メディア掲載  財政・社会保障制度  2021.03.30

【数字は語る】コロナ危機脱却の鍵を握るワクチン接種  経済正常化の原動力になるか

週刊ダイヤモンド(2021年3月20日発行)に掲載

経済政策 新型コロナウイルス

22兆円 2019年と比較した場合における20年の名目GDPの落ち込み  

内閣府公表データより筆者試算

先般、内閣府は四半期別のGDP速報(20201012月期・2次速報)を公表した。この速報から、20年の年率換算の名目GDPは539.1兆円。19年の名目GDPが561.3兆円であったから、20年の名目GDPは前年比で約22兆円の落ち込みと予想される。これは想定以上の回復スピードである。20年夏頃の速報では、4~6月期の年率換算の名目GDPは510.6兆円で、19年と比較して、落ち込みは約50兆円もあったからだ。前述の2次速報が正しい場合、マクロ的に日本経済は想定以上のスピードで回復している姿を示す。

すなわち、今回のコロナ危機における経済ショックの底が20年4~6月期であったことは確実であり、マクロ的に今後は19年のGDP水準を取り戻す方向に進むことは間違いない。

このような中、今年2月17日からワクチン接種が開始された。これはワクチンという新たな武器を我々が手にしたことを意味する。

では、コロナ禍の景気回復をより確かなものにするため、ワクチン接種による集団免疫獲得の達成を一つの目標にすると、接種を1日に何万件のペースで行う必要があるのか。筆者の暫定的な試算では、ワクチン接種の感染予防効果が40%、集団免疫閾値が40%、ワクチン効果の継続期間を8カ月とすると、ワクチン接種を1日に50万件以上のペースで行う必要性を示唆する。ただ、この試算はワクチン接種が1回で効果を持つ場合であり、2回の接種が必要な場合、ワクチン接種を1日に100万件以上のペースで行う必要がある。

もっとも試算は暫定的なもので、前提が変われば結果も変化する。しかも、ワクチン接種による副反応には一定の不確実性が存在することも忘れてはいけない。政府はワクチン接種の効果や副反応などの情報伝達をしっかり行い、個人の選択を尊重しながら接種を進める視点も重要となる。 

いずれにせよ、ワクチン接種が拡大していけば、制約されていた経済社会活動の幅が広がることは明らかであり、ワクチンがゲームチェンジャーとしての役割を期待されるのは確かであろう。