メディア掲載  財政・社会保障制度  2020.12.15

2020年7-9月期GDP速報値を読む―コロナ第3波と正念場の日本経済

Business Journalに掲載(2020年12月6日付)

税・社会保障 新型コロナウイルス

先般(202011月16日)、内閣府は「四半期別GDP速報」(202079月期 1次速報値)を公表した。このデータから何が読み取れるか。

まず、図表1の「季節調整系列」で確認してみよう。この系列は、200013月期から202079月期における原系列の名目GDPにつき、季節要因を考慮して年換算に推計したもので、ピーク時の値は201979月期の557.8兆円となっている。

新型コロナウイルスの感染拡大や4月上旬の緊急事態宣言による外出・営業の自粛により、202046月期の名目GDP504.6兆円に落ち込んだが、5月下旬の緊急事態宣言の全面解除のほか、2020年度の第1次・第2次補正予算やその後の経済活動の緩やかな回復に伴い、同年79月期の値は531.1兆円まで持ち直してきている。

もっとも、経済活動の回復はまだ途上であり、202079月期の名目GDPの水準は、ピーク時(201979月期)と比較して依然として約27兆円も低い水準にある。 

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このため、政権内部の一部から「30―40兆円」の追加の経済対策が必要との声も上がり始めているが、図表1は、季節調整を行い、四半期データを年換算にした推計値であり、原系列データでも確認する必要がある。

では、図表2の原系列データでは何が分かるか。現時点(202011月下旬)では、20201012月期の値は誰も分からないため、図表2では、2000年-2020年の四半期別GDPデータを用いて、それぞれの年の19月の合計値を折れ線で描いている。この折れ線のピーク時の値は201919月の合計値(411.5兆円)だが、このピーク時の値と比較して、202019月の合計値(391.5兆円)は約20兆円落ち込んでいる。 

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したがって、仮に20201012月期の値が20191012月期と同程度の水準までに回復すると、2020年の名目GDP2019年よりも27兆円の落ち込みでなく、約20兆円減に留まることになる。

この関係で重要なのは経済活動の回復のスピードだが、これは図表3のとおり、原系列データを用いて、2019年と2020年のデータを比較すると分かる。緊急事態宣言の発動もあり、最も厳しかった202046月期の値は、201946月期と比較して、12.3兆円も落ち込んでいる。しかしながら、緩やかに経済活動が回復し始めていた202079月期の落ち込みは、201979月期と比較して、6.5兆円にまで縮小している。

このトレンドが継続すれば、20201012月期は79月期よりも改善する可能性もあるが、それは今後の感染状況に大きく依存するだろう。冬で気候が変わり、新型コロナウイルスの感染拡大の兆候が再び見られるなか、いま日本経済は正念場を迎えている。 

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