メディア掲載  グローバルエコノミー  2020.12.09

バイデン政権のTPP復帰を

日本経済新聞 2020年11月18日夕刊『十字路』に掲載

通商政策 米国 中国

参加国の国内総生産(GDP)が世界の3割を占める東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が署名された。当初、中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国プラス日中韓の枠組みを主張。中国の存在が大きくなると心配した日本がこれにインド、オーストラリア、ニュージーランドの追加を主張した。中国が日本の主張を受け入れRCEP交渉が始まったのは、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が加わろうとしたからだった。

ところが米国はTPPから、インドもRCEPから、それぞれ脱退。米オバマ政権はアジア太平洋地域の重視を打ち出していたのに、通商面ではこの地域で中国のプレゼンスが高まることになった。

TPPはオバマ政権が中国を取り込もうとした仕組みだった。まず中国がいないTPPで高いレベルのルールを作る。知的財産権の保護、国有企業への規律など、米国の中国への要求はTPPに書かれている。米国が入る巨大自由貿易圏のTPPからの排除を恐れた諸国が参加してTPPが拡大すると、中国もTPPに入らざるを得なくなる。その時に中国にこれらの規律を課そうとしたのだ。

米国では党派を超え中国の台頭を警戒している。高関税で中国に譲歩を強いるトランプ氏の手法は十分成功しなかった。中国が入る世界貿易機関(WTO)では、中国を規律するルールは合意できない。米国が輸出先として関心を持つ日本の農産物市場については、TPPでの約束の一部は2019年に合意された日米貿易協定には含まれていない。保護主義を強める米国は直ちにTPPに復帰できないだろうが、米国の復帰はルールを重視する日本の国益にもかなう。

我が国は多国間主義を唱えるバイデン氏に、オバマ政権のグランドデザインを再検討させるべきだ。