日本の国防費に対する中国の防衛費の規模
※スウェーデン・ストックホルム国際平和研究所のデータを元に筆者試算
新型コロナウイルスの感染拡大は世界的流行となったが、日本を含む世界に対し、有事に向けた「平時の備え」の重要性を再認識させた。
8月15日は終戦記念日だが、有事に向けた「平時の備え」という意味では、防衛関係の備えも重要ではないか。
例えば、米中の対立が深まる中、台湾有事に備えた日本の戦略が問われている。特に重要なのは「財政的な余力」だ。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所の報告によると、2020年における世界の軍事費上位10カ国のうち日本の防衛費は9位の491億㌦だが、1位の米国は7780億㌦、2位の中国は2520億㌦、3位のインドは729億㌦、4位のロシアは617億㌦である。中国の人口は日本の10倍だが、防衛費は日本の約5倍もあり、何らかの有事が起こり日本の防衛費が中国並みに膨らむと、25兆円になることを意味する。
いまの防衛費は約5兆円で国の一般会計予算(約100兆円)に占める割合は約5%だが、戦前(1940年度)は50.3%であった。このため、もし有事となれば、一般会計予算のうち50兆円が防衛費になっても不思議ではない。
なお、いまの社会保障関係費が一般会計予算に占める割合は30%超にも達しているが40年度では1.6%にすぎず、戦前に巨額の防衛費が支出可能であった一つの要因は、幸か不幸か、社会保障制度がまだ整っておらず、財政が身軽であったためである。
しかし現代では、社会保障制度(例:年金、医療、介護、生活保護)は国が担う重要な機能の一部であり、それを大幅に縮小するわけにはいかない。今回のコロナ危機において、20年度に3回もの補正予算を組み、国の一般会計の歳出を当初予算の約100兆円から約175兆円まで拡大できたのは、まだ財政に余力があったためだ。だが、首都直下地震や台湾周辺の紛争なども想定でき、有事はコロナ危機のみとは限らない。有事に大胆な財政出動が可能となるよう、「平時の備え」として、コロナが収束したときこそ、財政再建を進める必要があろう。