メディア掲載  グローバルエコノミー  2022.01.13

日本からコメが消える

日本経済新聞夕刊【十字路】2021年12月2日に掲載

農業・ゲノム

40年以上も農業問題にかかわってきて、どうしても廃止しなければならないと考えるのが、コメの減反政策である。しかし、悔しいことに、“減反廃止”というフェイクニュースで、その機会は遠のいてしまった。

1970年に一時の過剰対策として導入した政策が50年以上も続いている。そのコアは、生産者に補助金を与えて供給を減少させ、米価を高く維持することだ。この補助金に加え、政府は生産者に生産目標を示してきた。2013年当時の安倍政権は、生産目標を廃止したことを減反廃止と打ち上げたが、コアである補助金を拡充強化した。それどころか、農林水産省は適正生産量という名前で事実上の生産目標を示し、ほぼ従来通りの体制で減反が実施されている。

来年産の適正生産量は675万トンとされた。1967年の1426万トンの半分以下、平成のコメ騒動と言われた1993年の大凶作783万トンを下回る。毎年国内の消費が減っているので、米価維持のため、生産を減少させてきたからだ。

通常、医療のように、財政負担をすれば国民は安く財やサービスの提供を受ける。減反は補助金という財政(納税者)負担で、米価を上げて消費者負担を高める異常な政策だ。減反を廃止すると供給は増え米価が下がり、消費者は利益を受ける。ただし、輸出が行われるので、米価は国際価格以下には下がらない。主業農家が影響を受けるのであれば、欧州連合(EU)のように直接支払いをすればよい。今の減反補助金よりも大幅に財政負担は縮小する。減反で抑制されてきた単収が向上すると、輸出を含め1500万トン以上の生産も可能だ。

このまま農水省に任せておくと、日本から米作はなくなってしまう。