メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.03.11

【数字は語る】コロナ禍であっても視野に入った2025年度PB黒字化

週刊ダイヤモンド(2022年2月12日発行)に掲載

経済政策

~8兆円~

2022年度・国の当初予算における基礎的財政収支(PB)赤字 
*新型コロナウイルス感染症対策予備費を除く 出所:内閣府


財政再建のため、政府は国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)を2025年度までに黒字化する目標を掲げているが、コロナ禍で目標が達成可能か疑問が出てきている。

このため、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(216月策定)では、「骨太方針2018で掲げた財政健全化目標を堅持する。ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、本年度内に、感染症の経済財政への影響の検証を行い、その検証結果を踏まえ、目標年度を再確認する」という文言が盛り込まれた。

この検証を行うため、自民党は22年早々にPB黒字化の目標年度に関する議論を行う予定だ。

だが結論から言うと、25年度のPB黒字化目標を見直す必要はない。その一つの理由は、22年度予算と内閣府の中長期試算から読み取れる。まず、22年度における国の当初予算のPB赤字は13兆円だが、これはコロナ対策予備費5兆円が含まれており、本当のPB赤字は8兆円とみるのが正しい。

他方、25年度のPB黒字化目標の議論の土台となっているのは、内閣府の中長期試算だが、その217月版では国の22年度PB赤字は約11兆円になっており、足元は実のところ3兆円も改善している。中長期試算の高成長ケース(成長実現ケース)では、25年度に国・地方のPB赤字が29兆円になり、このケースでもPB目標の達成が難しいと思われていたが、数年でコロナが終息し、今後も改善が継続すれば、PB黒字化も不可能ではない状況になりつつある。

これを裏付けるように、内閣府が114日に公表した最新版の中長期試算では、成長実現ケースでPB黒字化が26年度に達成できるとの見通しが出てきた。また、低成長ケースでも、25年度PB赤字が4兆円台に改善しており、歳出削減などの財政・社会保障改革をもう一段進めれば、このケースでも25年度から30年度の間でPB黒字化達成の可能性が出てきている。コロナ禍で、財政健全化の先送り議論が出てくるのも分かるが、現在の目標でも達成可能な領域にいることも念頭に置きながら、慎重な議論が望まれる。