その他  グローバルエコノミー  2021.04.05

【政策提言】コロナ危機下のバランスシート問題研究会提言2- 過剰債務問題の解決と人材の育成及び大胆な再配置 -

経済政策 税・社会保障 新型コロナウイルス

グローバル化、デジタル革命、カーボン・ニュートラルなど、環境激変のため、多くの産業においてビジネスモデルのトランスフォーメーションが必須となっている。トランスフォーメーションを進めるために、下記の課題解決が必要。

1.企業の過剰債務問題の解決

コロナの資金繰り支援もあり企業債務は50兆円増加し、多くの企業で過剰債務の問題が発生。緊急融資が実質無利子となる3年間を目途に問題解決すべき。

・次のような対応が必要:①中小企業版私的整理ガイドラインを制定、経営者個人保証ガイドラインを改訂。②制度融資の債権放棄を可能にする条例の整備。③英仏韓など諸外国と同様、金融債権のみを対象にした多数決による債務リストラクチャリング制度の構築。

・規模が小さく数も多い小規模企業の再生・退出円滑化のための効率的な支援体制やメカニズムの構築が必要。

・地域金融機関は、自身によるエクイティの提供と、他の出し手からのエクイティの誘導の役割が期待される。①地域金融機関が投資専門子会社を作って自ら出資することに加え、買収や出資の斡旋・仲介の機能を持つことも必要。②こうした取り組みを促すため、出資や買収の斡旋・仲介を行えるようにする業法の改正等が必要。

2.人材の再訓練と大胆な再配置

・エクイティの提供とともに、支援対象企業への経営者人材の橋渡し機能も、地域金融機関に期待(大都市部からの人材の移転の橋渡し機能)。

・非正規労働の潜在的失業者のうち、7割~8割の人は公的支援の存在や申請方法について知らない。公的支援策について勤め先企業やSNSを通じた発信を充実させるべき。また、(内部告発的要素があり躊躇される)非正規雇用者向けの休業手当の受給申請方法などを改善すべき。

・低所得世帯にとって家賃負担は大きく、日本は住居に対する公的支援が弱い。他方、日本は空き家も多いので、失業者・休業者等の住居確保のための支援策強化は実施可能。20213月に政府決定した「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策」において低所得世帯への住宅支援などの対策が打ち出された。これらを継続・拡充するべき。

・サービス業全体で600万人程度の労働力が不足するとの試算。コロナ危機による失業者・休業者増の問題(300万人との推計あり)は、ポストコロナの深刻な人手不足を前提とすれば解決可能。

・日本の雇用セーフティネットは基本構造の転換が必要。これまでは正規雇用・製造業・男性中心で、企業による雇用維持を求めるもの。今後は、非正規雇用・サービス業・女性や高齢者も包含し、個別企業による雇用維持に依存せず、職種転換を前提として産業全体による雇用創出を目指すべき。

・新たな雇用分野に向けて人材を再訓練し、効果的なマッチングを実現するべき。そのために公的機関中心から民間を活用した再訓練、マッチングの在り方へ転換を進めるべき。在籍出向制度の活用による転職支援や、兼業の許容など。ドイツなど欧州諸国では、能力評価制度も活用して、職業相談、職業訓練、職業紹介が一気通貫のメニューとして提供されていることも参考にすべき。

・介護は人手不足だが、事業者に支払われる介護報酬は継続的に引き上げられているものの、現場スタッフの待遇が悪く人材が集まらない。例えば、デジタル庁設置に伴い制定される「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」における公的給付を拡大し、平時から介護士などへの直接の公的給付を可能にし、事業者を通さずに国・自治体から現場スタッフに経済支援を行うことも検討すべき。

・様々な雇用施策が用意されても、利用に動かない受動的な層が一定数いる。マイナンバーから得られる所得情報や企業から提出される社会保障・雇用保険関連情報をもとに支援対象者を洗い出すシステムを導入するなど、プッシュ型のきめ細かいセーフティネットを整備するべき。

3. これまでの経済対策で導入された政策の運用に関する課題

・経営改革をしてもなお事業からポジティブなキャッシュフローを生み出さない企業は、破産手続きや会社整理手続きなどで早めの退出と再出発を促すべき。このような企業は公的資金による資本注入の対象にはならない。

・経営改革後の事業キャッシュフローが正ではあるが債務を返済するには足りない場合、すなわち実質過剰債務の場合に、金融機関などによる債務圧縮についてのコミットメントがない限り、政策的な資本注入をすべきではない。過剰債務のままで中途半端なエクイティ性資金を投入しても企業再生できない。

・債務削減と資本注入を並行的に行う場合には、第三者への売却を出口とすべき。

・資本注入の条件として、事業構造改革・再編計画の策定を義務付け、実効性のあるモニタリング体制も作るべき。



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