2018年における医療機器の市場規模
*「薬事工業生産動態統計」データから筆者推計
厳しい財政事情の中、社会保障給付費(約120兆円)のうち約40兆円を占める医療費への改革圧力が高まり、経済財政諮問会議や財務省は、CTやMRI等の高額医療機器の配置適正化を求めている。だが、国民医療費に占める医療機器のコストに関する正確なデータは存在しない。そこで、「薬事工業生産動態統計」データ等を用いて筆者が推計したところ、市場規模は2001年の1.96兆円から18年で2.9兆円にまで膨らみ、この間、年率平均2.3%で成長している可能性が分かった。
では、ミクロ分析から何が分かるか。一般的に医療機器の市場規模や平均成長率で医療機器コストを把握する場合、次の四つが考えられる。①医療機器の市場規模が大きく・平均成長率も高い、②医療機器の市場規模が大きく・平均成長率が低い、③医療機器の市場規模が小さく・平均成長率が高い、④医療機器の市場規模が小さく・平均成長率も低い、だ。このうち財政的に最も問題なのは①で、最も問題がないのは④だ。内閣府の中長期試算では、30年度ごろまでの名目GDP成長率がおおむね1%。このため、「薬事工業生産動態統計」データを用いて、市場規模が50億円以上かそれ未満か、また、平均成長率が1%以上かそれ未満かで、医療機器(324製品)を分類すると、①は72製品、②は31製品、③は150製品、④は71製品が存在する。
冒頭に挙げたMRIの市場規模は349億円かつ平均成長率は3.6%で①に属すが、CTは同449億円かつ同▲1.1%で②に属する。しかも①では、1000億円以上の市場規模の医療機器は「滅菌済み血管用チューブ及びカテーテル」「その他のコンタクトレンズ」等、500億円以上1000億円未満の市場規模は「他に分類されない処置用機器」「歯科用金銀パラジウム合金」等で、CTやMRI以外にも注視するべき医療機器がある。
一方で、医療機器の発展が新たな市場を創造し、経済成長や雇用、税収にも貢献する可能性があり、医療機器と財政との調和にも再検討が必要な時期が到来している。