メディア掲載  グローバルエコノミー  2021.03.15

農協の准組合員制度、見直しを

日本経済新聞夕刊【十字路】2021年3月10日に掲載

農業・ゲノム

2月16日、私は衆院予算委員会に参考人として呼ばれ、株式会社の農地取得、減反強化とともに、農協の准組合員制度について意見を述べた。准組合員とは正組合員である農業者と異なり、農協の意思決定には関与できないが、その事業は利用できるという組合員である。今年、利用規制が見直される。

この制度は生協や中小企業の組合には存在しない。戦後農協の組合員を農民としたために、農協の前身では組合員だった地主の扱いが問題となった。当時の農林省は員外利用という案を出し、GHQは准組合員という案を出し、結局両方とも認めてしまった。

農協には、農地の転用利益、兼業や年金収入により100兆円をこえる預金残高が集まっている。しかし農業は衰退しているのでほとんど融資できない。このため、農協は農家以外の住民を積極的に准組合員に勧誘して、住宅ローンやJA共済などを提供してきた。農家戸数は175万戸、農業をやめた人も含め正組合員数は425万、准組合員は624万に上る。

しかし、利用はできるが管理できないという准組合員は、「利用者が所有し、管理し、利益を受ける」という協同組合の基本原則から逸脱する。職能組合という農協の性格からもなじまない。協同組合には独禁法の適用除外が認められているが、准組合員を持つ農協は要件を満たさないので、特例的に農協法で救済している。

JA農協の農業関連事業は赤字で信用事業などの黒字で補填している。いっそのこと、JA農協は今の准組合員も正組合員とする地域住民協同組合として存続させて、農業関連事業は農家が自主的につくる新たな農協に任せてはどうだろうか。JAとしても特例なしで独禁法の適用除外も受けられ、農業関連の赤字補填もしなくて済む。