メディア掲載  財政・社会保障制度  2021.02.01

【数字は語る】コロナ対策の財政的な歪みを示す短期国債の急増

週刊ダイヤモンド(2021年1月23日発行)に掲載

税・社会保障 新型コロナウイルス

83.2兆ー2021年度国債発行計画(当初予算)における短期国債の発行予定額

出典:財務省


緊急事態宣言が再発令されたが、コロナ危機のための経済対策で財政は急激に膨張中だ。2020年度の国の当初予算は約103兆円だったが最終的に175.7兆円の歳出に。この結果、20年度の国債発行総
額は約263兆円になり、19年度と比較してて約110兆円も増加した。では21年度はどうか。当初予算5兆円のほか、新型コロナウイルス感染症対策予備費を5兆円計上したものの、歳出総額を約107兆円に抑制した。

しかしながら、コロナ対策の財政的な歪みが存在しないわけではない。それが21年度の国債発行総額に表れている。21年度予算を20年度(当初予算)並みに抑制したが21年度の国債発行総額は約236兆円となる計画だ。歳出が約100兆円だった1219年度の国債発行の平均は約162兆円で、それよりも70兆円以上も増加している。この理由は償還期限が1年以内の「短期国債」の急増だ。20年度のコロナ対策により、1219年度の平均で約26兆円しか発行していなかった短期国債を20年度は82.5兆円も発行。これは1年以内に返済しなければいけないが償還の財源がないため、21年度も短期国債を83.2兆円も発行する必要性に迫られたのである。

短期資金繰りの自転車操業は金利上昇リスクに脆弱であり、国債管理の安定化を図るには、短期国債を、償還が10年の長期国債や20年以上の超長期国債に徐々に借り換える必要がある。買い手として期待できるのは、資産負債のデュレーション(平均残存期間)管理のために購入ニーズがある生保などの金融機関だが、人口減少や少子高齢化が進む中で保険契約が減少する場合には限度もある。また、海外投資家は危機時に躊躇なく国債を売却するため、割合が増すと国債市場が不安定化する傾向がある。これまで日本の海外投資家の国債保有割合04年で約4%だったが、19 年は約13%に上昇しており、国債流通市場における売買シェアは約39%に上昇している。まずは感染症対策と経済再生を急ぐべきだが、コロナ禍でも財政再建の目標を堅持し、中長期的な財政規律を示す必要がある。