メディア掲載  財政・社会保障制度  2021.08.23

【数字は語る】2040年に向けた社会保障の財源をどうするか

週刊ダイヤモンド(2021年7月17日発行)に掲載

~2.1兆円~ 

2010年度から20年度の間の社会保障給付費における年間平均の伸び ※厚生労働省のデータを参考に筆者試算


先般、国勢調査(2020年)の人口速報値が公表された。日本の総人口は1億2622万人で、15年時点の調査と比較し約86万人の減少となったが、本格的な人口減少はこれからだ。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(17年)によると、20年で7408万人であった生産年齢人口(1564歳)は、40年で5978万人に減少するとされている。

他方、20年で1872万人だった75歳以上の後期高齢者は、40年では2239万人と見込まれている。その影響が最も表れるのは社会保障給付費の伸びだろう。

今後の伸びの正確な予測は難しいが、過去の給付費が参考になる。まず、2000年度から10年度の間に社会保障給付費は78.4兆円から105.4兆円に膨張し、約10年間で27兆円も増加している。年間平均2.7兆円の膨張だ。

また、10年度から20年度の間に給付費は105.4兆円から126.8兆円に伸びており約10年間で21.4兆円増加、年間平均2.1兆円のスピードで膨張している。

10年代の伸びは、2000年代と比較して若干緩やかになったが、年間平均2兆円超のスピードで伸びたことに変わりはない。心配されるのは、団塊の世代が全て75歳以上となる25年度以降の伸びだ。

この関係で重要となるのは、今後の財政再建の方向性だ。政府が21年6月18日に「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太方針)を閣議決定したが、ここでは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を検証して目標年度を再確認すると記載しているものの、従来政府が掲げてきた財政健全化目標(25年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支〈PB〉の黒字化)を堅持するとしている。

PB黒字化を目指すには、少なくとも、社会保障給付費の伸びを抑制するか、その伸びに見合った財源を確保、あるいは、両方を実行することが求められる。社会保障と税の一体改革は終了し、1910月に消費税率は10%に引き上げられたが、財源確保という視点では新たな税制改革が必要となるはずであり、いまからでも議論を深めておくことが望まれる。