<ポイント>
I. 基本的認識
- 長期にわたる経済社会活動の制限により、中小企業の債務の増大、自殺者増など大きな社会的コストが発生。国民・企業の対応も限界に。ウイズ・コロナを前提に、経済社会活動を回し、国民が将来展望を持てる「出口戦略」が必要。
II. 新たな「出口戦略」の策定と断行
➀ 全人口ワクチン接種率8割以上の実現
- 接種対象人口(12歳以上)の9割(=全人口の8割)の接種を目指す。
- 法律上、接種は努力義務であることを周知徹底し、任意というより「できる限り接種すること」を政府から求めるべき。職域や大学での接種をさらに推進するとともに、若者・外国人など組織に属さない人への接種展開策を企画・実行する。利用可能なワクチンの確保、承認を最大限進めるべき。
- ブースター接種、異種ワクチン接種への道も拓くべき。
- 中学校、高校での大規模接種も実施すべき。12歳未満の子供を感染リスクから守るため、ワクチン接種を可能とするよう安全性を確認すべき。
- ワクチン接種証明または検査陰性証明の提示を出勤や大学登校の要件とすること(オンライン出勤等代替手段も用意)が合法であることを明確化。
- イベント、スポーツ大会、学校の課外活動、国内出張・旅行などの正常化をワクチン接種または検査陰性を要件にして推進。
- 我が国への入国についてワクチン接種を前提に水際措置の緩和。
➁ 医療提供体制の増強
- 入院トリアージ、病院別役割分担。ゾーニング工事など対応能力強化。
- 公共施設等を活用した臨時医療施設の増設。報酬増などにより看護師を動員。
- コロナ関連補助金を受けた医療機関の実態の「見える化」。調査と公表。会計検査での精査方針を予告。
- 対応できるのに協力しない医療機関には知事が法律を活用して指導。個別医療機関と関係が深い省庁から個別指導。
- 下り患者の入院調整を、病院・介護施設間で自治体関与により強化
- 病床稼働状況を即時に把握するためG-MISへの入力に診療報酬を加点。
- 緊急時における医療資源確保のための法的枠組みを強化すべき。
➂ 治療薬の早期開発・普及
- 治療薬を病院以外でも利用可能にするとともに、承認を特例的に加速。
- 治療薬の普及に合わせ、感染症法上の分類の見直しを検討すべき。
④ 感染拡大の早期防止のための検査の戦略的活用
- 医療機関、高齢者施設等での職員の定期的PCR検査を継続。小学校、幼稚園、保育所の教職員の定期的PCR検査を実施すべき。
- 抗原簡易検査キットは安価で迅速な検査が可能であるため、戦略的に活用すべき(医療施設、高齢者施設等、教育機関に無償配布し、早期発見を目指す。一般企業や家庭での利用が可能となったことを周知徹底し、強力に利用を促進。)
⑤ 基本的予防活動の継続(手洗い・うがい・マスク着用、3密回避、体調不良時の外出自粛など)
III. ウイズ・コロナに対応した経済社会システムの構築
➀ 当面はコロナとの共存を前提とした経済社会となる(テレワークやオンライン会議、オンライン授業、オンライン医療の一般化; 団体旅行から個人旅行へのシフト; 会食の小規模化; 海外からのインバウンドの低迷)。
➁ ウイズ・コロナに対応していくためには、ビジネス・モデルの転換や働き方見直しが不可避。このため、債務リストラクチャリングと人材の再育成・移動・再活用が必要。特に新型コロナ感染長期化のために債務が積み重なった対人サービス分野の中小企業・小規模事業者などに対して、次のような政策のスピード感をもった実現が必要。
- 「中小企業版私的整理ガイドライン」の策定。私的整理の際の経営者責任の緩和等も勘案されるべき。また、清算価値保証やスポンサーへの譲渡価格の算定に当たっての透明性、衡平性の確保も肝要。
- 小規模企業の再生・退出円滑化のための効率的なメカニズムの構築が必要。債務調整の際、金融機関側の無税償却の手続き・要件の改善が望ましい。
- 諸外国の例に倣い、金融債権者の多数決をもとに債務削減する新たな法的枠組み(「多数決による金融債権整理制度」)の創設が望まれる。
- 個別案件にとどまらず、地方自治体や地域金融機関も一体となって地域の再生に取り組んで行くべき。その際、信用保証協会の積極的関与が必須であり、飲食・宿泊を中心とした事業構造改革の専門家を地域に結集することも重要。
政策提言(全文)
→ 政策提言(全文) (PDF:984KB)
バランスシート問題研究会メンバー
→ バランスシート問題研究会メンバー (PDF:193KB)