低下する一方、消費税の税収が増加し、22年度における税収見積もりは65.2兆円となっている。

65.2兆円の内訳は、所得税収が20.4兆円(税収全体の31%)、法人税収が13.3兆円(同20%)だが、消費税収は21.6兆円(同33%)で22年度の最大の税目は消費税だ。つまり、90年度から22年度までに所得税収は5.6兆円減少、法人税収は5.1兆円減少した一方、消費税収は17兆円も増加した。また、消費税収が法人税収を初めて超えたのは02年度だが、消費税収が所得税収を初めて超えたのは最近の20年度である。

なお、現在の消費税率は10%で、その中には地方消費税も含まれるが、89年に3%で導入された消費税は100%が国税であった。もし消費税率が90年度と同じ3%であったなら、消費税収は8.4兆円と考えられる。このため、22年度の消費税収(21.6兆円)からこの8.4兆円を引いた13.2兆円は、消費税率を3%から10%に引き上げたことによって得た税収増であることになる。

つまり、もし消費税率が3%であったなら22年度の税収見積もりは52兆円(=65.2兆円-13.2兆円)で、その見積りが過去最高とはならなかったことを意味する。