政策提言(全文)→ 政策提言(全文) (PDF:1119KB)
メンバーリスト → メンバーリスト (PDF:248KB)
提言用図表 → 提言用図表(PDF:883KB)
記者会見資料(小林慶一郎氏) → 記者会見資料(小林慶一郎氏)(PDF:478KB)
記者会見資料(森山美知子氏) → 記者会見資料(森山美知子氏)(PDF:1492KB)
日本看護協会・離職率(森山美知子氏)→ 日本看護協会・離職率(森山美知子氏)(PDF:1159KB)
記者会見資料(草場鉄周氏) → 記者会見資料(草場鉄周氏)(PDF:416KB)
<ポイント>
Ⅰ.第4波に備えるために
1.感染拡大防止
- 時短だけでは感染水準の更なる引き下げには限界。検査+追跡+隔離の強化が不可欠。
- 高齢者施設等のスタッフに対する定期的検査、無症状者への戦略的検査、民間検査機関との実効性ある連携確立を推進すべき。
- 外部委託、臨時雇用、IT活用、医師会との連携を徹底し、保健所の体制強化を首長が強力に推進すべき。追跡調査を補完するため、バグ修復を前提にCOCOAの普及拡大を再強化すべき。
2.医療提供体制強化
- 重症者対応能力強化のため、大規模病院の体制や重症者の受け入れ状況等を「見える化」。ゾーニング工事も急ぎ実行。
- 医療機関等の役割分担を徹底。重症者対応の中心となる病院、中等症患者等を受け入れる病院、軽快者を受け入れる病院・介護施設、無症状者・軽症者を受け入れる宿泊療養施設の間で分担し、医療資源を最大化。
- 改正感染症法や予算措置を最大限に活用し、医療提供体制の強化に向けて知事が強い指導力を発揮すべき。
Ⅱ.コロナ危機で明らかになった我が国医療提供体制の課題
1.欧米諸国よりも感染レベルは一桁以上少ないのに日本ではなぜ医療逼迫が起きたのか?
2.病床やICUの総数が低い訳ではないのにコロナ向けに配分される病床等が不足。ハード以上にICU等の取り扱い可能な人材が不足。
3.病院数・病床数が多いため、医師・看護師などが薄く分散。人手がかかるコロナ患者を受け入れるとすぐにキャパオーバーに。
4.病院間の役割分担や連携は進まず。コロナ対応を行わない病院は少なくなく、診療所も中心的な役割は果たさず。
5.看護師資格を有する者は多いのに看護師不足が顕著。
6.救急患者の受け入れが難しく、たらい回しの事態も頻発。
Ⅲ.緊急時対応の強化
1.当面の対応
- 保健所のボトルネックとなっている保健師については、看護師による対応を最大限拡大。業務を徹底的に精査し、保健師、看護師、職員以外でも対応可能な業務を外部委託、臨時雇用で対応。
- 災害対応に準じた医療機関・スタッフの協力体制を速やかに構築。緊急時には諸外国同様、医学生・看護学生の参画も確保。
- 緊急時に的確な医療が提供できるよう平時から個人の医療情報を電子化・集約化。厚生労働省、自治体、医療機関任せにせず、デジタル庁の中心的役割に期待。
2.中長期的な対応
- 諸外国の例を参考にしつつ緊急時に必要な医療資源を動員できる制度的仕組みを構築すべき。
- 知事と保健所設置首長との統一的取り組みを確保するため、緊急時には権限を知事に一元化。
- 地域の救急医療を集約し、緊急時に対応できる大規模・強力な救急医療体制を構築。救急車搬送中の容態悪化を回避するため、救急隊員や看護師が救急車内で措置できる範囲を大幅拡大。
- 非常時に対応できるよう緊急時派遣登録看護師制度を構築する。非就業を含む看護師に対する研修と即時連絡体制を推進。
Ⅳ.平時における医療提供体制の構造改革
1.緊急時対応のためには平時から強靭な医療提供体制を構築しておくべき。同時に、増大する高齢者の医療ニーズへの対応、持続可能性のある効率向上、地方における人口減少への対応、医療の質向上なども同時に実現する必要。
2.短期的改革(2023年度次期地域医療計画の策定まで)
- 医療機関の役割分担・機能分化を推進。このため、医療のデジタル化を加速し、患者情報の共有インフラを構築。デジタル庁の役割大。
- 役割分担推進のため、診療報酬面でも差別化し、メリハリある自己負担も設定。
- コロナ対応、オンライン診療等を包括的に提供できる「かかりつけ総合医」のリストを提示し、利用希望者は事前登録。患者情報の事前管理により安全・迅速な医療サービスを提供。
- 保健所中心の公衆衛生と診療所中心の地域医療との峻別を乗り越え、予防医療、健康増進活動をかかりつけ総合医等に移行しつつ、感染拡大時におけるかかりつけ総合医等によるサポート役割を強化。
3.中期的構造改革(2024~2029年度:次期地域医療計画期間中)
- 第8次地域医療計画においては、感染症対応、高度医療機能提供のための体制強化を重点に据えつつ、役割分担・機能特化の取り組みを深化。特に救急医療体制の集約化・大規模化・強化は必須。
- 「病院完結型システム」から、地域の医療・介護機関が総体として機能を提供する「地域完結型システム」に移行。このために必要となる統合推進の観点から、平成の市町村大合併にならった期限付きの強力なインセンティブを導入すべき。診療報酬面での手当に加え、地域医療連携推進法人制度の強化、施設統合後押しのための財政的支援など総合的な対策を導入する必要。
- 高度医療の中核病院への集中により、質の向上、現場疲弊の緩和、緊急時対応力の強化を図る。他方、中小病院は周辺診療所とグループの形で連携しながら、病床提供の担い手から、地域在宅医療の結節点としての役割に転換。
- 診療報酬も、1日定額や出来高払いベースから、1入院当たりの包括払いを原則とする診療報酬制度に転換。これにより病床数や入院日数に依存する病院経営から脱却し、医療機能提供に重点化。
- 住民の健康の総合的・提供的サポートの観点から、登録制度を基盤とするプライマリ・ケアのシステムを導入。感染拡大の最前線を担うとともに、地域包括ケアの担い手に。グループ化による24時間365日の在宅医療提供、定額払い制度を基盤とする予防・健康管理の強化、質確保のための研修・資格制度も推進。同時に在宅医療の効率的な推進のためには、乱立による体制分散ではなく、面的な集約が重要。
- 救急救命医等のエッセンシャル医療スタッフの不足を踏まえ、人材育成について、長期目標・財政支援を導入し、人材偏在を克服していくべき。看護師については、機能を多層化し、高度な実践を担う看護師については職責を大きく拡大し、やりがいと処遇を向上すべき。また登録制導入により、危機時における対応体制を備えておくべき。
- コロナ危機で逼迫が顕著な保健所の体制を平時から大規模に維持することは非現実的。このため、保健所と医療の峻別を乗り越え、保健所機能の相当部分についてはプライマリ・ケアの仕組みで担保するなど、平時からの保健所と医師会との連携が重要。