政策提言 財政・社会保障制度 2020.09.10
<ポイント>
1.コロナ感染長期化に伴い、売り上げが激減し、コストが増大した日本企業は債務を増大させ、バランスシートのダメージが今後深刻化することは必至。
2.90年代の日本はバブル崩壊の結果、借金で不動産投資を行っていた多くの日本企業が過剰債務に陥り、貸し込んでいた銀行は巨額の不良債権を抱え込んだ。バランスシートの毀損状態が続き、キャッシュフローは借金の返済に当てられ、投資されない設備や人材は劣化し、日本経済は長期低迷。
3.こうした「失われた10年」の繰り返しを回避し、リーマン・ショック後の問題先送りを断ち切るため、コロナ危機によって生じた過剰債務を早く解消し、毀損したバランスシート問題を速やかに解決することが必要。
4.バランスシート問題は資本注入だけでは解決しない。キャッシュフローを増大させる事業構造改革と債務調整を一体として推進することが必要。
5.低い生産性を抱えるなどコロナ危機前から事業構造改革が長年必要であったところ、コロナ感染拡大の結果、ビジネスの在り方も大きく変容。事業構造改革の必要性が一層高まっている。プレーヤーが多すぎる産業は産業構造改革も必要。
6.改革を先送りせず、無利子無担保融資制度の期限(利払い・元本返済実質猶予期間)である3年の間に必要な事業構造改革等を完遂すべき。
7.コロナ感染拡大の直撃を受けているのは地域の多数の中小・小規模企業。資金繰り支援で時間稼ぎができても、その多くは過剰債務を抱え込んだ状態となる可能性。
8.多数の中小・小規模企業は事業再生が必要であり、そのためには債務調整メカニズムの強化が必要。 このため、①中小企業再生支援協議会の抜本的体制強化、②債務調整を可能にする条例制定、③政府系金融機関の債務調整への協力確保、④「中小企業版私的整理ガイドライン」の策定、⑤代位弁済実行時には債務調整メカニズムを起動、⑥再出発の支援などの政策群を展開すべき。
9.私的整理や民事再生法・会社更生法を補完する第三の新たな道として、「金融債務の調整を多数決で進める新たな法的枠組み」を設けるべき。
10. 再生がどうしても困難な場合には、無理な支援で債務を増やしてかえって問題を悪化させるよりも、早期再出発が現実的な最善策である場合も。
11. このため、①早期相談体制を強化、②金融機関・信用保証協会に対して個人保証債務免除への積極的対応を求める、③これに伴う信用保証協会等の損失に対して財政的に支援、④再挑戦支援や教育職業訓練強化などを進めるべき。
12. 金融機関が事業再生の必要な中小・小規模企業向け既存債権への対応を先延ばしせず、3年の間に早期再生・再出発を完遂できるよう、監督・検査を通じて積極的支援を促して行くべき。その際、予防的資本注入の仕組みも活用して行くべき。再生・再出発支援の実績の定期的な公表を通じて積極的な取り組みを促して行くことも検討すべき。
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政策提言(全文)
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バランスシート問題研究会メンバー
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