メディア掲載  グローバルエコノミー  2021.11.30

コメ先物取引 認めぬ理由を問う

日本経済新聞夕刊【十字路】2021年8月5日に掲載

米先物を本上場できるか今回が最後のチャンスとも

世界で最初の先物市場は、1730年に開設された大坂堂島米市場だ。この自由な市場は、統制経済に移行した1939年に閉鎖された。

米を統制していた食糧管理法が1995年廃止され、2005年商品取引所が米の先物市場を農水省に申請した。しかし、JA農協の意向を受けた自民党は認めず、民主党政権の2011年やっと試験上場が認可された。自民党政権下で4回も期限が到来したが、取引低迷を理由に本上場への移行が見送られ続けている。今回本上場できるかどうかが最後のチャンスとなる。

契約時の価格が保証される先物取引は、生産者にとって価格変動へのリスクを回避し、経営を安定させるための手段だ。生産者が先物を利用すれば、政府も財政負担をして米価を維持する必要はなくなる。納税者も利益を受ける。

JAは米を投機の対象としてはならないと主張する。しかし、現在と比較にならないほど米が重要だった時代に、200年も米の先物市場は日本経済の中心だった。JAの主張を認めるなら、今では米より重要な原油や通貨の先物取引は廃止すべきだ。日本の決められない政治をしり目に、2年前に開設された中国大連の米先物市場は、日本の50倍近い取引量に拡大している。

先物価格が上がると農家は利益を受けるが、現物取引の価格で手数料収入が決定されるJAは利益を受けない。JAは主食である米を減産して米価を維持してきた。JAが先物取引に反対するのは、現物取引である米の価格を自由に操作できなくなるからだ。

農水省は本上場が認められない理由を取引量が少ないからだと言うが、米の流通量の7割を握るJAがボイコットしている以上、永遠に認められない。生産者も納税者も被害者だ。