レポート  グローバルエコノミー  2021.02.05

【政策提言】林業政策の改革(その1)

林業

要旨

最近、林業について大きな政策変更が行われている。適切に管理されていない林地を市町村が公的に管理することとし、そのために2024年度から一人千円の森林環境税が徴収される。このように、衰退している林業に保護が加重されようとしているのに、国産材時代が到来した林業を成長産業化するとか、木材の自給率を向上すべきであると叫ばれている。本稿では、林業政策を経済学的に分析・検討するとともに、あるべき林業政策を提言したい。

農業と同様、林業は、営まれている広大な土地から、国民は過大な評価を行いがちである。このため、その必要性を検討することなく、林業政策はあって当然だという認識を国民の多くは持っている。他方で、木材の生産額や林業の付加価値を大幅に上回る予算が林業政策に投じられていることは、知られていない。

食料の自給率向上と同様に、木材の自給率向上が叫ばれている。しかし、シーレーンが破壊されて、食料や木材などが輸入できなくなると食料危機は発生するが、今の住居に住めばよいだけなので、木材危機は発生しない。また、木材の自給率向上のため、多くの木を伐採すると将来の木材資源を減少させてしまう。皆伐された林地のうち7割は再造林されることなく放置されている。

林業政策の根拠に多面的機能が挙げられている。しかし、森林の多面的機能は、自然林を人工林に転換して林業を行うことで、毀損させられてしまう。林業は外部不経済を生じ、本来なら補助ではなく課税すべき産業なのである。これが農業と根本的に異なる。農業においては、多面的機能(外部経済)とは農産物の結合生産である。したがって、多面的機能のために農業を保護すべきであるとか農業生産を増大させるべきだという主張は成り立つが、森林の多面的機能を損なう林業には、このような主張は成立しない。しかも、林業を成長産業化するために皆伐により木材生産を拡大させるという現在の林業政策は、森林の多面的機能を大きく減少させる。

もちろん、林業が自然林の多面的機能を減少させるとしても、将来世代に森林資源を残すという公益的機能を持つのであれば、林業保護が成立する場合がある。本稿では、費用便益分析の考え方に立って、その条件を示す。しかし、皆伐や伐採量増大による林業の成長産業化や木材自給率向上論は、これからは正当化されない。

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