花粉症は史上最大の公害だ。発生源のスギ林は人工林である。ふつうの公害であれば、これだけ被害があれば、事業の継続など許されない。国は不作為を止め、大規模な伐採をすべきだ。
2021年も、大いに花粉に悩まされそうだ(ウェザーニュース記事 関東は花粉症の方の半数近くがすでに感じる 花粉対策は待ったなし)。
日本人の3人に1人が患者ともいわれる花粉症は、今や「国民病」である。被害者数は、過去のいかなる大気汚染よりも桁違いに多く、経済的損失も甚大だ。ある試算では、3ヶ月間外出を控えたことによる家計消費の落ち込みと医療費や労働効率の低下による損失を合わせて1兆円弱に達するという。
日本全国で花粉症が蔓延した原因は、1950年以降の「拡大造林」という国策である。1970 年以降植林されたスギ林から今も大量の花粉が飛散し続けている。将来の健康と国力の維持のために早急にすべきことは、政府主導でスギ人工林の伐採を進めることだ。
それにもかかわらず、当の林野庁は自らの責任を否定し、環境省も花粉は大気汚染物質ではないので規制対象にならないとしている。
スギ花粉はアレルゲンである。上の図で示すように、花粉を出す樹齢のスギ林面積や花粉数とともに花粉症患者は確実に増えている。
通常の公害問題ならば、これだけはっきりした因果関係があれば、排煙処理設備の義務付けや操業の停止など、政府が有無を言わさず厳しい排出規制を行うのが常識である。しかし、花粉に対しては今もこの常識が適用されていない。これは、「行政の不作為」である。
なにも日本全国のスギを全て伐採する必要はない。社会に甚大な被害をもたらしているスギ人工林を重点的に伐採すればいいことだ。発生源がどこかは花粉予報で分かっている。史上最大の公害に対して、のんびり予報をしている場合ではなかろう。
スギ人工林の持つ二酸化炭素固定や水源涵養・防災など多面的な機能も、成長の早い広葉樹を植林すれば代替できる。
政府は、花粉が少ない新品種を開発してスギ花粉の撲滅をめざしている(日本経済新聞記事 花粉症対策、林業不振が壁 スギ新品種植え替え進まず)。
だが、この方法では100年経っても花粉症はなくならない。生ぬるすぎる。
被害者はもっと声を上げるべきだ。政府が花粉症対策を抜本的に見直さない限り、次世代もさらに次の世代も、花粉症に苦しむことになる。毎年のように甚大な被害が起きている現状を見過ごしてはいけない。
そして政府は、責任を持って発生源であるスギの人工林を速やかに伐採すべきだ。
なお、更に詳しくは拙稿(花粉には強力な「公害対策」が必要だ)を参照されたい。